融通手形(読み)ユウズウテガタ

デジタル大辞泉 「融通手形」の意味・読み・例文・類語

ゆうずう‐てがた〔ユウヅウ‐〕【融通手形】

商取引の裏付けがなく、単に資金調達目的で振り出され、裏書き引き受けなどが行われた手形。好意手形。→商業手形

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精選版 日本国語大辞典 「融通手形」の意味・読み・例文・類語

ゆうずう‐てがたユウヅウ‥【融通手形】

  1. 〘 名詞 〙 資金を融通するため、商業手形とみせかけて振り出される手形。空手形。なれあい手形。〔英和商業新辞彙(1904)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「融通手形」の意味・わかりやすい解説

融通手形 (ゆうづうてがた)

他人自己信用を利用して金融を得させる目的で交付される手形。広義では,製造業者が下請業者に対して前渡金,着手金,手付金などの名目で交付する手形(前渡金手形)等を含めていうが,狭義では,前渡金手形は除き,他人に自己の信用を利用させることのみを目的とする手形をいう。一般には狭義で使うことが多い。狭義の融通手形は,その利用目的の点から好意手形ということもある。

 狭義の融通手形は,融通者が約束手形を振り出し,これを融通手形として利用させる形をとることが多い。この場合には,例えばA(融通者)が資金を必要としているB(被融通者)に約束手形を振り出してやり,Bがこの手形を割り引いてくれる者(例えばC)をさがして,そのCに手形を裏書譲渡し,これによって必要な金銭を入手することになる。

 融通手形を振り出す場合には,AとBの間で,(1)Bはその手形により金融を得たときは,満期までにその手形をC(またはCから手形を譲り受けた者)から買い戻してこれをAに返還するか,または手形の支払の資金を満期までにAに提供すること,および(2)Bが割引を受けられなかったときは,Bは手形をAに返還することを定めるのが通常である。融通手形の支払資金は被融通者が負担すべきものであり,この点から融通手形は委託手形(手形法3条3項)としての性質をもつとされる。

 融通手形を割り引いたC(またはCからその手形の裏書譲渡をうけた者)が満期にAに対して手形金の支払を求めてきたときは,Aは融通手形であることのみを理由に支払を拒絶することはできない。Cが割引のときに融通手形であることを知っていた場合でも同様である。しかし,例えば,Bが所定期日までに割引をうけることができず,Aに手形を返還すべき状況にある場合に,そのことを知りながらBから手形を譲り受けた者がAに対して請求してきたときは,Aは〈悪意の抗弁〉(手形法17条但書)により支払を拒むことができる。B自身がAに対して手形で請求してきたときは,Aは融通手形であることを理由に支払を拒絶しうるのは当然である。なおAは,融通手形の振出しの際にその見返りとしてBから約束手形の振出しをうけておくことがある(見返り手形)。また2人の者が相互に約束手形を振り出してこれを融通手形として利用することがあり,これを交換手形という。融通手形の交換の場合は馴合(なれあい)手形または手形騎乗ということもあるが,この二つの言葉は,とくに無資力者同士が融通手形を交換する場合をいうことが多い。

 融通手形は主として中小企業において金融の手段として利用されることが多いが,商品代金支払のために振り出される商業手形のような支払の確実性がなく,不渡りとなる危険性が一般に高い。融通者に信用がなく,不渡りとなる危険性がとくに大きい場合を空(から)手形ということもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「融通手形」の意味・わかりやすい解説

融通手形
ゆうずうてがた
accommodation bill

商品の売買取引のような実体的な裏づけなしに、金融上の目的で振り出された手形のこと。融手(ゆうて)と略称される。典型的なものとしては、資金力のない者が信用のある他の者に依頼して自己を受取人とする手形を振り出してもらい、これを金融機関などで割り引いて資金を得る形態がある。手形期日までに別途調達した資金を振出人に返済して手形決済を行う。しかし、もともと資金力の弱い者が資金繰り操作のために利用する手形であるから、不渡りになる危険性が大きい。金融機関は、支払銀行に対するその手形の信用照会、手形の成因の追求、割引依頼人と手形支払人との取引関係の調査、依頼人の財務状況の分析など、種々の方法を用いて融通手形を識別し、排除しようと努めている。

[井上 裕]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「融通手形」の意味・わかりやすい解説

融通手形
ゆうずうてがた
accommodation bill

他人に自己の信用を利用させる目的で振出し,引受け,裏書などがなされた手形好意手形ともいう。信用のある者に,約束手形の振出人,裏書人,為替手形の引受人,裏書人などになってもらい,その者の信用によって手形の割引を容易にすることができる。これに対して,売買など現実の商取引に基づいて振出された手形を商業手形という。融通手形であるということは,融通者と被融通者との間の人的抗弁事由となるが,被融通者以外の第三者が手形所持人として手形金の支払いを求めてきたときには,その所持人が,たとえ融通手形であることを知って取得したとしても,その支払いを拒むことはできない。

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百科事典マイペディア 「融通手形」の意味・わかりやすい解説

融通手形【ゆうづうてがた】

好意手形とも。実際の商取引に基づかないで,自己の信用を利用して他人に金融の道を開くため発行される手形。受取人は手形を割り引いてもらうことにより資金を入手できる。商取引の裏付けがないので不渡になる危険度も高い。→空(から)手形
→関連項目受取手形商業手形

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