(読み)ソウ

デジタル大辞泉 「奏」の意味・読み・例文・類語

そう【奏】[漢字項目]

[音]ソウ(漢) [訓]かなでる もうす
学習漢字]6年
意見をまとめて差し出す。君主に申し上げる。「奏上奏請奏聞そうもん直奏じきそう執奏上奏伝奏てんそう内奏
楽器をかなでる。「奏楽演奏合奏間奏吹奏前奏弾奏独奏伴奏
成果を得る。「奏功奏効
[名のり]かな

そう【奏】

天子に申し上げること。また、その文書。「遺令いりょう

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精選版 日本国語大辞典 「奏」の意味・読み・例文・類語

そう【奏】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 天皇に申し上げること。また、その公文書太政官から申し上げて勅裁を仰ぐには、事の大小により、論奏式奏事式便奏式の三種があり、その書式公式令に規定されていた。また、のちには個人から奉るものもあった。
    1. [初出の実例]「奉勑依奏。若更有勑語付者、各随状付云々」(出典令義解(718)公式)
    2. 「早うさるべき様にそうを奉らせよ」(出典:落窪物語(10C後)四)
    3. [その他の文献]〔蔡邕‐独断〕
  3. 音楽をかなでること。

かなで【奏】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「かなでる(奏)」の連用形名詞化 ) 音楽を奏し、舞を舞うこと。
    1. [初出の実例]「さもめづらしからんかなでを見ばや」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一)

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普及版 字通 「奏」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

[字音] ソウ
[字訓] かなでる・すすめる・もうす

[説文解字]

[字形] 会意
奉の上部+(そう)の省文。〔説文〕十下に「奏するなり。夲(たう)に從ひ、廾(きょう)に從ひ、(てつ)に從ふ。は上の義なり」とし、また夲字条十下に「み趣(おもむ)くなり」とする。〔詩、商頌、那〕の〔箋〕に「奏とは樂を作(な)すの名なり」とあり、もと奏楽の意。次条の皋(こう)字条に「登謌(とうか)を奏と曰ふ」とあり、歌にも奏という。両手で奉ずる形をとるものは、笙のような吹奏の器であるらしく、もと神に奏するものであった。も両手を以て奉ずる形。のち楽歌に限らず、尊貴の人に申すことを奏という。

[訓義]
1. かなでる、神をかなでる、神前に楽をかなでる、神前に歌をすすめる、すすめる。
2. もうす、神前にもうす、尊貴の人にもうす。
3. 申し文、奏状。
4. おもむく、むかう、なす。

[古辞書の訓]
〔字鏡〕奏 マウス・ススム 〔字鏡集〕奏 マツ・フミ・ススム・タテマツル・オクル・マウス・キカシム・ユタカ・ユルス

[部首]
〔説文〕〔玉〕に部首を夲とし、暴・奏・皋などを属する。暴・皋は風雨に暴(さら)されて皋白(こうはく)となった獣屍の象。奏は奏楽の字であるから、形義とも関係のない字である。夲は獣屍の下体の象。用例もなく、部首ともしがたい字である。

[声系]
〔説文〕十一上に奏声として湊を収める。湊は「水上の、人の會するなり」という。奏に諸楽合奏の意がある。輳(そう)は〔説文〕未収の字。車馬の輻輳する所をいう。

[語系]
奏tzo、湊tsokは声義近く、湊は奏の声義を承ける。聚・dzio、叢dzong、族dzokもみな集まり合する意があり、同系の語と考えられる。

[熟語]
奏案・奏・奏可・奏賀奏劾奏凱・奏記奏議・奏啓・奏・奏・奏工・奏功奏稿・奏裁・奏参・奏事・奏捷・奏章・奏・奏上・奏審・奏請奏牋奏薦・奏・奏対・奏弾・奏刀・奏当奏牘奏稟・奏舞・奏聞奏辟
[下接語]
案奏・劾奏・楽奏・合奏・間奏・議奏・協奏・競奏・金奏・奏・交奏・讒奏・執奏・重奏・序奏・章奏・上奏・条奏・進奏・吹奏・趨奏・節奏・奏・弾奏・庭奏・伝奏・独奏・内奏・納奏・繁奏・表奏・稟奏・誣奏・敷奏・賦奏・覆奏・聞奏・奉奏・密奏・面奏・連奏

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改訂新版 世界大百科事典 「奏」の意味・わかりやすい解説

奏 (そう)

