六訂版 家庭医学大全科 「骨・関節の外傷〈総論〉」の解説
骨・関節の外傷〈総論〉
(運動器系の病気(外傷を含む))
●小児の骨の特殊性
ひとつの骨の各部分の名称は、中央の長い部分を
まず小児の骨幹部は弾力性に富み、周囲を厚い骨膜という、血管が豊富な膜でおおわれています。成長とともに骨が太くなる(横径成長)のに必要な
骨端部と骨幹端部の間には、骨端成長軟骨板という骨が長くなる(長径成長)のに必要な軟骨層があります。これはX線写真でみると骨が抜けた線にみえるので、
このように小児の骨は縦にも横にも成長するために、成長が終了して安定した成人の骨とは性質が異なるのです。
●小児の骨折の特殊性
小児では、骨折においても成人と異なる性質があります。
まず骨幹部の骨折では、小児はポッキリと完全に折れる完全骨折は少なく、骨皮質が一部骨折せずに残る
骨膜からの骨代謝が旺盛なため、骨癒合に必要な
骨端部の骨折では、成長軟骨板(骨端線)を含むため、骨端
骨端線が長軸圧を受けて
成長軟骨板全体に横に骨折線が入ると、骨端部は骨幹端から完全に分離します。骨端部は周囲に骨膜や骨皮質がないため、骨癒合に必要な仮骨は
●
小児では横径成長や長径成長が旺盛なため、完全骨折で骨膜も完全断裂して骨片が大きく転位していても、自家矯正が期待できます。
自家矯正は年齢が低いほど強力です。年齢が高い場合は、骨折した骨の成長があと2年間は残っていなくては、自家矯正は期待できません。骨幹部中央よりも骨幹端部のほうが矯正は強力です。
屈曲転位では、関節の運動方向と同じ方向の転位が矯正されやすく、10~20度まで矯正可能です。側方転位では、骨片同士が接していれば矯正可能です。短縮転位では、1㎝までなら矯正可能です。回旋(ねじれ)転位や関節内骨折の転位、骨端離開の転位では、自家矯正は期待できません。
●骨折の原因
骨折が起こるには外からの力(外力)が加わらなければなりません。外力が直接に加わった部位の骨が折れる場合は
骨折は原因によって大きく4つに分類されます。正常な強度の骨に強い外力が加わって発生するのが外傷性骨折です。骨に腫瘍などができて強度が弱くなった部位に、普通では折れない程度の弱い外力が加わって発生するのが病的骨折です。
正常な骨に通常では折れない程度の弱い外力が繰り返し加わって発生するのが疲労骨折で、スポーツ選手に多くみられます。高齢者で
●骨折の合併症
原因が外傷の場合は、外力のエネルギーの大きさで骨折のしかたが変わります。
直達外力の場合は、外力がさほど大きくないと横骨折、大きいと
外力のエネルギーが大きいと、骨折を起こした部位の皮膚や筋肉、神経、血管にも損傷が加わります。皮膚が切れる開放
さらに骨折の全身合併症として、骨折部の出血によるショック、ショックに続発して血が止まりにくくなり出血傾向が全身的に起こる播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群、肺、脳などの重要臓器におこる脂肪
中高齢者では、骨盤や下肢の骨折のためしばらくベッド上で安静にしている間に、深部静脈に血栓が発生する
●骨折の症状
骨折の症状は一般的には骨折部のはれ、痛み、圧痛、ずれが大きい場合の変形、骨折部の異常な動き、運動障害などがあります。症状は外力の大きさによって異なり、外力が小さくて不全骨折(いわゆる「ひび」)の場合は症状が乏しいため、X線写真などの画像検査で初めて発見されることがあります。
鈴木克侍
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報