精選版 日本国語大辞典 「高橋お伝」の意味・読み・例文・類語
たかはしおでん【高橋お伝】
たかはし‐おでん【高橋お伝】
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明治期の代表的毒婦とされる人物。上州利根郡下牧村生れ,父は旧沼田藩家老広瀬半右衛門(口供書)とも信州無宿の博徒鬼神の清吉ともいわれる。1872年,従兄で夫の波之助とともに上京,浅草蔵前の旅宿で古着商後藤吉蔵を刺殺した嫌疑により76年逮捕された。このとき29歳であったともいう。お伝は吉蔵殺しを異母姉おかねの復讐と主張したが,東京裁判所は色じかけの殺人強盗として市ヶ谷刑場で斬首刑に処した。刑死4ヵ月後の5月新富座で《綴合於伝仮名書(とじあわせおでんのかなぶみ)》(河竹黙阿弥作)として劇化上演,お伝に5世尾上菊五郎が扮した。また仮名垣魯文作《高橋阿伝夜叉譚(たかはしおでんやしやものがたり)》も刑死直後に出版,その後,町川黙鶯,矢田挿雲,邦枝完二らによって読物・小説化されたが,毒婦としてのお伝はしだいに拡大され,犯行被害者も,実父清吉,黒川仲蔵,鈴木浜次郎,夫の波之助,小川市太郎らに及んだ。売春婦であったことは事実らしいが,それら仮構の殺人罪は,江戸期からの〈悪婆(あくば)〉としてのネガティブな伝統的美化作用によって構築され,お伝の虚像が作られていったものと考えられる。
執筆者:小池 章太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(関井光男)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
明治の初め殺人罪で処刑され、希代の毒婦・妖婦(ようふ)と評判された女性。嘉永(かえい)4年上野(こうずけ)国(群馬県)利根(とね)郡下牧(しももく)村の生まれ。郷里で結婚したが、夫とともに出奔。窮乏のすえとも、夫が癩病(らいびょう)にかかったためともいう。夫の死(お伝の毒殺説がある)後、東京に出て、御家人(ごけにん)くずれの男を情夫にもつ。かたわら身を売って生活の糧(かて)とするが、不義理な借金がかさむばかりで、古着商後藤吉蔵を金目当てで浅草蔵前(くらまえ)の宿屋へ連れ込み、用意の剃刀(かみそり)で喉(のど)を切り殺害する。1876年(明治9)8月のことである。数日後、情夫といるところを逮捕され、2年余りにわたる裁判のすえ、市谷(いちがや)監獄で斬首(ざんしゅ)の刑に処せられた。処刑の翌月には、その評判を当て込んで仮名垣魯文(かながきろぶん)が戯作(げさく)『高橋阿伝夜刃譚(おでんやしゃものがたり)』を書いている。
[稲垣史生]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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