天皇に政治上のことで勅裁を仰ぐために,口頭または文書で上申すること。その行為を奏上,上奏,奏聞などといい,内密に奏することを内奏,密奏という。密奏は奏状を密封して奏する場合もある。律令制では太政官(だいじようかん),弾正台および地方国司から奏する定めで,その文書様式を公式令で規定している。太政官からの場合,論奏式,奏事式,便奏式の3型がある。論奏式とは大祭祀,支度国用,官員増減,流罪以上の断罪,国郡の廃置,百疋以上の兵馬を差発すること等,国家の大事を太政官で発議して上奏するもので,太政大臣以下議政官(公卿)が署名して上奏する。天皇は承認すると,そのしるしとして文末に〈聞〉と書いて下げわたす。つぎの奏事式は内外諸官司の上申を取り次いで,原則として大納言が奏上するものである。便奏式は日常的な政務で勅裁を仰ぐもので,少納言が奏上した。奏事式,便奏式で勅裁を受けたものは,奏者が〈奉勅依奏〉と文末に書いて執行した。このほか弾正台が太政大臣を除く親王および五位以上の役人の非違を弾劾する場合の奏弾式の様式が定められている。弾正台からの奏弾は太政官を経由しないで,直接天皇に上奏した。また地方官たる国司等が緊急事態を上奏するときのために飛駅上式が定められている。各種奏で正文が残っているものはなく,六国史や《類聚三代格》等に引用されているほか,意見封事など密奏に類するものは《本朝文粋》等に載せられている。
太政官奏
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「奏」の意味・わかりやすい解説


そう

天皇に上申すること、またその上申文書。公式令(くしきりょう)の規定によると、太政官(だいじょうかん)の奏には、論奏式(ろんそうしき)、奏事式(そうじしき)、便奏式(びんそうしき)の3様式がある。論奏式は太政官が大祭祀(さいし)、官員増減、流罪以上の処断・除名、国郡の廃置など重要事項を奏上するとき用いる文書様式で、奏事式は論奏以外の事柄について、また便奏式は小事の奏上の様式であった。論奏式には、天皇が裁可した場合、「聞(ぶん)」と勅書される。奏の正文は現存しないが、「六国史(りっこくし)」や『類聚三代格(るいじゅうさんだいきゃく)』に奏が引用されている。このほか弾正台(だんじょうだい)が役人の弾劾を奏上するときの奏弾式、諸国から変事を急報するときの飛駅式(ひえくしき)の様式が規定されている。また奏には、密封して奏上する密奏があり、陰陽寮(おんみょうりょう)の天文(てんもん)密奏が名高い。

[百瀬今朝雄]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「奏」の解説


そう

一般に天皇に対して官司または臣下個人が上申すること。口頭と文書による場合がある。律令制下では,文書による奏の書式について,公式令(くしきりょう)に論奏・奏事・便奏(びんそう)の三つの太政官からの奏のほか,奏弾・飛駅(ひやく)上式を規定。論奏は国家の大事について太政官の議政官が発議して奏上する場合,奏事は原則として諸司の解(げ)にもとづいて論奏以外に奏すべきことを太政官から奏上する場合,便奏は日常的な小事について少納言から奏上する場合に用いられた。奏弾は弾正台が官人の非違を奏上するもので,飛駅上式は緊急の事件について諸国から上奏するものであった。このほか諸司から太政官を経由せずに天皇に上奏する直奏(じきそう)が広範に存在した。

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百科事典マイペディア 「奏」の意味・わかりやすい解説

奏【そう】

太政(だいじょう)官が事を奏聞(そうもん)して勅裁を仰ぐ行為,またはそのために奉る文書。奏聞する物事の重要さに従って論奏式,奏事式,便奏(びんそう)式の3種がある。論奏式においては,日付の次に勅筆で〈聞〉と書き裁許を表す。奏の正文(しょうもん)は伝わらないが,《六国(りっこく)史》《類聚(るいじゅう)三代格》などでその例を知り得る。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「奏」の意味・わかりやすい解説


そう

天皇の裁断を得るために太政官から上奏する文書。『養老令』における公式令では重要事項を上奏する論奏式,地方官からの上申を天皇に取次ぐ奏事式,簡単軽微な事柄を上奏する便奏式の3種に分けられている。

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デジタル大辞泉プラス 「奏」の解説

奏(かなで)

日本のポピュラー音楽。作詞作曲と歌はJ-POPユニット、スキマスイッチ。2004年発売。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【奏議】より

…中国における文章の一形式で,臣下が君主に上(たてまつ)る意見書のこと。古くは上書といい,漢代では章,奏,表,議などといった。魏・晋時代以後は啓といい,唐・宋時代では表,状,剳(さつ),書などともよばれた。…

※「奏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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