車持部(読み)クルマモチベ

デジタル大辞泉 「車持部」の意味・読み・例文・類語

くるまもち‐べ【車持部】

古代天皇輿こし製作管理に従事した部。

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精選版 日本国語大辞典 「車持部」の意味・読み・例文・類語

くるまもち‐べ【車持部】

  1. 〘 名詞 〙 大化前代大王輿輦(よれん)の製作、管理などをつかさどった部民
    1. [初出の実例]「既(すて)に神(かみ)に分寄(くはりあて)まつれり。車持部(クルマモチヘ)を、兼奪(かねむは)ひ取(と)れり」(出典日本書紀(720)履中五年一〇月(北野本南北朝期訓))

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改訂新版 世界大百科事典 「車持部」の意味・わかりやすい解説

車持部 (くるまもちべ)

大和朝廷の職業部の一つ。天皇の乗輿(じようよ)の管理にあたった伴造(とものみやつこ)車持公(君)の管掌下にあって,その職務に要する費用を貢納した。《日本書紀》履中5年条によると車持君が筑紫国の車持部をほしいままに検校し,さらに宗像神社に割き充てた車持部も奪った罪で筑紫の車持部を没収されたとあり,《新撰姓氏録》には雄略天皇のとき,乗輿を供進し車持公の姓を賜ったという話を伝える。これらは事実とは言えないにしてもその職務と部のあり方を反映した伝承とみてよい。車持氏は684年(天武13)君姓から朝臣(あそん)姓に改姓された。部民は河内伊賀上総,近江,越前越中播磨豊前など全国に分布。大化改新以降は解放された。令制下で供御の輿輦(よれん)を管掌したのは主殿寮で,車持氏は負名氏(なおいのうじ)として,主殿寮殿部(とのもり)に代々任じられている。この時期にも天皇の輿輦に関与していたことが知られる。
駕輿丁(かよちょう)
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「車持部」の意味・わかりやすい解説

車持部
くるまもちべ

一説に「くらもちべ」と訓(よ)む。朝廷の車(あるいは輿(くら))の製作と運搬をつかさどった職業部で、車持君に統率された。輜車(ししゃ)をつくり、軍需物資輸送に従事した部とみる説もある。

[加藤謙吉]

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世界大百科事典(旧版)内の車持部の言及

【車】より

繫駕法戦車馬車【冨谷 至】
[日本古代]
 車はその目的により,人が乗用するものと,物資を運搬するものとに大別される。乗用の車については《日本書紀》履中5年10月条に車持君・車持部がみえるが,この部は天皇の乗輿(じようよ)をつくったらしい(《新撰姓氏録》左京皇別,車持公)。儀制令に天子の代名詞として乗輿とともに車駕(きよが)がみえる。…

※「車持部」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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