江戸の地で刊行された中本型丹表紙・絵題簽(だいせん)貼付の初期草双紙。5丁1冊を単位とし,1ないし2冊で1編を構成,毎丁絵が主体を占め,これにほとんど平仮名の文を説明風に添える。この通常型の半分大のものに赤小本があり寛文(1611-73)ころの発生,通常型赤本は宝永(1704-11)ころに出,享保(1716-36)ころ行われたらしい。題材は広く多種であるが,お伽話物,祝儀物,合戦物,演劇物,当世物等に大別でき,なかでも室町期物語の系を引くねずみの擬人化作品を多く見る。作者名は見当たらず,画工に近藤清春,西村重長,羽川珍重(はねがわちんちよう),奥村政信,鳥居清満らの名を見る。版元は鱗形屋,村田など。装丁様式はほぼそのまま踏襲され,やがて内容の進化した黒本・青本に移行する。
なお,明治期に行われた,赤色彩色を主とする表紙を付けた少年向き講談・落語本や,さらには低俗な内容・体裁の本を赤本と称したが,これらは文芸ジャンルとしてまでは熟した意味をもっておらず,草双紙類とは別種である。
執筆者:鈴木 重三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
江戸中期の草双紙(くさぞうし)の一種。幼童向けの絵本で、表紙が丹色(にいろ)(赤)のためこの名がある。寛文(かんぶん)末年(1670ころ)より、江戸で正月に出版され、享保(きょうほう)(1716~1736)ごろより、大半紙半切の中本型、5丁(10ページ)1冊とする形式が定まり、これが以後の草双紙の定型となった。その読者対象から、平易な教訓とめでたい結末とが、素朴な挿絵に簡単な会話などの書き入れだけで描かれる。題材は「桃太郎」「舌切り雀(すずめ)」「鉢かづき姫」「頼光山入(らいこうやまいり)」などの昔話や御伽草子(おとぎぞうし)、浄瑠璃(じょうるり)本で、近藤清春、西村重長、羽川珍重らの画工が手がけている。なお、明治時代以降には、少年向きの講談本などを、表紙が赤を主体にした極彩色であったため、この名でよび、さらに転じて、内容、体裁ともに低級俗悪な本や縁日などで売られるいかがわしい本をいう。
[宇田敏彦]
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出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…そのころから江戸では出版が盛んになり,やがて赤表紙をつけた子ども相手の5~6枚の中本や小本が現れた。それは赤本と呼ばれて1678年(延宝6)のころから18世紀半ばにかけてもてはやされた。内容は昔話,歌,なぞ,年中行事,鳥獣談などである。…
※「赤本」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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