小売(読み)コウリ

デジタル大辞泉 「小売」の意味・読み・例文・類語

こ‐うり【小売(り)】

[名](スル)消費者に対して、直接商品を販売すること。「小売り価格」「小売り店」
[類語]卸売り仲買

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精選版 日本国語大辞典 「小売」の意味・読み・例文・類語

こ‐うり【小売】

  1. 〘 名詞 〙 卸売商などから仕入れた品物を、一般消費者に分け売りすること。また、それを業とする人。「卸(おろし)」に対していう。
    1. [初出の実例]「只今の者は米の小売望人無之付て」(出典:梅津政景日記‐慶長一七年(1612)三月一四日)
    2. 「何さ店で小売(コウリ)にさせりゃア百円ぐらいはもうかる品物だけれど」(出典安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三)

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改訂新版 世界大百科事典 「小売」の意味・わかりやすい解説

小売 (こうり)

各地に広く分散している無数の生産者が製造する商品を,これまた広く各地に散在している不特定多数の消費者に,その種類・品質・数量など需要に応じて直接販売する機能をいう。現代の生産-消費システムにおいては生産と消費の2極間には多くの不一致がみられる。たとえば,(1)生産する者と消費する者とがまったく顔をあわせたこともないという〈人格的不一致〉,(2)農水産物のように生産の時期が限定されているにもかかわらず消費者にとっては通年的な消費が必要とされるという〈時間的不一致〉,(3)生産が特定地域に集中して行われるにもかかわらず消費は全国各地で分散して行われるといった〈場所的不一致〉,(4)生産者は消費者について,また消費者は生産者についての情報を相互に欠いているという〈情報の不一致〉,(5)大量生産を行う生産者と,反対に小量しか必要とせずまたその要求する品質においても多様な消費者との間にみられる〈品質・数量の不一致〉など,生産者と消費者との間には今日多くの乖離(かいり)状況がみられる。このような乖離を埋めるのが現代の流通システムであるが,その末端にあって生産者が製造した商品を最終消費者に直接販売する機能が小売である。したがって,ひとしく流通機能を担うものではあるが,商社を含めた問屋などが行う卸売機能とか,また倉庫業者や陸・海・空の運輸業者が担う物的流通機能とは,明確に区別されるものである。

 生産者が製造した商品を最終的に消費者に販売するのが小売であるが,現実には製造される商品の種類は多数であり,またその品質や内容も多岐にわたるため,この小売機能を十分に果たすためには種々の異なる形態の小売形態が必要となる。たとえば最寄店は食料品,医薬品,日用雑貨のような日常生活の必需品の小売機能を担当し,買回り店は装飾品,家具,家電製品のように消費者がその品質や価格をそのたびごとに比較して購入する商品の小売機能を,専門店は貴金属,宝石,特殊な趣味品あるいは一部のスポーツ用品などのように品質の限定された高級品の小売機能を担当している。また店舗の営業形態によっても担当される小売機能は分化されており,百貨店は主として中級品から高級品にいたる幅の広い価格の商品をあらゆる種類にわたって販売するという小売機能を,大型スーパーは中級品を主体とした標準化商品を,ディスカウント・ストアは大量生産された低価格商品の量販という機能を,さらにスーパーマーケットは食料品を主体とした小売機能を,チェーン・ストアは商品部門を限定した各種商品の小売機能をというように,各地域,人々の所得,人口差に合わせた多様な店舗が展開されて,それぞれの小売機能を果たしている。

 このような小売機能を補助しているのが,小売業者を除く広義の商的・物的流通機関が担当する流通機能である。商的流通機関としては,商社を含む問屋など卸売業者,メーカー系販売会社,商事会社,商品取引所,仲買人ブローカー,代理商,農協,漁協,卸売市場,その他農林水産省系の事業団といった商業機関が存在し,生産者の製造した商品を小売に結びつけるうえでの流通機能を担当している。物的な流通機関としては,倉庫業者,陸運会社,海運会社あるいは空輸会社が存在して商品の地域的・時間的移動という機能を果たしている。またこのような流通機能を補助・助成するものとしては,広告代理店,テレビ,ラジオ,新聞など各種マスコミ,市場調査機関,保険会社,金融会社などがあり,全体としての流通-小売機能の円滑な運営を助けている。したがって消費者側からみると,購買する商品は直接小売店から購入するのであるが,その背後には多数の補助・助成機関のサービスが存在し,その結果購入する商品の価格には生産価格に加えてこのような流通経費が加算されることになる。
小売店
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百科事典マイペディア 「小売」の意味・わかりやすい解説

小売【こうり】

最終消費者に商品を直接販売する機能。その性質上,小規模で分散した生業的経営による場合が多いが,経済の発展に伴い百貨店など大規模小売商が現れ,近年は大量流通体制の進行に応じスーパーマーケットなどが進出し流通革命が起こった。小売のおもな形態は,単一小売店,万屋(よろずや),専門店,百貨店,公設市場,チェーン・ストア,通信販売,スーパーマーケット,コンビニエンス・ストア,消費生活協同組合など。
→関連項目卸売

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「小売」の解説

小売
こうり

商人どうしの取引である卸売に対して消費者への直接小量販売をいう。中世の商品取引の発達により,中世末の商人には卸売商と小売商の分化がみられた。江戸時代には問屋―仲買―小売の流通機構が成立し,原則として問屋・仲買は卸商で,小売商が最終消費者に小量販売する体制が整った。江戸時代の小売商には,越後屋・大丸屋のような大規模な店舗商業や近江商人・富山売薬商人のように全国を回る行商人もいた。近代の工業化による大量生産は大規模小売業を必要とし,明治期には勧工場,ついで百貨店を登場させた。大正期以後は公設市場が設けられ,チェーン店・通信販売も出現し,消費組合・購買組合も発達する。1960年頃にはスーパーマーケットが,さらに70年代以降はコンビニエンス・ストアが台頭した。

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栄養・生化学辞典 「小売」の解説

小売

 消費者を直接対象として販売する販売の方式.小売業者(もしくは他の卸売り業者)を対象にする卸売りに対していう.

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世界大百科事典(旧版)内の小売の言及

【卸売】より

…卸売業者や小売業者など商業者,あるいは各種の業務用購入者に対する商品ないしはサービスの販売をいう。卸売という概念は,もともと小売に対応するものであり,小売が個人的に消費する最終消費者に対する販売であるのに対して,卸売は,最終消費者に対する販売以外のすべての販売を包括する概念であるといえる。…

※「小売」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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