海商法(読み)かいしょうほう

日本大百科全書(ニッポニカ)「海商法」の解説

海商法
かいしょうほう

実質的意義においては、海上企業を規律の対象とする私法規定の総体をいい、形式的意義では、現行商法典の第3編「海商」のなかに規定されている法をさす。単に海法ともいう。海商法の中心をなすものは、海上企業活動に属する海上運送に関する規定である。したがって、海商法は「海上運送に関する法」といっても過言ではない。しかし、海商法には、海上運送に関する規定のほかに、海上企業を遂行するために必要な人的・物的組織に関する規定、すなわち、企業主体としての船舶所有者・賃借人・共有者および企業補助者としての船長、物的組織に関する船舶、船舶金融に関する船舶先取(さきどり)特権・船舶抵当権などの規定や、海上企業の危険性に対する法的対策の制度として、共同海損、海難救助、船舶の衝突、海上保険に関する規定を置いている。

 海商法は、航海に伴って生ずる事項を規律の対象としているところから、非常に古くから発達し、商法の起源ともなっているが、商法のほかの部門とは異なる独自の存在を保ちつつ発達してきた。航海は、海という共通の舞台と、船舶という唯一の物的手段によって行われ、また、海上企業は多く国際的な関係を背景に展開されるために、これを規律する海商法は国際的に統一される傾向が強い。その成果は、船主責任制限条約(1957、1976)、同改正議定書(1996)、船荷証券条約(1924)、同改正議定書(1968、1979)、国連海上物品運送条約(ハンブルク・ルール、1978)、ヨーク・アントワープ規則(1974、2004)、油濁損害民事責任条約(1969)など、枚挙にいとまがない。

[戸田修三]

『落合誠一著『商法研究1 運送責任の基礎理論』(1979・弘文堂)』『戸田修三著『海商法』新訂第5版(1990・文真堂)』『中村真澄著『海商法』(1990・成文堂)』『戸田修三・中村真澄編『注解 国際海上物品運送法』(1997・青林書院)』『落合誠一・江頭憲治郎編『海法大系――日本海法会創立百周年祝賀』(2003・商事法務)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「海商法」の解説

海商法
かいしょうほう
maritime law

広義では,海事に関する法規の全体,つまり海法をいうこともあるが,一般には,このうち海上企業に関する特殊的法規の全体をいう。陸商法に比べ,航海に関する事項を規律の対象としている点で特色があり,商法の他の分野から区別されて独立の法分野を形成している。

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百科事典マイペディア「海商法」の解説

海商法【かいしょうほう】

形式的には商法第4編に規定されている法規,実質的には商法のうち海上企業(運送,保険)に関する特殊的法規の全体をさす。海法の中心であり,沿革上は商法の起源をなす。各国で国際統一条約と国際的な普通契約条款が採用されつつある。
→関連項目委付

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精選版 日本国語大辞典「海商法」の解説

かいしょう‐ほう カイシャウハフ【海商法】

〘名〙 海上企業に関する法規。形式的には商法第四編「海商」に規定されているものをいうが、広義には、条約、特別法令、慣習法なども含まれる。海事商法。〔講学余談‐第一号(1877)明治一〇年六月〕

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世界大百科事典 第2版「海商法」の解説

かいしょうほう【海商法】

形式的な意味では,商法典の第4編〈海商〉の諸規定をいうが,実質的な意味では,企業法としての商法の体系に属する海上企業についての法規の総体をいう。しかし,海商法の規定は,船舶法(35条)によって,企業とは直接関係のないすべての航海船に準用されるので,その意味で商法そのものの商行為中心主義は破綻を生じている。また,船舶の航行に伴って生ずるあらゆる法律関係に関連のある公法,私法,国際法などの法規の全体を〈海法maritime law〉と呼ぶこともある。

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