避難指示解除準備区域(読み)ひなんしじかいじょじゅんびくいき

日本大百科全書(ニッポニカ)「避難指示解除準備区域」の解説

避難指示解除準備区域
ひなんしじかいじょじゅんびくいき

2011年(平成23)3月11日の東北地方太平洋沖地震により発生した東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、政府が住民に対し、当面避難を続けるものの、一日でも早い自宅帰還を目ざすとして指定した地域。2012年4月1日から2020年(令和2)3月3日まで存在した。住民の生命・身体の危険を防ぐため、政府が立入りを原則制限・禁止する避難指示区域の一つである。住民の自宅への寝泊まりは原則認めないものの、一時帰宅のほか、事業再開や営農・営林の再開などを認めた地域であった。指定直前の2012年3月時点で、1年間の積算放射線量が20ミリシーベルト以下となることが確認されており、国際原子力機関(IAEA)など国際機関の基準に照らして、20ミリシーベルト以下ならば人体に影響はないと判断した。ピーク時の2013年8月時点で、福島県の田村市、南相馬(みなみそうま)市、大熊(おおくま)町、川俣(かわまた)町、富岡(とみおか)町、浪江(なみえ)町、楢葉(ならは)町、双葉(ふたば)町、飯舘(いいたて)村、葛尾(かつらお)村、川内(かわうち)村の11市町村の一部が該当していた。2014年4月以降、避難指示解除準備区域は段階的に解除され、2020年3月に最後の区域(双葉町の一部)が解除された。

 避難指示解除準備区域では、住民は主要道路の通過交通のほか、一時帰宅、インフラ復旧や防災などの公益目的の立入りができた。例外的に、年末年始やお盆などの短期間に限った特例宿泊や、帰還のための準備宿泊を認めていた。製造業や金融機関、ガソリンスタンド、農業などの再開のほか、これに関連する保守・修繕、運送業務も容認。ただし病院、福祉・介護施設などの事業については、再開準備のみに限定した。同区域に一時的に立ち入る場合、防護服着用や線量計所持は原則不要だった。区域内の住民には精神的損害に対する賠償として、1人当り850万円を支払った。ただ長引く避難で精神的苦痛を受けたとして、避難住民の東電への訴訟が相次ぎ、賠償額の上乗せを命じる10以上の地裁・高裁判決が出ている。

[矢野 武 2021年6月21日]

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デジタル大辞泉「避難指示解除準備区域」の解説

ひなんしじかいじょじゅんび‐くいき〔ヒナンシジカイヂヨジユンビクヰキ〕【避難指示解除準備区域】

福島第一原発事故による避難指示区域の一。事故を起こした原子炉冷温停止状態に達した後、それまでの警戒区域・避難指示区域(計画的避難区域)を見直して新たに設定されたもので、放射線の年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であると確認された地域。当面の間、引き続き避難指示が継続されるが、復旧・復興のための支援策を迅速に実施し、住民が帰還できるよう環境整備を目指す。→居住制限区域帰還困難区域

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