出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
静岡市清水(しみず)区村松(むらまつ)にある臨済(りんざい)宗妙心寺派の寺。補陀洛(ふだらく)山と号する。本尊は千手観音菩薩(せんじゅかんのんぼさつ)。もとは現在の久能(くのう)山上にあって久能寺と称し天台密教系の寺であった。推古(すいこ)天皇のとき、守護の久能忠仁が黄金の千手観音像を本尊として一堂を建てたのが始まりで、723年(養老7)には行基(ぎょうき)が七堂伽藍(がらん)を建てたといわれる。鎌倉時代には源頼朝(よりとも)が保護を加え、武田信玄(しんげん)が寺を現在地に移して、もとの寺跡に久能山城を築いた。現在の久能山東照宮はその城跡に建てられたもの。そのとき寺は真言(しんごん)宗に改められたが、やがて荒廃した。1883年(明治16)山岡鉄舟が当時の妙心寺派管長今川貞山を開山として再興し、久能山鉄舟寺と改称した。寺宝に平安期の装飾経として名高い『法華経(ほけきょう)』(『久能寺経』、国宝)19巻、康治(こうじ)元年(1142)銘の錫杖(しゃくじょう)(国重要文化財)、県指定文化財の『大般若経(だいはんにゃきょう)』(旋風葉装折本)600巻などがある。
[菅沼 晃]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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