足柄関(読み)あしがらのせき

日本歴史地名大系 「足柄関」の解説

足柄関
あしがらのせき

足柄峠に設置された古代関所。「風土記稿」は矢倉沢やぐらさわ村の字明神みようじん付近と伝えるが不詳。昌泰二年(八九九)九月一九日の太政官符(類聚三代格)に「応相模国足柄坂本・上野国碓氷坂置関勘過事」とあり、上野国で強盗が蜂起し被害がはなはだしいので足柄坂と碓氷うすい坂に関を設置した。翌三年八月五日の太政官(同書)で相模国の申請により過所をもって通行を認めるよう定められた。

「将門記」によれば天慶二年(九三九)に蜂起した平将門は坂東への朝廷軍の来攻に対して足柄・碓氷の二関の固守を命じたといい、また「古今著聞集」によれば後三年の役に官を辞して陸奥の兄義家の救援に赴いた源義光は、足柄山は「さだめて関もきびしくて、たやすくとをす事もあらじ」と述べたと伝える。

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改訂新版 世界大百科事典 「足柄関」の意味・わかりやすい解説

足柄関 (あしがらのせき)

古代,相模国足柄坂に設けられた関所。古代官使の東海道往復は足柄越であったが,802年(延暦21)富士山噴火のため新たに箱根路が開かれた。翌年足柄路が復活したが,以後古代・中世を通じて両路が使用された。899年(昌泰2)東山道の碓氷坂とともに足柄坂に関が置かれた。これは当時群れをなした強盗が百姓を害し荷駄略奪をしたため,その群盗追討に苦慮した上野国が国境碓氷坂での検問を目的として,相模国とはかって太政官に申請したものであった。関設置後,相模国司は〈部内清静,姧濫稍絶〉と報告している。この関の通過には諸司諸国発行の過所(関所通行の許可書)が必要であった。平将門が“新皇”と称して坂東に君臨した際には,足柄・碓氷の二関が固められた。その後戦いに際し足柄は東国への入口として警備の拠点とされた。しかし,いつごろからか古来の関所の機能は失われ,鎌倉時代前期には〈足柄の山の関守いにしへは有もやしけん跡たにもなし〉と詠まれるような状態であった。
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百科事典マイペディア 「足柄関」の意味・わかりやすい解説

足柄関【あしがらのせき】

古代の官道である相模国足柄坂(足柄峠)に設置された関所。現神奈川県南足柄市西方の静岡県との境付近にあったとみられる。899年,国内での群盗蜂起に苦慮した上野国は,その検問のために相模国とはかって関の設置を申請し認められ,東山(とうさん)道碓氷(うすい)坂と同時に,足柄坂に足柄関が置かれた。翌900年には過所(かしょ)をもっての通行が認められた。《将門記》には坂東への朝廷軍の来攻に備え足柄・碓氷の両関を固めるよう平将門が命じたとあり,坂東の入口に位置する軍事・警備上の拠点として重視された。鎌倉時代前期には廃絶していたらしく,《明日香井和歌集》には〈あしがらのやまのせきもりいにしえはありもやしけんあとだにもなし〉などと詠まれている。だが1221年,承久の乱の際には足柄・箱根両関を固めることが論議されており,以後も臨時の関が設けられた可能性もある。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「足柄関」の解説

足柄関
あしがらのせき

相模国におかれた関。899年(昌泰2)9月の太政官符によって,上野国の碓氷(うすい)関とともに僦馬(しゅうば)の党鎮圧のために設置された。関跡は神奈川県南足柄市の足柄峠付近に比定される。この地は古代の東海道の山越えの交通の要衝であったが,鎌倉時代に箱根路が開かれると主道をゆずった。足柄坂の東がいわゆる坂東で,この坂は関東地方を守る要地でもあった。

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世界大百科事典(旧版)内の足柄関の言及

【関所】より

…三関は789年(延暦8)7月停廃され,それに伴い他の関の勘過機能も消滅していったが,それ以後も重大事発生の際は三関の固関は行われ,また特に辺境の軍事的関は存続したようである。それとともに強盗をなす僦馬(しゆうば)の党の取締りのために,899年(昌泰2)相模国足柄(あしがら)関,上野国碓氷(うすい)関を置いたように,特定の事件,状況に対する治安維持策として軍事的機能をもつ関の新設がなされたが,一般的な交通制限は行われず,全体として古代の関の制度は形骸化していった。【館野 和己】
[中世]
 令制下の古代の関や江戸幕府による近世の関所はいずれも軍事警察上の必要から設置された。…

※「足柄関」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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