鴻門の会(読み)コウモンノカイ

デジタル大辞泉 「鴻門の会」の意味・読み・例文・類語

こうもん‐の‐かい〔‐クワイ〕【×鴻門の会】

中国末の前206年、劉邦りゅうほう項羽こううとが鴻門で行った会見項羽の臣の范増はんぞう劉邦を殺害しようとしたが、劉邦は張良樊噲はんかいらの計で逃れた。

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精選版 日本国語大辞典 「鴻門の会」の意味・読み・例文・類語

こうもん【鴻門】 の 会(かい)

  1. 「史記‐項羽本紀」にみえる中国の故事。中国、秦末の二英雄項羽と劉邦が関中の争奪をめぐって前二〇六年、鴻門に会したことをいう。項羽の臣范増は、剣舞にことよせて劉邦を殺そうとするが、劉邦は臣樊噲(はんかい)の助けによって虎口を脱する。〔後漢書‐斉武王伝〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鴻門の会」の意味・わかりやすい解説

鴻門の会
こうもんのかい

農夫から身をおこして中国の前漢王朝を創設した劉邦(りゅうほう)が、その遂行過程で危うく難を逃れた事件。秦(しん)朝末期の紀元前207年10月、南から秦の都咸陽(かんよう)に迫る劉邦は、東から進撃してくる項羽(こうう)より約1か月早く都を占領、秦王を虜(とりこ)にし、項羽の到着を待っていた。2人の間には、秦帝国の心臓部である関中に先に入ったほうがこの地の王となるとの約があった。しかし、項羽は討秦軍全体の最高指揮官、劉邦はその一部将、そして率いる軍勢は40万対10万と、劉邦が劣勢であった。項羽には盟約を果たす意志はなく、彼の謀臣范増(はんぞう)は劉邦の恐るべき人物たるを見抜き、劉邦謀殺を進言、項羽の本陣である鴻門(陝西(せんせい)省臨潼(りんどう)県の東)で酒宴を催し、これを機に殺そうとした。范増は、酒席についた劉邦をいまこそ刺すべしとしきりに促すが、項羽はなぜか応じない。范増はなおも項羽の従弟項荘に剣の舞をさせその最中に刺させようとするが、一族でありながら劉邦に脈を通じる項伯が剣を抜いて舞いに加わり劉邦をかばう。そこへ劉邦の腹臣の猛者(もさ)樊噲(はんかい)が主君危急を聞いて駆けつける。髪は逆立ち目は張り裂けんばかりの闖入(ちんにゅう)者に項羽は驚き剣を抜くが、劉邦の近臣張良がとりなす。樊噲は立ったまま項羽からの大杯を受け、手にする盾の上に肉をのせて食い、懸命に劉邦の異心なきを述べる。その間に劉邦は厠(かわや)に行くと称して席をたち、そのまま自陣に疾駆してようやく虎口(ここう)を脱した。

[春日井明]

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改訂新版 世界大百科事典 「鴻門の会」の意味・わかりやすい解説

鴻門の会 (こうもんのかい)

中国,劉邦項羽との鴻門(陝西省臨潼県)における会見(前206)をいう。両雄は秦の本拠である関中をめざしたが,劉邦の方が武関から先に入関した。一方,項羽は秦将章邯の率いる精兵の征討に手間取りおくれを取る。項羽は劉邦に野望ありとして新豊の鴻門坂に布陣し,襲撃しようとした。ために劉邦はみずから項羽の陣中に出向き釈明したが,張良の奇略により虎口を脱しことなきをえた。《史記》には,陣中での席次,范増示玦,項荘剣舞,樊噲(はんかい)怒髪などその会見の様子がリアルに描写されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鴻門の会」の意味・わかりやすい解説

鴻門の会
こうもんのかい
Hong-men; Hung-men

中国の秦,漢交代期に覇権を争った項羽と劉邦 (→高祖) が鴻門に会して盟約したことをさす。秦末の反乱のとき,先に秦の本拠地の関中 (陝西省) に入った者が王となる約束であったが,劉邦が先に占領したので不満をもった項羽が函谷関 (かんこくかん) から入って劉邦を撃破しようとした。その衝突を心配した劉邦の将軍の張良や項羽の叔父の項伯らが和睦をはかり,咸陽の入口の鴻門で両者を会合させた (前 206) 。この会合で劉邦は項羽に忠誠を誓った。項羽の謀将范増 (はんぞう) は会合の機会を利用して劉邦を殺そうとしたが樊かい (はんかい) らに妨げられて失敗し,劉邦は脱出に成功したという。

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世界大百科事典(旧版)内の鴻門の会の言及

【樊噲】より

…早くから劉邦(高祖)に従い,挙兵のときには舎人となって従軍し,数々の軍功をたてた。なかでも項羽の主宰した鴻門の会において,宴席に闖入して劉邦の危機を救った話は有名である。漢の天下統一後は左丞相,相国を歴任し,臧荼(ぞうと),韓信,盧綰(ろわん)らの謀反を平定して舞陽侯に封ぜられた。…

※「鴻門の会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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