千字文(読み)せんじもん(英語表記)Ch'ien-tzǔ-wên

  • 千字文 Qiān zì wén

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

中国,六朝時代の教科書の周興嗣 (こうし) の王羲之 (ぎし) の筆跡を集め,重複しない 1000の漢字を 250の4字句に綴ったもので,ごく最近まで識字習字のための初心者用教科書として用いられ,陳,隋の智永欧陽詢 (おうようじゅん) ,褚遂良 (ちょすいりょう) らの名跡も含まれている。『論語』とともに最も早い漢籍として,王仁によって日本に伝えられ,現在でも,行,草を対照させた『三体千字文』として書道手本に用いられている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディアの解説

中国の習字手本および初学教科書。梁の周興嗣〔470?-521〕。四言古250句計1000の異なった漢字からなる。東晋の王羲之の筆跡中から集めたといい,唐代以後普及した。智永の《真草千字文》,懐素の《草書千字文》が名高い。日本へは,《古事記》によると,応神天皇16年に百済王仁(わに)が伝えたという。王羲之の筆跡の模本が天平年間に渡来し,現存する。
→関連項目近衛家煕習字書堂幼学書

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

中国の字書の名。南朝梁の武帝が周興嗣(?‐520)に命じ,王羲之の書の中から1000字を選び,すべて4字1句の重複のない押韻対偶の文に仕立てさせたものという。しかし清の顧炎武の《日知録》によれば,周興嗣の伝をのせる同じ《梁書》の〈蕭子範伝〉には,南平王が蕭子範(486?‐549?)に千字文をつくらせたが,〈甚だ美,記室蔡遠に命じこれに注釈せしむ〉とあり,さらに《旧唐書》経籍志には〈千字文一巻蕭子範,又一巻周興嗣撰〉という。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

中国六朝時代の詩。一巻。梁りようの周興嗣しゆうこうし作。四言古詩二五〇句(千字)から成る。古く中国で、初学の教科書・習字の手本とされた。日本への伝来時期は不明だが、平安後期以降、漢字の習得教育に用いられた。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

中国、梁(りょう)の武帝(在位502~549)の命により、1000の漢字を四字句からなる美しい韻文に編んだもの。六朝(りくちょう)時代の周興嗣(しゅうこうし)(470ころ―521)撰(せん)。同じ漢字を二度と用いることがない。「天地玄黄、宇宙洪荒」(天地は玄黄なり、宇宙は洪荒なり)に始まり、「謂語助者、焉哉乎也」(語助(ごじょ)と謂(い)う者は、焉哉乎也(えんさいこや)なり)に終わる。初学者の漢字学習用に、基本的な漢字を集めて調子のよい文章を綴(つづ)ったものとしては漢の史游(しゆう)の作という『急就篇(へん)』などがすでにあったが、『千字文』は洗練された文体と内容によってそれらを圧倒し、6世紀から20世紀の初めに至るまで、漢字の教科書ならびに習字の手本として、広く用いられた。梁の武帝は書聖王羲之(おうぎし)の筆跡から『千字文』の字を集め、模写させて、皇子たちに与えたといわれ、六朝末の僧智永(ちえい)が王羲之の書を模写したという「真草千字文」(楷書(かいしょ)、草書の二体で『千字文』を書いたもの)の真跡かとみられるものが日本に伝わる。応神(おうじん)天皇16年に百済(くだら)の王仁(わに)が『論語』と『千字文』を献上したという『古事記』の記事はそのままは信じられないが、『千字文』が日本でも早くから重んじられたことを物語っている。[平山久雄]
『『書道全集 第五巻』(1957・平凡社) ▽小川環樹・木田章義著『注解 千字文』(1984・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

中国の小学書。一巻。四言古詩二五〇句一千字からなる。南朝梁の周興嗣奉勅撰。先行に魏の鍾繇(しょうよう)作の古千字文があり、晉の王羲之の筆跡を集字したとの説もある。自然現象から人倫道徳に至る百般の知識用語を集録。童蒙の教養、習字のために用いられた。多くの書家によって筆写されているが六朝末の智永の真草千字文が最も有名。日本でも平安時代から漢字・習字教科書に使用された。
※古事記(712)中「論語十巻、千字文一巻、并せて十一巻を」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

旺文社世界史事典 三訂版の解説

南北朝時代,南朝の梁 (りよう) の周興嗣 (しゆうこうし) の撰になる習字の手本
1巻,四言古詩250句からなり,1000字が記されている。初め三国時代の鍾繇 (しようよう) によって作られ,周興嗣がこれを整理した。歴代書家がこれを種々の書体で書いているので,初学者の習字の手本として広く用いられている。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版の解説

中国の漢字の学習書
6世紀初め,梁でつくられた四言古詩250句からなり,1000の異なった漢字を使用している。応神天皇のとき王仁 (わに) が『論語』10巻とともに日本にもたらしたという。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典内の千字文の言及

【書】より

…ただ北朝末期には一時篆隷の筆法を加味した独特の楷書が流行し,一つの特色を発揮した。南朝の陳から隋にかけて,王羲之7世の孫と伝えられる智永が現れ,王羲之の書法をうけついで多くの《千字文》を書いた。なかでも日本に伝わる真跡本の《真草千字文》が名高い。…

【読み書きそろばん(読み書き算盤)】より

…また文字の意味についての簡単な講釈も行われた。児童教育のための書物としては,漢代にも《凡将篇》や《急就章(きゆうしゆうしよう)》(《急就篇》)などが存在し,また唐代には《千字文》や《開蒙要訓》などが行われたが,しだいに《三字経》《百家姓》《千字文》が用いられるように定まり,児童用の教科書はひっくるめて〈村書〉とも呼ばれた。いずれも3字ないし4字で1句をなし,かつ韻をふみ,暗誦しやすいようにつくられている。…

※「千字文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

ビットコイン

インターネット上で使用できる仮想通貨の一つ。日本円のような法定通貨とは異なり、通貨としての機能を持つ電子データであり、1ビットコインは、1BTCという単位で表記される。仮想通貨と似たものに、オンライン...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

千字文の関連情報