ES細胞(読み)イーエスさいぼう

百科事典マイペディア「ES細胞」の解説

ES細胞【イーエスさいぼう】

動物の血液,神経,肝臓,膵臓といった全身の細胞を作り出すことができる細胞のこと。Embryonic Stem cell(胚性幹細胞)の略。卵子が受精して分裂を始めたばかりの初期の胚から取り出した細胞を培養して得られる。動物のすべての組織に分化する全能性を持っており,無限に増殖させられることから,再生医療に応用できると注目されている。マウスのES細胞を使った研究では,心筋細胞やグリア細胞,血液幹細胞などに分化誘導させられるようになっている。ヒトES細胞を作るには受精卵ないし発生が進んだ胚盤胞までの初期胚が必要となることから,先端医療研究の先進国で〈生命倫理〉をめぐる論争が起こった。ES細胞は,パーキンソン病などの難病治療に道を開くと期待されているが,アメリカでは2001年キリスト教右派に支持されたブッシュ大統領は新たにつくられるES細胞を使う研究に連邦政府予算を助成しない規制を導入。医学界や難病患者団体などが国際研究競争で後れをとるとして規制緩和の実現を議会に働きかけ議会はES細胞研究への連邦政府助成拡大を認める法案を2006年と2007年の2度可決したが,2度ともブッシュ大統領が拒否権を発動し成立を阻まれた。2009年,オバマ大統領はヒトの胚性幹細胞(ES細胞)研究への政府助成金を全面解禁する大統領令に署名し,ブッシュの政策を転換した。2010年バイオ企業ジェロン社(本社・カリフォルニア州)はES細胞を使った世界で初めての臨床試験を,脊髄損傷の患者に対してアメリカ国内で始めたと発表した。日本では文部科学省が2001年9月に策定した〈ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針〉で規制され,細胞レベルでの基礎研究に限定された。国内では,ヒトES細胞からの個体生成,ヒトES細胞からの精子や卵子といった生殖細胞の作成は禁止されていたが,難病治療研究を目的に例外的にヒトES細胞から卵子を作ることを認める方向で検討が始まった。2010年11月に患者への臨床応用が認められ,使用解禁に向けた指針の改訂を始めることが2012年3月に決まった。2014年5月,国の総合科学技術会議はES細胞について人の治療に使う研究を認める方針をまとめた。文科省・厚労省もこの結論に沿いこれまでの指針を見直す方針である。ただし総合科学技術会議の議論は新たに作成されるES細胞が対象で,厚労省は過去作成された細胞は治療に使わせない方針を示している。国内では現在,国立成育医療研究センターと京都大学がES細胞の作成を認められている。ドイツでは作成自体が禁止されている。
→関連項目iPS細胞STAP細胞

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デジタル大辞泉「ES細胞」の解説

イーエス‐さいぼう〔‐サイバウ〕【ES細胞】

embryonic stem cell万能細胞の一種。さまざまな異なる細胞に分化し、増殖する能力を持つ、発生初期の由来の細胞。受精卵の一段階である胚盤胞から取り出した内部細胞塊から樹立される。再生医療に役立つとして研究されている。ES細胞の採取は受精卵を殺すことになるので倫理面の問題がある。胚性幹細胞。→iPS細胞

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化学辞典 第2版「ES細胞」の解説

ES細胞
イーエスサイボウ
embryonic stem cell

胚性幹細胞ともいう.受精卵の発生初期(胚盤胞期)段階から取り出した細胞で,将来,体のどの部分にもなりえる能力を備えた細胞.未分化状態のまま実験室で培養できるので,トランスジェニック動物の作成や再生医療の分野で利用されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

知恵蔵「ES細胞」の解説

ES細胞

幹細胞」のページをご覧ください。

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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