病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 「DPP‐4阻害剤」の解説
DPP‐4阻害剤
《アナグリプチン製剤》
スイニー(興和、興和創薬、三和化学研究所)
《アログリプチン安息香酸塩製剤》
ネシーナ(武田薬品工業)
《オマリグリプチン製剤》
マリゼブ(MSD)
《サキサグリプチン水和物製剤》
オングリザ(協和キリン)
《シタグリプチンリン酸塩水和物製剤》
グラクティブ(小野薬品工業)
ジャヌビア(MSD)
《テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物製剤》
テネリア(第一三共、田辺三菱製薬)
《トレラグリプチンコハク酸塩製剤》
ザファテック(武田薬品工業)
《ビルダグリプチン製剤》
エクア(ノバルティスファーマ)
《リナグリプチン製剤》
トラゼンタ(日本ベーリンガーインゲルハイム、日本イーライリリー)
DPP‐4(ジペプチジルペプシダーゼ4)は消化管ホルモンのインクレチンの分解酵素です。食事の経口摂取刺激により腸管から血中に分泌されるグルカゴン様ペプチド‐1(GLP‐1)を不活化するDPP‐4の活性を阻害することにより、GLP‐1の血中濃度を上昇させて、膵臓からのインスリン分泌を促し、食後血糖を改善します。つまり、低血糖症を招くことなく血糖降下作用を示す薬で、2型糖尿病に用います。食後のインスリン分泌を促進して、空腹時および食後高血糖を改善します。また、単独使用では、低血糖を発生させるおそれが少ない薬です。
DPP‐4阻害剤は2型糖尿病の治療に用いますが、食事療法・運動療法を行ったうえで、十分な効果が得られない場合に用います。
もっとも注意しなければならないのは低血糖(脱力感、冷や汗、ふるえ、空腹感、めまい、
このような症状が現れたときは、必ず医師の診察を受けてください。
そのほかに、アナグリプチン製剤では、腸閉塞、急性
このような症状が現れたら、使用を中止して、すぐ医師に報告してください。
また薬によって、浮動性めまい、感覚鈍麻、糖尿病性網膜症の悪化、上室性期外収縮、鼻咽頭炎、便秘、臨床検査値異常(ALT・AST・γ‐GTPなどの増加)、関節痛、むくみ、体重増加などが現れることがあります。このような症状が現れたら、医師に相談してください。
①シタグリプチンリン酸塩水和物製剤は、錠剤で1日1回の服用です。中等度の腎機能障害のある人、透析中の末期腎不全の人、他の糖尿病用薬(とくに、インスリン製剤、スルホニル尿素系血糖降下剤または速効型インスリン分泌促進薬)を使用中の人、腹部手術・腸閉塞の既往歴のある人は、使用できないことがあります。あらかじめ医師に相談してください。
ビルダグリプチン製剤は、錠剤で1日1回の服用です。重度の肝機能障害のある人は使用できません。中等度の腎機能障害のある人、透析中の末期腎不全のある人、心不全(NYHA分類Ⅲ~Ⅳ)のある人、スルホニル尿素系血糖降下剤またはインスリン製剤を使用中の人、腹部手術・腸閉塞の既往歴のある人は、使用できないことがあります。あらかじめ医師に相談してください。
アログリプチン安息香酸塩製剤は、錠剤で1日1回の服用です。中等度の腎機能障害のある人、透析中の末期腎不全のある人、心不全(NYHA分類Ⅲ~Ⅳ)のある人、スルホニル尿素系血糖降下剤またはインスリン製剤を使用中の人、腹部手術・腸閉塞の既往歴のある人は、使用できないことがあります。あらかじめ医師に相談してください。
リナグリプチン製剤は、錠剤で1日1回の服用です。スルホニル尿素系血糖降下剤またはインスリン製剤を使用中の人、腹部手術・腸閉塞の既往歴のある人は、医師に相談してください。
テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物製剤は、錠剤で1日1回の服用です。重度の腎機能障害のある人、透析中の末期腎不全のある人、心不全(NYHA分類Ⅲ~Ⅳ)のある人、スルホニル尿素系血糖降下剤またはインスリン製剤を使用中の人、腹部手術・腸閉塞の既往歴のある人、QT延長を起こしやすい人は使用できないことがあります。あらかじめ医師に相談してください。
アナグリプチン製剤は、錠剤で1日2回、朝・夕に服用します。中等度の腎機能障害のある人、透析中の末期腎不全の人、スルホニル尿素系血糖降下剤またはインスリン製剤を使用中の人、腹部手術・腸閉塞の既往歴のある人は、医師に相談してください。
サキサグリプチン水和物製剤は、錠剤で1日1回服用します。中等度の腎機能障害のある人、透析中の末期腎不全の人、スルホニル尿素系血糖降下剤またはインスリン製剤を使用中の人、心不全(NYHA分類Ⅲ~Ⅳ)のある人、腹部手術・腸閉塞の既往歴のある人は、医師に相談してください。
トレラグリプチンコハク酸塩製剤は、錠剤で1週間に1回服用します。中等度の腎機能障害のある人、透析中の末期腎不全の人、高度の腎機能障害患者または透析中の末期腎不全のある人は使用できません。スルホニル尿素系血糖降下剤またはインスリン製剤を使用中の人は、医師に相談してください。
オマリグリプチン製剤は、錠剤で1週間に1回服用します。重度の腎機能障害のある人、透析中の末期腎不全のある人、他の糖尿病用薬(とくに、インスリン製剤、スルホニル尿素系血糖降下剤または速効型インスリン分泌促進薬)を使用中の人は、医師に相談してください。
②過去にこれらの薬で過敏症をおこしたことのある人、糖尿病性
脳下垂体機能不全または副腎機能不全の人、栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足または衰弱状態などの人、激しい運動をする人、大量飲酒者などは、使用に際して医師に相談してください。
③妊婦・妊娠している可能性のある人、母乳で授乳している人は、あらかじめ医師に相談してください。
④低血糖をおこすことがあるので、自動車運転や高所作業にたずさわる人は医師に相談してください。
⑤高齢者は、血糖降下剤が効きすぎて低血糖をおこしがちです。指示された1日の服用量・服用回数をきちんと守り、家族もこの薬の副作用をよく知って、高齢者に正しく服用させるように協力することが大切です。
⑥この薬を服用中に他の薬を使用する必要が生じた場合は必ず医師に相談してください。
服用する薬によってちがいはありますが、サリチル酸系解熱鎮痛剤、βブロッカー製剤、蛋白同化ステロイド剤、スルホニル尿素系血糖降下剤、インスリン製剤、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤などと併用すると、血糖降下剤の効果が過剰になって、低血糖がおこりやすくなることがあります。
また、副腎皮質ホルモン剤、甲状腺ホルモン剤、卵胞ホルモン剤、利尿剤、抗結核剤のイソニアジド系製剤、フェノチアジン系の抗精神病剤、ニコチン酸系の薬などと併用すると、血糖降下剤の作用が弱まることがあります。また、テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物製剤では、不整脈剤との併用でQT延長などの副作用をおこすことがあります。
出典 病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版について 情報