宿題(読み)しゅくだい

精選版 日本国語大辞典 「宿題」の意味・読み・例文・類語

しゅく‐だい【宿題】

〘名〙
① 前もって課題を与えて考えさせる問題。特に、詩会などで、前もって出しておく題。
※山内尚助宛大田南畝書簡‐享和元年(1801)四月一九日「御詩会いかが。宿題御定め候はば一月一次づつにて豚児へ御談じ御極め可被成候」
② 学校で、予習・復習をかねて、家庭で行なうように生徒に課する学習作業。
※放浪時代(1928)〈龍胆寺雄〉一「魔子はこぼして居た和文英訳の宿題(シュクダイ)をどうやら片付けたらしかった」
③ 未決定、未解決のまま後日に残されている問題。
社会百面相(1902)〈内田魯庵鉄道国有「么麽(どう)です、次会に継続して宿題としたら」

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デジタル大辞泉 「宿題」の意味・読み・例文・類語

しゅく‐だい【宿題】

家庭でやってくるべきものとして教師が児童・生徒に課する、学習上の課題。「夏休み宿題
解決が後日に持ち越された課題。「その件は今後の宿題にする」
[類語]独習自習独学自修自学自習

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改訂新版 世界大百科事典 「宿題」の意味・わかりやすい解説

宿題 (しゅくだい)

学校の正規の授業時間以外に,主として家庭で行うように,教師によって生徒に課される学習および作業。宿題はもともと即題,席題の反対の概念で,前もって与えておく問題,解決されずに残された課題という意味である。俳諧,連歌などの用例が,学校教育に転用されたのであろう。当初,宿題という用語は一般的でなく,復習,予習の指示として始まった。1900年前後に,各地の師範学校付属小学校で〈復習心得〉〈復習要項〉が生徒に配布され,10年代には各教科ごとの夏休み宿題帳が作られるようになった。教育関係者,父母の宿題への関心が高まったのは,20世紀初頭以降である。そのころ近代公教育制度下で就学率が上昇し,公教育の内容が量から質へと問いなおされ始めた。学校と家庭の協調が重視され,教授内容の定着のために家庭学習が強調された。宿題に対する考え方には,それぞれの国や社会の教育観,児童観などが反映している。画一的な教授中心の学校では,宿題の内容も画一化され,多様な子どもの学習能力に合致しないことになる。他方,子どもの創造性,活動性を重視する学校では,宿題を子どもに合わせて多様化させたり,単なる予習,復習ではない自主的研究を重視する。

 宿題の種類には,(1)学校での授業で獲得した知識,技術を発展・習熟させるために教科書の練習問題や市販テスト,ドリルを解かせるもの,(2)新しい学習課題の予習として予備的知識・技術を獲得させるもの,(3)特定の子どもに対して,不足している知識,技術の補充のために特別な家庭学習,作業を課するもの,などがある。それぞれの場合に,宿題のねらいや内容が異なるので,父母の指導や関与のしかたも注意を要する。宿題への関心が高まるにつれて,それをめぐる賛否両論が現れた。賛成論は,家庭学習の習慣づけや生徒の自主的・独立的学習を促すだけでなく,学校と家庭との教育内容を通しての相互理解,協力を強調し,反対論は,子どもの放課後の自由時間を奪うだけでなく,学校ほど設備が整っていない家庭での学習は不十分で,教師の指導性も弱くなる,という。いずれにしても宿題は学校から一方的に課されるものと考えるのではなく,PTAなどの場を通して,宿題の背後にある教育観,児童観を吟味すべきである。このことは,学校,教師と父母の教育責任のあり方を明らかにする。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宿題」の意味・わかりやすい解説

宿題
しゅくだい

学校の正規の授業時間以外に主として家庭で学習を行わせるために、教師が子供に課す問題のことをいう。家庭でそれを果たすことから、家庭学習や家庭作業といわれることもあるが、この用語は子供が自らの興味に基づいて自発的に行う学習を含んでいるので、宿題は家庭学習や家庭作業の一部ということになる。

 親は、子供が家庭で勉強しないで遊んでしまうから、宿題を出してほしいと、教師に要請することが多い。また子供が学校から帰ると、親は宿題が出たかどうかを尋ねて、ただちに宿題をやりなさいと指示したり、あるいはそれを手伝ったりする。このように家庭では、宿題が子供の暇な時間の活用、子供のしつけ、子供とのコミュニケーション、親の教育的責務正当化などのいろいろな機能を果たしているのが実情である。

 宿題は、もともと授業での学習を補充する働きをもっていた。授業の目標達成の面で学習の不十分なところを家庭で補充させようとして、教師が宿題を出すことになったのである。しだいにこれと競い合うようにして、宿題に教育的機能が積極的に込められるようになった。それは、宿題が知識や技能を獲得する働きをもつとともに、自主的に学ぶ方法や態度を育てる機会となることを意味する。

 具体的には、次のような教育的意義づけが指摘できる。(1)授業で盛り上がってきた学習意欲をさらに高め満たすこと、(2)家庭や地域社会の場でないとできないような観察・見学・調査をすること、(3)授業で新たに獲得した知識や技能を実地に応用して、その意義を感得すること、(4)新たに理解した原理や方法を反復ないし練習して、十分に身につけて定着すること、(5)次の授業の準備として下調べをし、いわゆる予習をすること、(6)学習上の特別な欠陥やつまずきの矯正を補強すること、などである。

[長谷川榮]

配慮

授業が本来果たすべきことをおろそかにして、それを宿題に転嫁することになると、宿題が教育的に堕落する危険に陥る。授業における内容の盛りすぎ、時間不足、指導の不十分さ、学習進度の遅れなどを理由にして、安易に宿題を出すと、子供は宿題に苦しめられて、教育的成果が期待できないであろう。少なくとも宿題は準備して計画的に出すこと、子供の学習実態に即すること、独力で果たすようにその方法を指導しておくこと、後の点検を十分すること、などがたいせつである。

[長谷川榮]

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世界大百科事典(旧版)内の宿題の言及

【鉛筆】より

…鉛筆は,第1に,ほぼ一定の太さで文字・数字を書くことができ,毛筆のような技能を要しないので,低年齢の子どもの筆記具として最適であること,第2に,消しゴムで簡単に消して書き直すことができ,試行錯誤の連続にほかならない学習にとっては最適の筆記具であったこと,第3に,永い伝統をもつ毛筆にはその使用者の表現内容を拘束する性格があり,紋切調の〈一瓢を携へて墨堤に上る〉式の文章が作られやすかったが,歴史の浅い鉛筆はそれがなく,子どもたちの筆記表現に大幅な自由を与えたことなど,学習用具としてのすぐれた性格をもっていた。こうして,〈書く〉ことによる学習が深まるとともに,〈記録〉が容易となって宿題が多くなった。さらに,子どもに自由な表現を許すことと,その表現を客体化させることによって,〈書く〉ことにより子どもの認識を進化させる指導が可能となった。…

※「宿題」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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