駅鈴(読み)エキレイ

デジタル大辞泉 「駅鈴」の意味・読み・例文・類語

えき‐れい【駅鈴】

律令制で、官命によって旅行する者に中央官庁と地方国衙こくがから下付した鈴。駅馬供与を受ける資格を証明し、これを鳴らしながら旅行した。えきろのすずうまやのすず。

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精選版 日本国語大辞典 「駅鈴」の意味・読み・例文・類語

えき‐れい【駅鈴】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 令制下、駅使国家が給付した鈴。鈴には使者の位階によって定められた刻み目がついており、それによって供給される駅馬の数が規定されていた。駅使はこの鈴を鳴らして旅行した。駅路の鈴(すず)。うまやじのすず。〔令義解(718)〕
    1. 駅鈴<b>①</b>
      駅鈴
  3. 駅鈴を模した茶の湯の釜の蓋置(ふたおき)
  4. 列車発車を知らせるために鳴らす鈴。
    1. [初出の実例]「午後一時五分。駅鈴一振。黒煙を噴出して車坂を発し」(出典:風俗画報‐二〇〇号(1899)記事)

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改訂新版 世界大百科事典 「駅鈴」の意味・わかりやすい解説

駅鈴 (えきれい)

日本古代の駅伝制で公務出張者や公文書伝送の駅使らに駅馬利用の資格証明として貸与された鈴。駅鈴には身分によって利用しうる駅馬の頭数を示した剋(こく)という刻みがあったといい,親王・一位に10剋,二~三位に8剋,四位に6剋,五位に5剋,六~八位に3剋,初位以下に2剋の駅鈴が貸与されるが,隠岐国造おきのくにのみやつこ)家に伝わる八稜鈴には刻みがないので正しいものか否か問題になっている。あるいは大和朝廷時代から律令時代初期までは実際に刻みがあり,やがて刻みをやめて剋数を記した書類を添付することにした可能性がある。日本が模範とした唐ではすでに書類を使っていた。また駅鈴は中央でも行幸のさいには天皇御璽(内印)とともに持っていくほど厳重に保管され,地方では大宰府に20口(こう),伊勢・美濃・越前の三関国と陸奥国に4口,大国・上国に3口,中国・下国に2口が配置され,それぞれ国司の長官か次官かが保管の責任を負った。
駅伝制
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百科事典マイペディア 「駅鈴」の意味・わかりやすい解説

駅鈴【えきれい】

律令制で駅馬使用の資格証明に使われた鈴。官人の位に応じて2〜10剋(こく)が刻まれ,剋数に相当する人馬が供せられた。隠岐国造(おきのくにのみやつこ)家に伝わる八稜鈴(はちりょうれい)が有名だが,剋の刻みがないため疑問視されている。
→関連項目駅・駅家

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「駅鈴」の解説

駅鈴
えきれい

古代の駅制で,駅馬利用の資格を示す鈴。剋(きざみ)がつけられており,剋数1につき駅馬か伝馬が1匹給された。駅鈴は,(1)駅使に支給されるもの,(2)在外諸司に支給されるもののほか,天皇が行幸するときに京の留守官に支給されることもあった。(1)の剋数は位階により,(2)の個数は国の等級により差異があった。駅鈴の出納は少納言・主鈴(しゅれい)がつかさどった。隠岐国造家に駅鈴が伝来しているが,剋がないので真偽をめぐって議論がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「駅鈴」の意味・わかりやすい解説

駅鈴
えきれい

令制の駅制で,公務出張に際し朝廷から与えられた鈴。出張者は,駅でこれを鳴らして駅子,駅馬を徴発した。中央官庁と地方国衙に備えてあった。 (→駅家〈うまや〉 )  

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旺文社日本史事典 三訂版 「駅鈴」の解説

駅鈴
えきれい

律令制下の駅制において,官吏が公用で諸国を往来する際に駅馬利用の資格を示す鈴
中央官庁のほか大宰府・諸国衙にも備えてあり,これによって駅馬を調達した。

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世界大百科事典(旧版)内の駅鈴の言及

【駅伝制】より


[日本]
 日本古代の駅伝制は車を欠き馬と人のみによるが,朝廷が関与した駅制と,国郡に管理させた伝馬制とに分けられる。まず駅制の萌芽は,6世紀末から7世紀前半にかけて大和朝廷の全国支配が進み,大陸に隋・唐の大帝国が出現して朝鮮半島を圧迫しはじめたころ,北九州の出先官庁と大和朝廷との間の連絡を緊密にする必要が生じ,朝廷の発行した駅鈴(えきれい)を携帯した官人に途中の国造が便宜をはかるという形で発生したと思われる。大化改新後,7世紀後半の律令国家形成期には,駅鈴によって駅馬を利用しうる道を北九州との間だけでなく東国へも延ばしはじめたようであるが,8世紀初頭の大宝令では唐を模範とした駅制を全国に拡大することとした。…

※「駅鈴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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