金輪際(読み)コンリンザイ

デジタル大辞泉 「金輪際」の意味・読み・例文・類語

こんりん‐ざい【金輪際】

[名]
仏語大地の最下底のところ。大地がある金輪の一番下、水輪に接するところ。金輪奈落
物事極限。ゆきつくところ。
「逢ひ初めし時の誓文を―と思ひつめ」〈浄・薩摩歌
[副]
(あとに打消しの語を伴って用いる)強い決意をもって否定する意を表す語。絶対に。断じて。「金輪際承知しない」「もう金輪際ごめんだ」
極限まで。どこまでも。とことんまで。
「聞きかけたことは―聞いてしまはねば、気がすまぬ」〈滑・膝栗毛・六〉
[補説]書名別項。→金輪際
[類語]決して絶対断じて絶対にゆめゆめゆめ

こんりんざい【金輪際】[書名]

車谷長吉短編小説。また、同作を表題作とする短編小説集。小説集は平成11年(1999)刊行で、ほかに「白黒忌」「児玉まで」などの作品を収める。

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精選版 日本国語大辞典 「金輪際」の意味・読み・例文・類語

こんりん‐ざい【金輪際】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 仏語。仏教の世界観で、金輪の層の領域。また、その最下底の所で、水輪と接する所。金剛際。金輪奈落。
      1. [初出の実例]「閻浮提のうちに湖あり、其なかに金輪際よりおひ出たる水精輪の山あり」(出典:平家物語(13C前)七)
      2. [その他の文献]〔大乗悲分陀利経‐五〕
    2. 物事の極限。物事のきわまるところ。金輪奈落。
      1. [初出の実例]「死さまに是そ気疎き云替し 血を呑あふて金輪際まで」(出典:俳諧・西鶴大矢数(1681)第二六)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 底の底まで。どこまでも。絶対に。断じて。金輪奈落。
    1. [初出の実例]「貴さま御一所にあらずしては、こんりんざいあふ事せぬ」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)江戸)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金輪際」の意味・わかりやすい解説

金輪際
こんりんざい

仏教の世界観において、大地の下にある金輪のきわをさす。仏教の世界観によると、世界は、有情世間(うじょうせけん)とよばれる人間界と、それを下から支えている器世間(きせけん)とよばれる自然界とに分類されるが、後者は、風輪、水輪、金輪の三つからなっている。まずいちばん下には、円盤状つまり輪形の周囲の長さが「無数」(というのは1059に相当する単位)ヨージャナ(由旬(ゆじゅん)。1ヨージャナは約7キロメートル)で、厚さが160万ヨージャナの風輪が虚空(こくう)に浮かんでいるものと考える。その上に、同じ形の直径120万3450ヨージャナで、厚さ80万ヨージャナの水輪がある。さらにその上に、同形の直径は水輪と同じであるが、厚さが32万ヨージャナの金でできている大地があり、その金輪の上に九山、八海、須弥四洲(しゅみししゅう)があるという。そしてこの金輪と水輪の境目のことを「金輪際」というのであるが、四洲の一つである閻浮提(えんぶだい)に住んでいる有情からすればはるかな底の底であるところから、「徹底的に」とか「最後まで」という意味が生じた。現在では一般に「いかなることがあっても」の意に用いられる。

高橋 壯]

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改訂新版 世界大百科事典 「金輪際」の意味・わかりやすい解説

金輪際 (こんりんざい)

仏教宇宙観における一種地底。世界は相重なる三輪(金輪・水輪・風輪)からなり,最上層の金輪(カーンチャナマンダラkāñcana-maṇḍala)の上に大海やわれわれの住む大陸(閻浮提(えんぶだい))がある。したがって〈金輪際〉とは金輪とその下の水輪との境,すなわち金輪の最下層,われわれにとっての真の底を意味する。《大宝積経(だいほうしやくきよう)》には〈この大地は厚さ百六十万由旬(1由旬は約7km)あり,その最下底を金輪際という〉とある(《俱舎論》では厚さ百六十万由旬あるのは風輪である)。俗にこの語は〈絶対に〉〈真底〉を意味するものとして〈金輪際そのようなことはしません〉というように使われる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金輪際」の意味・わかりやすい解説

金輪際
こんりんざい

仏教用語。金剛輪際ともいう。仏教の宇宙論では,大地の下の底辺部に,黄金でできた金輪あるいは金剛から成る金剛輪があって,その最下端,すなわち大地のはてを金輪際という。

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