雅楽の舞楽の登・退場音楽,および能の登場の囃子事のひとつ。舞楽の乱序は,羯鼓(かつこ)または三ノ鼓と太鼓(大太鼓(だだいこ)),鉦鼓(しようこ)(大鉦鼓)によって奏されるもので,4拍一単位の簡素なリズムが,速度の変化を伴わずに何度も繰り返される。そこに竜笛(りゆうてき)が〈陵王乱声〉(〈陵王乱序〉とも)または〈安摩乱声(あまらんじよう)〉を併奏する場合があり,乱序と称する舞の手もある。〈陵王乱声〉は,4拍子の拍節的な旋律を,三つの声部に分かれて1小節ずつ遅れて吹きはじめる追吹きという方法によって,打楽器のリズムに合わせて併奏する。〈安摩乱声〉も,同一旋律を三つの声部が少しずつずらせて奏するが,ほかの乱声と同じくリズムが非拍節的である点が大きく異なる。能の乱序は〈獅子〉という舞事の前奏として奏されるもので,その後半に舞手が登場する。登場の直前に露ノ手(露ノ拍子などとも)と称する特別な部分が挿入されるので,乱序は序奏部分・露ノ手・登場部分という構成になる。大部分は四拍子(しびようし)全部で奏するが,露ノ手の部分では小鼓と太鼓だけになる。ここは,深山にしたたり落ちる露を表現するなどといい,二つの打楽器が,長い休止を隔てながら交互に弱音で打つ。能の囃子には,音が休止する部分が多く,しかもその休止の部分で精神的緊張感はどんどん高まっていくということがしばしばいわれるが,その際に最初に例とされるのが多くは露ノ手の部分である。それ以外の部分は,三つの打楽器が乱序特有の地(じ)を力強く豪壮に奏し,笛はアシライで彩りを添える。役が登場して橋掛りで止まると,流シ(同一の段を打ち続けること)となり,役が舞台に入ると,謡をはさまずに直接獅子舞が接合する。この囃子事は獅子とともに歌舞伎の所作事にもとり入れられたが,古くは来序と呼ばれることが多かった。
執筆者:蒲生 郷昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…天平のころ,林邑(今のベトナム)の僧仏哲が伝えたものを,承和年間(834‐848)に大戸清上が改作したといわれる。演奏次第は,壱越調調子・音取―乱序(鹿婁(ろくろ)乱序といい,これ以下,笛と打物のみで奏する。最初,打物だけで鹿婁という特殊な奏法をする間に舞人は面をつけ,楽屋を出て,舞台に登る。…
…舞楽では中心となる舞曲(当曲(とうきよく)という)のほかに必ず舞人の登・退場のための音楽を必要とし,このほか曲によっては序奏や間奏曲,あるいは当曲自体が数楽章に分かれるものなどいろいろあるが,これらの楽章と,舞人の登・退場,演舞の関係が唐楽と高麗楽とでは異なる。唐楽では当曲の前後に,これとは別個の調子の品玄(ぼんげん)・入調(にゆうぢよう),各種の乱声(らんじよう),乱序(らんじよ),道行(みちゆき)などの登・退場楽をもつものがほとんどであるのに対し,高麗楽では《高麗乱声(こまらんじよう)》という登場楽をもつものが数曲ある以外は,ほとんどの曲が当曲の間に登場,演舞,退場するという簡素化された形をもつ。その代り,舞人が楽屋にいる間に奏される序奏曲に関しては,高麗楽ではほとんどの曲が各種の音取(ねとり),小乱声(こらんじよう),納序(のうじよ),古弾(こたん)などの序奏をもつのに対し,唐楽では序奏をもつものは数例にすぎない。…
※「乱序」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新