デジタル大辞泉 「WPW症候群」の意味・読み・例文・類語
ダブリューピーダブリュー‐しょうこうぐん〔‐シヤウコウグン〕【WPW症候群】
[補説]心筋を動かす電気刺激は、通常、房室結節を通って心房から心室へ伝わるが、この正常な伝導路以外にもう一つ副伝導路がある場合、房室結節で電気刺激が心房から心室へ伝わると同時に、副伝導路で心室から心房へ電気刺激が戻る状態になると、2本の伝導路内を電気刺激が旋回することになり、頻拍の原因となる。
1930年に3名の研究者が特徴的な症例(外見は健康な青年がしばしば
WPW症候群の本質は、
デルタ波のある例に
偽性心室頻拍の心室興奮頻度が高くなると
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
不整脈の一種で、ウォルフL. WolffとパーキンソンJ. ParkinsonとホワイトP. D. Whiteの3人によって1930年に報告された症候群をいい、頭文字をとってWPW症候群とよばれる。
心臓の刺激伝導系の一部で左心室、右心室に興奮を伝導する左脚、右脚のうち、いずれか一方の脚が障害されて末梢(まっしょう)に興奮が伝導されなくなる脚(きゃく)ブロックに似た心電図所見を示す一症候群である。その特徴は、心電図でデルタ波を認めること、P‐Q時間の短縮があること、発作性上室性頻拍症や発作性心房細動をおこしやすいことである。房室結節以外に先天的あるいは後天的に心房と心室を結ぶ刺激伝導系の異常短絡路があり、心房興奮がこの短絡路を通って早期に心室筋を興奮させるためにP‐Q時間が短縮し、デルタ波が出現する。
頻拍発作のほかにはなんらの自覚症状を示さず、またそれによって心臓の機能が障害されることはない。したがって、健康者にみられることが多く、偶然心電図検査で発見されることも少なくない。頻拍発作がしばしばおこる場合には治療を要する。発作時にはプロカインアミドの静脈注射、発作予防にはキニジンなどの抗不整脈剤が投与される。最近では外科的にこの短絡路を切断することが試みられ成功している。
[井上通敏・竹内慶治]
ウォルフ=パーキンソン=ホワイト症候群Wolff-Parkinson-White syndromeともいう。L.ウォルフ,J.パーキンソン,P.D.ホワイトによって報告された症候群で,不整脈を起こす疾患の一つ。突然に頻拍の発作が起こり,ときには脈拍は1分間に200~300に達する。動悸を覚え,胸が苦しくなり,胸痛を伴って,血圧も低下する。重症例では意識も低下し,急死することもある。この発作は通常の刺激伝導系に対し,別の副伝導路(ケント束,マハイム繊維など)が存在し,刺激伝導系の興奮がこれらの副伝導路を経て先に伝わったり,正常では心房に回帰しない興奮が再び心房にもどり,旋回することによって生ずると考えられている。しかし,このような副伝導路があっても,無症状のことや間欠的な軽い発作ですむこともある。原因はほとんどが先天性の異常であるが,まれに冠状動脈疾患や心筋炎によるものがある。診断は心電図により,治療は薬物療法によるが,重症例ではペースメーカーの使用副伝導路を切断するカテーテル焼灼術や外科的治療を行うことで完治する。
→不整脈
執筆者:細田 瑳一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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