当事者が裁判所に提出した書類、および裁判所が作成した書類を特定の訴訟ごとにとじたもの。
[本間義信]
訴状、答弁書、準備書面、証拠の申出書、送達報告書、口頭弁論調書、証拠調べ調書、裁判の原本・正本などをとじたものである。保管は、訴訟が係属中の裁判所の書記官あるいは第一審裁判所の書記官が責任をもつ。民事訴訟記録は、保存または裁判所の執務に支障のない限り、原則としてだれでもその閲覧を書記官に請求できる(一般公開主義、民事訴訟法91条、公開主義の表れである)。また、当事者、利害関係人は謄写または正本・謄本・抄本の交付を書記官に請求できる。記録を読むことにより、訴訟の具体的経過を知ることができる。
[本間義信]
どのような書類をとじるかについて規定がないが、各種の調書、書証、令状等いっさいの書類がとじられている。刑事訴訟では、控訴の申立てに訴訟記録等に現れている事実であってその事由があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない点で、とくに重要である。刑事訴訟記録は、公訴の提起後は、弁護人が閲覧・謄写できる(刑事訴訟法40条)。事件の終結後は、だれでも閲覧できる(同法53条)。
[本間義信]
民・刑事の訴訟手続の内容,進行に関する重要な事項の記録をいう。民事では訴訟記録というが(民事訴訟法91条),刑事では〈訴訟に関する書類〉と呼んでいる(刑事訴訟法47条)。訴訟では手続が行われる日時(期日)に何がなされたかが最も重要なので,これに関する訴訟記録を〈調書〉と呼び,民事訴訟法(160条)でも,刑事訴訟法(48条以下)でも詳しい規定が置かれている。期日に何が,どのようになされたかは,調書によってのみ証明される事項とされ,調書の記載が決定的な意味をもつ(民事訴訟法160条3項,刑事訴訟法52条)。
訴訟記録は裁判手続が公正かつ訴訟法の定めるとおりに行われたかを事後的に調べるための資料となるので,いわば裁判の客観性を保障し,密室裁判を防ぐ効用がある。したがって原則としてだれでも訴訟記録の閲覧を請求できる(民事訴訟法91条。刑事訴訟では事件の終結後に限って認められる。刑事訴訟法53条)。訴訟記録の作成,保管は裁判所書記官の重要な責務の一つである(裁判所法60条)。
民事訴訟では口頭弁論が形骸化し,訴訟代理人は準備書面記載のとおりと陳述するのみで,書面の内容を陳述しないのであるが,訴訟記録には〈訴訟代理人何月何日付準備書面陳述〉と記載され,実態と記録との間にくいちがいがみられる。しかし,これには実害がないので問題とされてはいない。
執筆者:柏木 邦良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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