虎口(読み)ココウ

デジタル大辞泉 「虎口」の意味・読み・例文・類語

こ‐こう【虎口】

《恐ろしい虎の口の意》非常に危険な所、また、危険な状態のたとえ。危機。虎穴。「虎口を脱する」
[類語]危険危難危機危殆きたい危地ピンチ物騒剣呑けんのん危ない苦境窮地窮境窮状難局羽目険しい不穏際どいやばいきな臭い呉越同舟一触即発風前のともしび薄氷をふむ風雲急を告げる

こ‐ぐち【虎口】

城郭や陣営などの最も要所にある出入り口。小口。
「一人も助けてやらじものをと、―に立ってぞ待ちかけたる」〈謡・烏帽子折
合戦などで、最も重要な局面。また、極めて危険な戦い。〈日葡

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精選版 日本国語大辞典 「虎口」の意味・読み・例文・類語

こ‐こう【虎口】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 虎の口。非常に危険な事柄や場所をたとえていう。虎穴(こけつ)。こくう。こぐち。
    1. [初出の実例]「暗記龍顔奇在一レ骨、先知虎口利如一レ刀」(出典菅家文草(900頃)二・勧学院漢書竟宴、詠史得叔孫通)
    2. 「左するとも虎口(ココウ)の敵路、未練の死をばなさんより、此処にて潔く自殺して相果てんと」(出典:歌舞伎・音響千成瓢(1876)序幕)
    3. [その他の文献]〔荘子‐盗跖〕
  3. 弓を持つ左手の親指と人さし指の、またの部分をいう。
    1. [初出の実例]「恩賜黄花纔虎口、勅催紅袖惣蛾眉」(出典:菅家文草(900頃)二・九日侍宴、各分一字)

こ‐ぐち【虎口・小口】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 城郭や陣営などの最も要所にあたる出入口城門などで枡形を造り、敵勢が一時に攻め込めないようなしかけがしてあるところ。〔文明本節用集(室町中)〕
    1. [初出の実例]「八幡もご知見あれ、ひとりも助けて遣らじものをと、小口に立ってぞ待ちかけたる」(出典:謡曲・烏帽子折(1480頃))
  3. きわめて危険なこと。また、危険な場所。ここう。
    1. [初出の実例]「小男が議論にとりこめられてめいわくに及とみえたほどに合力して小口を一くつろげくつろげてやりさうわうと云たぞ」(出典:玉塵抄(1563)一二)

こ‐くう【虎口】

  1. 〘 名詞 〙 「ここう(虎口)」の変化した語。

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改訂新版 世界大百科事典 「虎口」の意味・わかりやすい解説

虎口 (こぐち)

城あるいはその各郭の出入口。小口とも書く。単なる出入りだけでなく,防御と攻撃(出撃)の機能を持たせるために種々のくふうと施設が加わって発達した。木戸や矢倉を設けるだけのものから,前面に堀を設けて橋や坂で入る橋虎口や堀虎口,両脇の土塁を食違いにして直進を妨げる食違い虎口などが中世城郭でよく用いられた。中世末期に堀の外に小さな台場を張り出した馬出(うまだし)と,塁で囲んだ方形の空間をはさみこんだ枡形(ますがた)が考案され,近世城郭で完成した。発達した虎口ではいずれの形にせよ迂回・屈曲がみられる。虎口において寄せ手が城兵と遭遇する最も緊迫した瞬間に,左右いずれに曲がるかが虎口の良し悪しを規定する。弓を左手前に引くことから右折より左折の方が有利になるので,虎口は寄せ手が右折するようにくふうする。これを城兵の立場から順の虎口と呼び,反対を逆の虎口と呼ぶ。近世の枡形虎口はほとんど順の虎口になっている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「虎口」の意味・わかりやすい解説

虎口
こぐち

城郭およびそれを構成する郭(くるわ)の入り口。小口(こぐち)とも書く。名前の由来には、城郭の最も重要な部分を虎の牙に例えて虎口とした、狭く小さなものがよいので小口としたという二つの説がある。城郭には立てこもると同時に、出撃の拠点となるという防御、攻撃の両面があるため、虎口にもその二つの機能が求められた。その重要性により多くの工夫が施され、戦国期後半から織豊期にかけ著しく発達した。石垣が最初に使われたのもこの虎口である。虎口の発達は、最も単純な平虎口(ひらこぐち)から、上り坂にある坂虎口、堀を前面に設けた橋虎口や堀虎口、直進できないようにした食違い虎口、また虎口自体が一定の空間を有する虎口へととらえることができる。このうち一定の空間を有する虎口とは、虎口前堀対岸につくられ土居で囲まれた馬出(うまだし)、石垣で囲まれた方形の空間と二つの門からなる桝形(ますがた)をさす。これらが虎口の到達点の形態である。近世城郭では多数の郭に加えて、複数の桝形や馬出が設けられ複雑な縄張りを構成した。また桝形、馬出において迂回、曲折するようになっているため、城内経路も複雑になり、敵の進入を妨げる機能を果たしている。

[藤川昌樹]

『千田嘉博著『職豊系城郭の形成』(2000・東京大学出版)』

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普及版 字通 「虎口」の読み・字形・画数・意味

【虎口】ここう

きわめて危険なところ。〔史記、食其(れきいき)伝〕足下、合(きうがふ)の衆をし、散亂の兵を收め、人に滿たず、以て徑(ただ)ちに強秦に入らんと欲す。此れ謂(いはゆる)虎口を探るなり。

字通「虎」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の虎口の言及

【山城】より

…しかし大名,国人層あるいは土豪,百姓惣郷組などその築城者によっても,各地各様,千差万別である。郭と郭の間に空堀を掘り,両方から土塁を築いて入口をつくる虎口(こぐち)や,郭をめぐる土塁などを設けて防御を固めているのが一般的であった。戦国大名が成長してゆくと,山上から山麓の居館部にまで連結される複雑な構えに発展する。…

【升形(桝形)】より

…枡形とも書く。城郭への出入口である虎口(こぐち)の最も発達した形態で,方形空間を囲んで築かれた箱形の石垣でつくられる。升形を虎口の内側に設けるのを内升形といい,これが通常の形式で,外側に設ける外升形は数が少ない。…

※「虎口」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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