輝コバルト鉱(読み)きこばるとこう(英語表記)cobaltite

翻訳|cobaltite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「輝コバルト鉱」の意味・わかりやすい解説

輝コバルト鉱
きこばるとこう
cobaltite

コバルトのもっとも重要な鉱石鉱物。酸性深成岩中の熱水鉱脈鉱床接触交代鉱床(スカルン型鉱床)、ときに変成層状マンガン鉱床、正マグマ性鉱床中などに産する。自形は正八面体・正十二面体など等軸晶系の様相を呈し、単位格子は等軸晶系のものの特徴を備え、原子配列上は斜方直方)晶系対称相と等軸晶系対称相の両方があり、前者のほうが普通である。地表条件で分解され、紫紅色のコバルト華を生ずる。日本では山口県美東(みとう)町(現、美祢(みね)市美東町)長登(ながのぼり)鉱山閉山)から産したものが有名。この鉱床は奈良時代に銅鉱床として開発され、大仏鋳造用の銅をまかなったといわれる。地名の「ながのぼり」は「ならのぼり」が訛(なま)ったものという。英名は主成分元素のコバルトcobaltにちなむ。

加藤 昭 2016年3月18日]


輝コバルト鉱(データノート)
きこばるとこうでーたのーと

輝コバルト鉱
 英名    cobaltite
 化学式   CoAsS
 少量成分  Ni,Fe,Rh,Pt,Pd,Os,Ir,Te
 結晶系   斜方(直方)・等軸
 硬度    5.5
 比重    6.34
 色     錫白
 光沢    金属
 条痕    灰黒
 劈開    三方向に完全
       (「劈開」の項目を参照)
 その他   加熱悪臭ヒ素化合物で有毒)を発する

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「輝コバルト鉱」の意味・わかりやすい解説

輝コバルト鉱
きコバルトこう
cobaltite

CoAsS 。コバルトの重要な鉱物。等軸晶系。硬度 5.5,比重6~6.3。金属光沢,銀白色で少し赤みがある。深成の高温~中温の鉱床,接触交代鉱床に産し,コバルトの原料として利用される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報