地震波の走時と距離との関係を示す曲線のこと。走時とは,震源から放射されたP波やS波が,いろいろな経路を伝わって地表の観測点にまで達するのに要する時間で,地震記録上で地震波の到着時刻を読み取り,これから地震の発生時刻(震源時)を差し引くことで求められる。走時曲線で用いられる距離は,震央と観測点を結ぶ大円の長さ(震央距離)であり,kmなど通常の距離の単位,あるいは,この大円が地球の中心に対して張る角度で表される。走時曲線は地球内部の地震波速度の分布を反映しており,逆に,これをいわゆる波線理論に基づいて解析することで,地球内部の地震波速度の構造を知ることができる。地殻,マントル,核といった地球の大構造は,自然地震の走時曲線の解析により推定されたものである。こうした大構造の研究には,エネルギーの大きな自然地震の観測に基づく走時曲線が適しているが,その精度は震源決定の精度に大きく左右される(震源)。ところが,震源を精度よく決めるにはあらかじめ地震波速度の構造を正確に知る必要があり,走時曲線と構造の間に〈いたちごっこ〉の関係が生じるというやっかいな問題がある。このため,地殻など地球全体から見れば微細な部分の構造を詳しく調べるには,位置や時刻があらかじめ正確にわかっている人工地震の観測を行い,その走時曲線を解析する。地下の地震波速度の構造と走時曲線は1対1に対応するものであり,前者を与えれば後者は理論的に計算できる。ある標準的な構造についてこのような計算をし,さまざまな経路を伝わるP波やS波の走時と距離の関係を表にしたものは標準走時表などと呼ばれ,震源決定に使われる。ジェフリーズJeffreysとブレンBullenが1940年に発表した標準走時表は特に有名で,国際地震センターInternational Seismological Centreでは,今でもこの表により震源を決定している。日本の気象庁では,この走時表に人工地震の結果を加味したものを使っているが,各大学や研究機関の観測所では,それぞれ独自の走時表により震源を決定している。対象となる地域が狭くて高い震源決定精度が要求される場合には,構造の地域差が無視できなくなるので,このような走時表の不統一もある程度はいたしかたないことである。
執筆者:吉井 敏尅
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
走時と震央距離の間の関係を表す曲線。走時とは、P波やS波などの地震波が、震源を出てから観測点に到着するまでの時間のことである。震央距離とは、震央と観測点の間の距離を、地球表面に沿って測った最短距離のことである。走時曲線は、地震波を多数の観測点で観測することにより得られる。走時曲線を用いて、地下の層構造を推定することができる。
[山下輝夫]
travel-time curve
横軸に震央からの距離,縦軸に時間をとり,発震した瞬間から観測点に地震波の各相が最初に到達した時間(走時)と,震央からの距離(震央距離)との関係を示す曲線。震源位置や震源時を求めるために用いられる。標準走時曲線は震源の深さ別に与えられた走時表を,震央距離を横軸,着震時を縦軸に取り図化したもの。地震波(弾性波)の速度は伝播する媒体の密度と正の相関がある。物理探査の分野では走時曲線から萩原の方法(はぎとり法)などによって,地下の弾性波速度分布を求め,地下構造を解析する。
執筆者:石川 有三・森 直樹
参照項目:萩原の方法
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