中国、宋(そう)の初代皇帝(在位960~976)。廟号(びょうごう)は太祖。五代の武将趙弘殷(こういん)の次男として洛陽(らくよう)で生まれる。後周(こうしゅう)の禁軍(親衛隊)将校となって武功をたて、ついに総司令官である殿前都点検に上った。世宗の没後わずか7歳の恭帝(きょうてい)が即位したが、960年正月それを不服とする禁軍の将兵たちに擁立されて皇帝となり、国号を宋に改めた。この事件を陳橋(ちんきょう)の変というが、実は計画的なクーデターであったとみられる。
彼は即位すると、世宗が始めた天下統一の事業を受け継ぎ、江南に割拠していた荊南(けいなん)、楚(そ)、後蜀(こうしょく)、南漢、南唐を次々に征討し、呉越と北漢とを残して、唐末五代の分裂状態をほぼ収束した。統一事業を進める一方で、皇帝権を強化するための施策を行った。まず、五代に頻繁に王朝が交代したのは、多くは禁軍の策動によるものであったので、それを防止するために、総司令官である殿前都点検を廃止し、侍衛馬軍、侍衛歩軍、殿前諸班を分立させ、三軍を統率するものは皇帝のみとした。また別に枢密使を置いて、軍隊の統帥権と指揮権とを分けた。一方、唐末以来の国内分裂は、皇帝の権力が弱体で藩鎮(はんちん)(地方軍閥)が強大であったためとの反省から、これまで藩鎮が握っていた民政、財政、軍事の権限を取り上げて、その勢力を弱めていった。そして中央から文臣を地方の長官、知州などに派遣し、そのうえ州には通判(つうはん)(副知事)をおいて知州を監視させた。
財政では、税収のほとんどすべてを中央に送付させ、地方には最低必要量しかとどめさせず、優秀な兵卒は中央の禁軍に編入し、地方軍(廂(しょう)軍)を骨抜きにした。これを強幹弱枝策という。中央政府の機構でも、中書侍郎同中書門下平章事(宰相)のほかに参知政事(副宰相)を設け、財政は三司使にゆだねるなど、宰相の権限を分散して、臣下の者に権力が集中するのを防ぎ、君主独裁の統治機構をつくった。これらは宰相趙普(ちょうふ)の献策に基づくものが多く、また太宗に引き継がれて完成された。
[竺沙雅章]
『竺沙雅章著『宋の太祖と太宗』(1975・清水書院)』
927~976(在位960~976)
北宋の初代皇帝。廟号は太祖。涿(たく)郡(河北省固安県)の人。後周の世宗側近の武将であったが,世宗没後部下に推されて即位。世宗の実質的後継者で,呉越(ごえつ),北漢を除く天下を平定した。武人の兵権回収,殿試(でんし)の創設,中書省・三司・枢密院を天子に直属させるなど,文人官僚制,君主独裁,中央集権の基本方針を,後周の方針を継承しつつ現実的に推進し,宋朝の政治支配の基礎を築いた。
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…その儀式は,榻(寝台)を共にする,血をすすりあうなどさまざまで,文書(兄弟契)を取り交わすこともある。義兄弟関係が3人以上に及ぶこともしばしばで,趙匡胤(ちようきよういん)は10人の〈義社兄弟〉を基礎に宋朝を興した。義兄弟結合はしばしば秘密結社の組織原理となり,《三国志演義》(桃園結義)や《水滸伝》などのモティーフにもなった。…
…1127年(靖康2)の靖康の変によっていったん滅亡したので,それ以前を北宋,以後の南遷して杭州に都した時期を南宋という。
【政治過程】
後周世宗の武将であった趙匡胤(ちようきよういん)は,世宗の没後,部下の将兵に擁立されて皇帝となり,宋朝を開いた(960)。宋の太祖である。…
…後周世宗に重用され,禁軍(親衛隊)の総司令官である殿前都点検になった。959年(顕徳6),世宗が没して,わずか7歳の恭帝が後をついだが,それを不満とする禁軍将兵たちは,翌年正月,趙匡胤を皇帝に擁立した。彼は即位して国号を宋と定め,世宗が始めた中国統一の事業をひきつぎ,江南に割拠していた荆南,楚,南漢,後蜀,南唐をつぎつぎに征服して,唐末以来の分裂状態にほぼ終止符を打った。…
※「趙匡胤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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