まろ【麻呂・麿・丸】
[1] 〘語素〙 種々の名称の語末の構成要素として用いる。
① 男子の
人名を構成するのに用いる。
名詞や形容詞語幹その他の語に付いて、人名を作る。古くは単独で用いられる場合も多い。「麿」の字は、「
麻呂」を合わせて作られたものという。「人麻呂」「虫麻呂」など。
※
正倉院文書‐大宝二年(702)御野国味蜂間郡春部里戸籍「下々戸主稲麻呂〈年
九正丁〉嫡子安麻呂〈年廿三兵士〉」
※枕(10C終)九「この翁まろうちてうじて、
犬島へつかはせ」
[2] 〘接尾〙 人の
呼称や動物の名などに付けて
親愛の意を表わす。「うままろ」「さるまろ」など。
※風俗歌拾遺(体源鈔所収)(1512)うばらこぎ「猿奏づいなごまろは
拍子打つ」
※
古事記(712)中・
歌謡「
白檮(かし)の生
(ふ)に
横臼(よくす)を作り 横臼に 醸
(か)みし大御酒
(おほみき) うまらに 聞こしもち食
(を)せ 麻呂
(マロ)が親
(ち)」
[語誌](三)は、
上代の確実な例は少ないが、中古の
文献では、老幼男女、
貴賤にかかわらず、広く見られる。ただし、「
源氏」では、発話者は年少の男子に偏り、成人男性の場合は
愛情をよせる女性に対して使われることが多いなど、親密な人間関係を
基底にしていることが特徴という。しかし、「
今昔」などでは主として女性が使う語となっており、さらに時代が下ると、「
日葡辞書」や「ロドリゲス日本大文典」が「
帝王(
天皇)の自称」と記しているように、天皇またはこれに準ずる人の
自称代名詞として用いられている。「まる」という形の方が多くなってくるのもこの頃からである。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報