金葉和歌集(読み)キンヨウワカシュウ

デジタル大辞泉 「金葉和歌集」の意味・読み・例文・類語

きんようわかしゅう〔キンエフワカシフ〕【金葉和歌集】

平安後期の勅撰和歌集八代集の第五。10巻。白河法皇の命で、源俊頼みなもとのとしよりが撰。二度の改撰ののち、大治2年(1127)成立源俊頼源経信・藤原顕季ら227人の歌約650首を収める。金葉集

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精選版 日本国語大辞典 「金葉和歌集」の意味・読み・例文・類語

きんようわかしゅうキンエフワカシフ【金葉和歌集】

  1. 平安後期の勅撰和歌集。一〇巻。天治元年(一一二四白河上皇の命により、源俊頼の撰。二度の改修を経て大治二年(一一二七)成立。三次にわたる各撰集を初度本、二度本、三奏本と区別し、二度本がもっとも流布した。勅撰和歌集の五番目。源俊頼、源経信、藤原顕季ら二二七人の歌約六五〇首を収録。四季、賀、別離、恋、雑、および連歌一九首を雑下に分類。客観的、写生的描写が多く、新奇な傾向も目立つ。八代集の一つ。金葉集。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金葉和歌集」の意味・わかりやすい解説

金葉和歌集
きんようわかしゅう

平安朝第5番目の勅撰(ちょくせん)和歌集。撰集下命者は白河院(しらかわいん)、撰者は源俊頼(としより)。1124年(天治1)に最初の草稿を奏覧に入れたが、新味がないと返却され、次に翌年4月に改撰して奏上したが、今度は現代歌人に偏りすぎるという理由で受納されず、三度目に三代集歌人を復活させた草稿を呈したところ、そのまま嘉納(かのう)された。1126年(大治1)のことである。それぞれ初度本、第二度本、三奏本とよぶ。初度本は上巻のみ伝存。定本のはずの三奏本は撰者の手元になく、第二度本がもっぱら流布した。後続勅撰集も三奏本を私撰集扱いしている。従来の勅撰集と違って巻数も半分の10巻に仕立て、書名も優れた和歌の集の意味で「金葉集」と名づけ、新機軸を出した。二度本は白河院政期の当代歌人が多く、清新な自然観照や、新奇な表現が目だち、また当時流行した万葉好みの田園趣味も反映、総じて時代の新風が息づいているが、反面、技巧諧謔(かいぎゃく)に流れ、叙情品位が劣るのは否めない。

[近藤潤一]

『正宗敦夫著『金葉和歌集講義』(1968・自治日報社)』『平沢五郎著『金葉和歌集の研究』(1976・笠間書院)』『和歌文学会編『和歌文学講座4 万葉集と勅撰和歌集』(1970・桜楓社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金葉和歌集」の意味・わかりやすい解説

金葉和歌集
きんようわかしゅう

平安時代後期の第5勅撰和歌集。書名は「すぐれた和歌の集」の意。白河院の命により源俊頼 (としより) 撰。最初天治1 (1124) 年末に撰進したが,新味が乏しいと却下され,翌年4月に奏上したが当世的にすぎると再び返され,改訂を重ねて大治1 (26) 年頃奏覧,ようやく受理された。現存伝本は成立の事情を反映して,初度本,二度本,三奏本に分れ,流布本は二度本。巻数は 10巻。春,夏,秋,冬,賀,別離,恋 (上下) ,雑 (上下) に部立され,『詞花和歌集』とともに巻数が少いこと,雑下に連歌の部を設けたことなどが特色。歌数は流布本で連歌や付載歌を含め約 720首。歌数の多い歌人は撰者のほか源経信,藤原公実 (きんざね) ,藤原顕季 (あきすえ) らで,白河院や撰者の周辺の人物が目立つ。清新な叙景歌,庶民的な題材,奇抜な着想や表現など意欲的に新風を開拓しようとしており,『良玉集』 (散逸) のような批判の書も出た。

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改訂新版 世界大百科事典 「金葉和歌集」の意味・わかりやすい解説

金葉和歌集 (きんようわかしゅう)

平安末期の歌集。勅撰和歌集の第5番目。源俊頼撰。10巻。白河院の院宣をうけ,1124年(天治1)初度本を奏覧したが却下。次いで翌年の二度本も返却,26年(大治1)の末から27年の初めころに三奏本を奏覧し,嘉納された。二度本が流布する。《八代集全註》には,3種とも翻刻。名称,巻数とも勅撰集の伝統を破り,内容的にも新奇な表現が目だって,保守派側からの非難を浴びた。俊頼や父経信,顕季らの清新な歌が多い。
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百科事典マイペディア 「金葉和歌集」の意味・わかりやすい解説

金葉和歌集【きんようわかしゅう】

平安後期,5番目の勅撰和歌集。10巻。約700首。1124年の白河院の院宣により源俊頼が撰進。初度本,二度本とも却下され,三奏本を奏上した。流布本は二度本。書名,巻数,部立(ぶだて)とも従来の勅撰集の型を破り,巻末に連歌の部も設けてある。当代歌人の歌が多く,印象的な写生歌や警抜な手法の作品を交え,歌風に新鮮さがある。代表歌人は俊頼,源経信,藤原顕季ら。
→関連項目八代集

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「金葉和歌集」の解説

金葉和歌集
きんようわかしゅう

第5番目の勅撰集。源俊頼(としより)撰。白河法皇の下命。1124年(天治元)の初度本,翌年の二度本とも返却され,三奏本は26年かその翌年に草稿として奏覧され,そのまま受納されたという。書名は優れた和歌の集の意。四季・賀・別離・恋上下・雑上下の10巻。代表歌人は源経信・俊頼・藤原公実(きんざね)・同顕季(あきすえ)ら。「古今集」以来の伝統から脱した新鮮な歌風を特色とする。「新日本古典文学大系」所収。

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