奏
そう
天皇に上申すること、またその上申文書。公式令(くしきりょう)の規定によると、太政官(だいじょうかん)の奏には、論奏式(ろんそうしき)、奏事式(そうじしき)、便奏式(びんそうしき)の3様式がある。論奏式は太政官が大祭祀(さいし)、官員増減、流罪以上の処断・除名、国郡の廃置など重要事項を奏上するとき用いる文書様式で、奏事式は論奏以外の事柄について、また便奏式は小事の奏上の様式であった。論奏式には、天皇が裁可した場合、「聞(ぶん)」と勅書される。奏の正文は現存しないが、「六国史(りっこくし)」や『類聚三代格(るいじゅうさんだいきゃく)』に奏が引用されている。このほか弾正台(だんじょうだい)が役人の弾劾を奏上するときの奏弾式、諸国から変事を急報するときの飛駅式(ひえくしき)の様式が規定されている。また奏には、密封して奏上する密奏があり、陰陽寮(おんみょうりょう)の天文(てんもん)密奏が名高い。
[百瀬今朝雄]
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そう‐・する【奏】
〘他サ変〙 そう・す 〘他サ変〙
① 天皇、または上皇、法皇に申しあげる。朝廷に奏上する。特に天皇に申し上げる場合に用いて、「啓する」と区別する。
※竹取(9C末‐10C初)「かかれば、心ばせも世の人に似ず侍ると奏せさす」
※今昔(1120頃か)一一「文部の屋栖野と云ふ人有り、此事を天皇に奏する、天皇、敢て不信給は(しんじたまはず)」
※新儀式(963頃)四「三献之後、日行事
公卿令
レ奏
レ楽、楽所於
二西門内
一、奏
二乱声
一三度、訖奏
二参入音声
一〈略〉
舞訖、奏
二罷出音声
一退出」
※平家(13C前)一「文人詩を奉り、伶人楽を奏して遷幸なし奉る」
③ (「結果を奏す」「功を奏す」の形で用い) 成果や
功績をもたらす。なしとげる。うまくしとげる。
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉四「及極て能く真正の志気あるものは、極大の功績を奏する(〈注〉シアゲル)ことなり」
そう【奏】
〘名〙
① 天皇に申し上げること。また、その
公文書。太政官から申し上げて
勅裁を仰ぐには、事の
大小により、論奏式・奏事式・便奏式の三種があり、その
書式は公式令に規定されていた。また、のちには個人から奉るものもあった。
※
令義解(718)公式「奉
レ勑依
レ奏。若更有
二勑語
一須
レ付者、各随
レ状付云々」
※
落窪(10C後)四「早うさるべき様にそうを奉らせよ」 〔蔡邕‐独断〕
② 音楽をかなでること。
かなで【奏】
〘名〙 (動詞「かなでる(奏)」の連用形の名詞化) 音楽を奏し、舞を舞うこと。
※宇治拾遺(1221頃)一「さもめづらしからんかなでを見ばや」
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奏【そう】
太政(だいじょう)官が事を奏聞(そうもん)して勅裁を仰ぐ行為,またはそのために奉る文書。奏聞する物事の重要さに従って論奏式,奏事式,便奏(びんそう)式の3種がある。論奏式においては,日付の次に勅筆で〈聞〉と書き裁許を表す。奏の正文(しょうもん)は伝わらないが,《六国(りっこく)史》《類聚(るいじゅう)三代格》などでその例を知り得る。
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そう【奏】
天子に申し上げること。また、その文書。「遺令の奏」
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奏
そう
天皇の裁断を得るために太政官から上奏する文書。『養老令』における公式令では重要事項を上奏する論奏式,地方官からの上申を天皇に取次ぐ奏事式,簡単軽微な事柄を上奏する便奏式の3種に分けられている。
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奏(かなで)
日本のポピュラー音楽。作詞作曲と歌はJ-POPユニット、スキマスイッチ。2004年発売。
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そう【奏】
天皇に政治上のことで勅裁を仰ぐために,口頭または文書で上申すること。その行為を奏上,上奏,奏聞などといい,内密に奏することを内奏,密奏という。密奏は奏状を密封して奏する場合もある。律令制では太政官(だいじようかん),弾正台および地方国司から奏する定めで,その文書様式を公式令で規定している。太政官からの場合,論奏式,奏事式,便奏式の3型がある。論奏式とは大祭祀,支度国用,官員増減,流罪以上の断罪,国郡の廃置,百疋以上の兵馬を差発すること等,国家の大事を太政官で発議して上奏するもので,太政大臣以下議政官(公卿)が署名して上奏する。
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世界大百科事典内の奏の言及
【奏議】より
…中国における文章の一形式で,臣下が君主に上(たてまつ)る意見書のこと。古くは上書といい,漢代では章,奏,表,議などといった。魏・晋時代以後は啓といい,唐・宋時代では表,状,剳(さつ),書などともよばれた。…
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