辛夷(読み)コブシ

デジタル大辞泉 「辛夷」の意味・読み・例文・類語

こぶし【辛夷/拳】

モクレン科の落葉高木。山野にみられ、葉は幅広倒卵形。春、葉より先に、大形の香りのある白色の6弁花をつける。秋に実が熟すと裂けて赤色種子が垂れ下がる。名は、つぼみ子供の握りこぶしに似ているのに由来。やまあららぎ。こぶしはじかみ。しんい 春》「四つ目垣茶室も見えて―哉/漱石

しん‐い【辛×夷】

コブシタムシバなどの花のつぼみ。乾燥させて、漢方頭痛鼻炎などに用いる。

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精選版 日本国語大辞典 「辛夷」の意味・読み・例文・類語

こぶし【辛夷・拳】

  1. 〘 名詞 〙 モクレン科の落葉高木。各地の山地に生え、観賞用として広く栽植される。高さ六~九メートル。葉は柄をもち、葉身は長さ約一〇センチメートルの広倒卵形で、先は突出してとがり基部はくさび形。三~四月、葉に先だって枝先に一個ずつ芳香のある白い花が咲き、その基部にはしばしば一枚の葉がある。花弁は長さ約一〇センチメートルのへら形でややねじれ六枚ある。花後、扁長楕円形に集まった果実を結び、のち裂けて白い糸で赤い種子を垂下する。材は器具・建築用。花から香水をつくり、樹皮からこぶし油をとる。蕾(つぼみ)が開く直前の形が子どものこぶしに似ているところからの名。「辛夷」は本来モクレンの漢名だが、慣用的に用いられる。やまあららぎ。こぶしはじかみ。《 季語・春 》
    1. [初出の実例]「時しあればこふしの花も開けけり君が握れる手のかかれかし〈よみ人しらず〉」(出典:続詞花和歌集(1165頃)戯咲)

しん‐い【辛夷】

  1. 〘 名詞 〙 植物「こぶし(辛夷)」の慣用漢名。〔色葉字類抄(1177‐81)〕

辛夷の補助注記

正しくはモクレンの漢名。

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漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典 「辛夷」の解説

しんい【辛夷】

漢方薬に用いる生薬(しょうやく)一つ。モクレン科コブシなどのつぼみを乾燥したもの。排膿(はいのう)鎮静鎮痛抗菌などの作用がある。慢性鼻炎蓄膿(ちくのう)症、鼻づまりに効く葛根湯加川芎(かっこんとうかせんきゅう)辛夷、慢性鼻炎、アレルギー性鼻炎に効く辛夷清肺湯(せいはいとう)などに含まれる。

出典 講談社漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「辛夷」の解説

辛夷 (コブシ)

学名:Magnolia kobus
植物。モクレン科の落葉高木,園芸植物,薬用植物

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の辛夷の言及

【モクレン(木蓮∥木蘭)】より

…世界的に有名な花木であるシモクレンMagnolia quinquepeta (Buchoz) Dandy(=M.liliflora Desr.)(漢名は辛夷(しんい))(イラスト)やハクモクレンM.heptapeta (Buchoz) Dandy(=M.denudata Desr.)(漢名は玉蘭)などの総称。単にシモクレンのみを指すこともある。…

※「辛夷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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