中国の児童用教科書。3巻。唐中期の李瀚撰。上古から南北朝までの人物の伝記や説話を,歌いやすく覚えやすいように,1事項1句4字で表し,2句で1対,8句ごとに韻を換え,全部で596句を収める。書名は《周易》の〈童蒙われに求む〉に基づく。敦煌写本中にも見いだされ,元の雑劇の題材のうち本書に取材した作品が最も多く,唐中期から元代にかけての中国社会に広範に普及したが,17世紀以後《三字経》や《千字文》の流行に圧倒されて姿を消し,李瀚がいつごろの人物かさえ分からなくなった。日本には古くから伝来流布し,〈勧学院の雀は蒙求をさえずる〉ということわざさえ生まれ,近年に至るまで漢文を学ぶ初心者用教科書として,詳しい注釈を付して出版された。中国の書物でありながら,中国では失われて日本に伝存する書を集めた《佚存叢書》が19世紀初頭に東京で刊行された中に本書が含まれ,中国に逆輸入された。
→読み書き算盤
執筆者:礪波 護
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中国、唐の李瀚(りかん)の撰(せん)。三巻。『易経』蒙卦(もうのか)の「童蒙の我に求む」から書名がつけられているように、幼童の教科書として編纂(へんさん)された書。中国の上代から南北朝までの古人の有名な逸話を四字句の韻語で記し、「孫康映雪、車胤聚蛍(しゃいんしゅうけい)」(唱歌「蛍の光、窓の雪」の出典)のごとく、類似の事跡を一対にして配列してある。日本には平安時代にすでに伝わり、盛んに学ばれて、「勧学院の雀(すずめ)は蒙求を囀(さえず)る」という諺(ことわざ)さえ生まれた。
[山崎純一]
…いずれも3字ないし4字で1句をなし,かつ韻をふみ,暗誦しやすいようにつくられている。また唐の李瀚(りかん)が古人の事跡をやはり4字1句,合計596句の韻語にまとめた《蒙求(もうぎゆう)》も唐代以後さかんに行われ,少なくとも元代にはまだ流行をきわめていた。これらの書物を終えると,ついで五言詩56首をあつめた《神童詩》,七言詩100余首をあつめた《千家詩》,ならびに《唐詩選》などの詩集類,また四書五経および《孝経》の経書類,《綱鑑》と《鑑略》の史書類にすすむ。…
※「蒙求」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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