足柄山(読み)アシガラヤマ

デジタル大辞泉 「足柄山」の意味・読み・例文・類語

あしがら‐やま【足柄山】

神奈川・静岡県境にある足柄峠中心とする山地。古くは金時山を含めた山々の総称。坂田金時金太郎)の伝説の地。[歌枕

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精選版 日本国語大辞典 「足柄山」の意味・読み・例文・類語

あしがら‐やま【足柄山】

  1. ( 古くは「あしからやま」とも ) 神奈川、静岡両県境にある金時山の北方に連なる山の呼称。北端に足柄峠がある。坂田金時や山姥(やまうば)の伝説で知られる。歌枕。足柄山地

足柄山の補助注記

「相模風土記」に、この山の杉の木で造った舟は足が軽いため名づけられたとある。

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日本歴史地名大系 「足柄山」の解説

足柄山
あしがらやま

南足柄市と足柄下あしがらしも郡箱根町・静岡県駿東すんとう小山おやま町の境にそびえ、箱根外輪山の金時きんとき(一二一二・五メートル)北側斜面一帯山地の総称。古代・中世には足柄道が、近世には矢倉沢やぐらさわ往還が通り、箱根山とともに交通・軍事上の要地であった。

「古事記」には倭建命が東征の際、山麓の坂本さかもとに至ると、その坂の神が白い鹿となって現れたと伝える。坂本には駅馬二二疋が常備されていた(延喜式)。延暦二一年(八〇二)富士山噴火によって足柄道は一時通行が不可能になり、箱根路が開かれたが、翌年復旧した(日本紀略)。その後、関東の治安が上野の強盗蜂起によって乱れ始め、昌泰二年(八九九)足柄峠に関が設置された(類聚三代格)。坂東・関東はこの山の東をさすという。「万葉集」には

<資料は省略されています>

と、古代にはこの山の木が船材として利用されていたことが知られる歌や、東国から防人として筑紫に赴く男たちにとって、この地が郷里に別れを告げる詠嘆の地であったことを示す歌などがある。ちなみに「続歌林良材集」は「相模国風土記に云」として、「足軽あしから山は、此山の杉の木をとりて船をつくるに、あしの軽き事、他の材にて作れる舟にことなり。よりてあしからの山と付たり」と、山名由来を記している。


足柄山
あしがらやま

小山町と神奈川県南足柄市や足柄下あしがらしも箱根はこね町の境の金時きんとき(猪鼻山、一二一二・五メートル)の北側山地一帯の呼称。古代・中世には東海道足柄路、近世には矢倉沢やぐらさわ往還が山中を抜けていた。「駿河記」には「東面は相模、西面は駿河に属せり。二岡権現・遇沢山・公時山・山神山・大森山・茶畑山・三国山あり。南は伊豆筥根山に続たる峰なり。湖水の北を姥子山と云」とある。「常陸国風土記」に「相模の国足柄あしがら岳坂やまさか」から東の地域を「我姫あづまの国」と称したとの記事がみえ、「古事記」でも東国の地名由来としてヤマトタケルが足柄坂を通過した際、嘆息して「阿豆麻波夜」といったとの記載があり(景行天皇段)、古くから東西の境界として人々の往来をはばむ交通の難所と認識されていた。

「万葉集」には上総国の朝集使大原真人今城が京に向かうときに、郡司の妻女がはなむけに贈った「足柄の八重山越えていましなば誰をか君と見つつ偲はむ」(巻二〇)をはじめとして山々が重なり越えるに困難だったことを詠みこんだ多くの歌が載る。「足柄の安伎奈の山」「足柄の和乎可鶏山」などの山名もみえるが、安伎奈あきな和乎可鶏わおかけ山が現在のどの山にあたるかは不詳。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「足柄山」の意味・わかりやすい解説

足柄山
あしがらやま

神奈川・静岡県境にある足柄峠を中心とする山地。南足柄市矢倉沢(やぐらさわ)地蔵堂一帯をいう。一説に金時山(きんときざん)をさすともいわれる。現在、足柄峠以南の稜線(りょうせん)沿いに県道矢倉沢・仙石原(せんごくはら)線が通じ、富士山、箱根外輪山の北部一帯、北方は酒匂(さかわ)川中流の谷、東方に足柄平野など、神奈川、静岡両県にわたって展望は広大である。基盤は箱根火山系の噴出物で、表層は富士山の火山灰土。また、ウバメガシやトベラ林などがここを特色づける植生である。一帯は早くからの足柄林業地。また足柄山は、歌枕(うたまくら)として知られ、古来、足柄山、足柄嶺(あしがらのみね)、足柄のみ坂などとして多くの歌に詠まれている。そのほか、伝説、説話は数多く、坂田金時・山姥(やまうば)の伝説はとくに有名。

[浅香幸雄]

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世界大百科事典(旧版)内の足柄山の言及

【足柄峠】より

…神奈川と静岡の県境,箱根外輪山の一部をなす金時山の北斜面,いわゆる足柄山の山中にある峠。標高759m。…

※「足柄山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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