起訴猶予(読み)キソユウヨ

  • きそゆうよ ‥イウヨ
  • きそゆうよ〔イウヨ〕

百科事典マイペディアの解説

罪を犯した者に対して起訴しないことにする検察官の処分。十分な客観的嫌疑(けんぎ)があり,起訴する条件がそろっていても,犯人の性格・年齢・境遇,犯罪の軽重・情状,犯罪後の状況によって訴追を不必要と認めるときには,検察官は起訴しないことができる(刑事訴訟法248条)。しかし,いったん起訴猶予にした後に同一事件について起訴してもかまわない。→不起訴処分
→関連項目公訴権濫用論

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

被疑事件について、検察官が、犯罪は成立し訴訟条件も完備していると認めたが、公益上訴追を必要としないとして、公訴を提起しない処分(不起訴処分)をすること。現行法は、犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる(刑事訴訟法248条)として、犯罪が成立する場合はかならず起訴すべきであるとする起訴法定主義によらず、検察官の裁量による起訴猶予を許す起訴便宜主義を採用している。『犯罪白書』(2009)によれば、2008年(平成20)における起訴猶予率は、全事件に対して60.2%、一般刑法犯(自動車運転過失致死傷等を除く)で42.1%、自動車運転過失致死傷等で90.0%、道路交通法違反で29.6%、その他の特別法犯で39.8%を占めている。

 なお、起訴便宜主義の短所を補う制度として、裁判上の準起訴手続(付審判手続)、検察審査会による不起訴処分の審査、告訴告発者に対する不起訴理由の通知の制度がある。

[内田一郎・田口守一]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 検察官が、罪を犯した者の年齢や、境遇、犯罪の軽重や情状などを考え合わせ、訴追を必要としないものと認めて公訴を提起しないこと。〔新しき用語の泉(1921)〕
※人間失格(1948)〈太宰治〉第三の手記「起訴猶予といふのは、前科何犯とか、そんなものには、ならない模様です」

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世界大百科事典内の起訴猶予の言及

【起訴】より

…日本で起訴便宜主義が法規の明文で定められたのは1922年の刑事訴訟法からであるが,実務上は明治時代から実質的に起訴便宜主義によっていたとされる。犯罪の嫌疑があるにもかかわらず起訴便宜主義の観点から起訴を差し控えることを〈起訴猶予〉という。起訴猶予は,犯罪の司法前処理の性格を持つ。…

※「起訴猶予」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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