日本大百科全書(ニッポニカ) 「変成鉱床」の意味・わかりやすい解説
変成鉱床
へんせいこうしょう
metamorphic deposit
metamorphosed deposit
変成作用によって特定の元素または鉱物が濃集して生成した鉱床、あるいは既存の鉱床が変成作用を受けてその性質を変えたものをいう。英語では前者をmetamorphic、後者をmetamorphosedとして区別している。火成鉱床、堆積鉱床(たいせきこうしょう)とともに、鉱床を成因により三大別したうちの一つ。変成鉱床は変成作用の性質によって、接触変成鉱床と広域変成鉱床(動力変成鉱床)の二つに分けられる。接触変成鉱床は貫入した火成岩の熱による接触変成作用で形成されたものをいう。火成岩から物質を供給され交代作用によって生成された鉱床は、接触交代鉱床(スカルン型鉱床)として別に扱われる。接触変成鉱床の例としては、チャートから形成された珪石(けいせき)鉱床、石炭層から形成された黒鉛鉱床などがある。これらの鉱床は変成作用による再結晶の過程で不純物が除かれるか、結晶構造の変化によって鉱床となったものである。広域変成鉱床としては、結晶片岩または片麻(へんま)岩中に産する鱗(りん)状黒鉛鉱床、藍(らん)晶石・紅柱石・珪線石鉱床、蛇紋石およびドロマイトなどから形成された滑石鉱床などのほか、堆積(たいせき)成の鉄鉱床、マンガン鉱床、塊状硫化物鉱床が広域変成作用を受けて再結晶し、異なった鉱物組成に変化したり激しく変形した例が知られている。
中熱水性鉱脈型(中温・中圧の条件下)の金鉱床は世界的に広く分布し、金の資源として重要であるが、これを生成した熱水の起源がマグマから放出されたマグマ水であるか、変成岩生成に伴う変成水であるかは鉱床学論争の一つである。1980年代後半以降の研究結果によると、水を含んだ火山岩と堆積岩からなる海洋地殻が、沈み込み帯(プレートが収斂(しゅうれん)する境界)で深く沈み込むことによって温度が上昇し、脱水形成された熱水が起源であるという一種の変成水説が有力になっている。
[鞠子 正]