酒石酸ナトリウムカリウム(読み)シュセキサンナトリウムカリウム

デジタル大辞泉 の解説

しゅせきさん‐ナトリウムカリウム【酒石酸ナトリウムカリウム】

酒石酸ナトリウムカリウム四つ異性体があり、ふつう四水和物が得られ、ロッシェル塩またはセニエット塩とよばれる。無色透明結晶で、斜方晶系酒石酸カリウムナトリウム

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化学辞典 第2版 の解説

酒石酸ナトリウムカリウム
シュセキサンナトリウムカリウム
potassium sodium tartrate

KNaC4H4O6(210.16).ロシェル塩,またはセニエット塩ともいう.A. Seignetteが,1672年にフランスのLa Rochelleで,はじめて医薬としてつくったもので,すぐに医薬として広まった.DL-,D-,L-,メソの4種類がある.それぞれの形の酒石酸水素カリウム水溶液に炭酸ナトリウムを作用させると得られる.また,DL-塩は,水溶液から低温ではその四水和物が得られるが,水溶液を55 ℃ 以上にすると,D-,L-塩が分離する.工業的には,ぶどう酒醸造の際に得られる酒石(主成分が酒石酸水素カリウム)からつくられる.DL-塩の四水和物は三斜晶系の結晶で,やや風解性がある.水に易溶.結晶は約90 ℃ で融解し,約200 ℃ で分解する.D-およびL-塩の四水和物は斜方晶系の結晶で,密度1.766 g cm-3.-18 ℃ と+24 ℃ にキュリー温度をもち,その間では強誘電体となる.水に易溶.約200 ℃ で分解がはじまる.メソ塩は小さな結晶になり,水に易溶.約110 ℃ で分解がはじまる.医薬品(利尿剤緩下剤),圧電素子(四水和物は大きな単結晶が得られるのでマイクロホンピックアップなどに利用される),ラジオ周波数の調節銀鏡製造食品工業(プロセスチーズ乳化剤など),分析試薬(フェーリング液,Cu,Cr,Znのマスキング)などに用いられる.[CAS 304-59-6]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

酒石酸ナトリウムカリウム
しゅせきさんなとりうむかりうむ
potassium sodium tartrate

酒石酸の塩の一種。D-、L-、DL-およびメソ酒石酸塩が知られている。化学式KNaC4H4O6、分子量210.17。DL-酒石酸ナトリウムとDL-酒石酸カリウムの混合飽和水溶液を低温で放置するとDL-塩が、55℃以上からはDおよびL-塩が別の結晶として遊離してくる。DL-塩は四水和物が普通で、90~100℃で融解、200℃で分解する。水にはよく溶けるが、エタノールエチルアルコール)には難溶である。L-酒石酸ナトリウム塩はロッシェル塩Rochelle saltの名で知られている。

[佐藤武雄・廣田 穰]

ロッシェル塩

1672年フランス西部のラ・ロシェルの薬剤師セニエットPierre Seignette(1660―1719)が初めてみいだし、利尿下剤に用いたのでセニエット塩ともいう。無色の斜方晶系に属する結晶。4分子の水をもって結晶する。融点70~80℃。容易に大きな結晶を得ることができる。この結晶を適当に切ったものは、第二次世界大戦当時は圧電素子として用いられていたが、吸湿性が大きいなどの欠点があり、現在ではあまり使われなくなった。

[佐藤武雄・廣田 穰]

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改訂新版 世界大百科事典 の解説

酒石酸ナトリウムカリウム (しゅせきさんナトリウムカリウム)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

酒石酸ナトリウムカリウム
しゅせきさんナトリウムカリウム

ロシェル塩」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の酒石酸ナトリウムカリウムの言及

【ロッシェル塩】より

…酒石酸ナトリウムカリウムC4H4O6KNaの立体異性体の一つであるL‐酒石酸ナトリウムカリウムの別名。ほかにR‐酒石酸塩,メソ酒石酸塩もある。…

※「酒石酸ナトリウムカリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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