閉門(読み)ヘイモン

デジタル大辞泉 「閉門」の意味・読み・例文・類語

へい‐もん【閉門】

[名](スル)
門をとじること。⇔開門
謹慎の意を表すため、門をとざして家にこもること。
江戸時代武士・僧に科せられた刑罰の一。門や窓をかたく閉じ、出入りを禁じられた。
[類語]閉院閉館

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精選版 日本国語大辞典 「閉門」の意味・読み・例文・類語

へい‐もん【閉門】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 門をしめること。門をとざして、外に出たり人に会ったりしないこと。
    1. [初出の実例]「福原に馳下て、閉門(ヘイモン)してこそ御坐けれ」(出典:屋代本平家(13C前)三)
    2. 「人の訪ひ来るも物憂しとてへいもんしておはしけるが」(出典:義経記(室町中か)六)
    3. [その他の文献]〔後漢書‐馮衍伝〕
  3. へいろう(閉籠)
    1. [初出の実例]「訴訟若不達者、可離山閇門事」(出典:高野山文書‐弘安九年(1286)八月日・金剛峯寺衆徒契状)
  4. 謹慎・忌籠(いみごもり)の意を表わすために門をとざしてこもっていること。また、そうさせること。
    1. [初出の実例]「今明物忌、閉門蟄居」(出典:小右記‐寛和元年(985)六月三日)
    2. 「内覧とどめて閉門せられにけり」(出典:愚管抄(1220)四)
  5. 江戸時代、武士・僧侶・社人らに科せられた監禁刑の一つ遠慮逼塞(ひっそく)などより重い。五〇日から一〇〇日の間、外から門をとざし窓をとじ、一切の出入を許さなかった。病人は夜中医者をよび、死人は夜中菩提所へ送り、火事焼失した時は立退くことだけが許された。
    1. [初出の実例]「行は三人の道ことにして 死罪流罪に又は閉門(ヘイモン)」(出典:俳諧・宗因七百韵(1677))
    2. [その他の文献]〔禁令考‐別巻・棠蔭秘鑑・亨・一〇三(1841)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「閉門」の意味・わかりやすい解説

閉門 (へいもん)

刑罰の名称。鎌倉時代からこの語はあって,中世ではみずから謹慎することで刑罰ではなかったが,江戸時代には刑罰の名称となった。江戸幕府法では武士と僧に科せられる刑で,屋敷の門を閉じ,昼夜とも当人および内外の者の出入りを禁じ,ただ病気のときには夜中に医師招き,また出火類焼にあたっては消防,避難することは許されていた。自由刑と名誉刑との性質をもつ刑罰で,これより軽いものとして〈逼塞(ひつそく)〉〈遠慮〉〈戸〆(とじめ)〉〈押込(おしこめ)〉があった。前2者は武士と僧に科するもの。逼塞は門を閉じるが,夜間は潜門(くぐりもん)から目だたぬように出入りすることを許すもの。遠慮も門は閉じるが,潜門は引き寄せておけばよく,夜間には目だたぬように出入りすることを許すもの。戸〆は庶民に科するもの。門戸を釘〆にする。のちにはほとんど行われなかった。押込は武士,僧,庶民に科するもの。門を閉じ外出を禁止するものであった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「閉門」の意味・わかりやすい解説

閉門
へいもん

江戸時代~明治初年の刑罰の一つ。武士や僧侶に科せられ,『公事方御定書』には,「門を閉し,窓をふさぐが,釘〆 (くぎじめ) にする必要はない」とあるだけで不明確であるが,同条但書およびこれより刑の軽い逼塞遠慮の規定よりみて,出入りは昼夜とも禁止されていたことがわかる。ただし,病気のとき夜間に医師を呼び入れたり,火事のとき屋敷内の防火にあたったりすることはもちろん,焼失の危険ありと判断すれば退去して,その旨を届け出ればよいとされていた。明治政府も,『新律綱領』において,士族,官吏,僧徒の閏刑 (じゅんけい) の一つとしてこれを採用していたが,1873年4月閏刑五等はすべて禁錮と改称され,これに伴って消滅した。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「閉門」の解説

閉門
へいもん

江戸時代,武士および僧侶に対して科せられた謹慎刑。中世では,みずから屋敷内にこもり謹慎することを意味したが,近世には刑罰となった。門を閉じ窓を塞がれ,謹慎させられたが,戸〆のように釘〆にする必要はなかった。遠慮・逼塞(ひっそく)より重く,蟄居(ちっきょ)より軽い。50日から100日の間,門の出入りを一切禁止された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「閉門」の意味・わかりやすい解説

閉門
へいもん

江戸時代、武士、僧侶(そうりょ)に科せられた刑。門を閉じて窓をふさぎ、昼夜とも出入りを禁じたが、釘締(くぎじめ)にする必要はなかった。ただし病気の際は医師を招くこともでき、火事の際は屋敷内の火を防ぐのは差し支えなく、また屋敷が危うくなった場合には屋敷を立ち退くことが許された。

[石井良助]

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百科事典マイペディア 「閉門」の意味・わかりやすい解説

閉門【へいもん】

中世には自ら謹慎することをいって刑罰ではなかったが,江戸時代武士・僧侶に科された監禁刑の一つ。50〜100日間門扉を閉じ,窓も閉じて昼夜とも一切の出入を禁じた。これより軽いものに〈逼塞(ひっそく)〉,〈遠慮〉,〈戸〆(とじめ)〉,〈押入(おしこめ)〉があった。

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普及版 字通 「閉門」の読み・字形・画数・意味

【閉門】へいもん

門をとざす。

字通「閉」の項目を見る

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