RSウイルス(読み)あーるえすういるす

妊娠・子育て用語辞典の解説

あーるえすういるす【RSウイルス】

赤ちゃんの気管支炎や細気管支炎の原因となるウイルスの一つです。お母さんからもらった抗体免疫)がきかず、生後1か月未満の赤ちゃんでも感染。せきやゼイゼイした呼吸など、ようすがおかしいと思ったらすぐ小児科を受診しましょう。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(愛育病院院長)、子育て編:多田裕(東邦大学医学部名誉教授) 妊娠・子育て用語辞典について 情報

知恵蔵の解説

RSウイルス

ヒトが感染すると、発熱や、咳(せき)、鼻汁などの呼吸器症状を起こすウイルス。55℃以上の熱や、界面活性剤、エーテルなどで不活化され、せっけんや消毒液で感染力を失う。
RSウイルス感染症は、日本では毎年冬に流行がみられる。1歳までに約7割の乳児が初感染し、3歳までには全ての子どもが抗体を持つ。ただし、過去に感染して抗体を持っていても生涯にわたって繰り返し感染する。
潜伏期間は2~8日あり、数日間にわたって風邪に似た症状が続く。この後、下気道(気管、気管支、肺)に炎症が進展すると、重症化しやすく、治癒まで時間がかかる。母体から移行する抗体では感染を防げないため、生後0カ月から5カ月の間にも感染がみられ、感染報告の約20%を占めている。また、1歳以下の初感染例のうち3分の1が下気道疾患を起こすという報告もある。乳幼児の細気管支炎や肺炎の主な原因とされており、重症化のリスク因子として、心肺の基礎疾患、免疫不全、低出生体重、低年齢があげられる。合併症には、中耳炎、無呼吸、ADH分泌異常症候群、急性脳症がある。
感染ルートは、飛沫(ひまつ)または接触によるので、マスクを着けて咳エチケットに努めることや、手洗いを十分にすることが有効である。しかし、感染力が強く、再感染で軽症の患者がRSウイルスと気づかないまま日常生活の場にいることから、家族や保育園・幼稚園での流行を抑えるのは難しい。
診断は、鼻汁などからウイルスを分離するか、抗原を検出することにより確定する。治療は酸素投与、輸液、呼吸管理による支持療法を基本とし、気管拡張剤が用いられることもある。予防ワクチンはまだ開発されていないが、遺伝子組み換え技術によって作られたパリビズマブという製剤を1カ月ごとに筋肉注射し、予防の効果を上げることはできる。日本小児科学会では、パリビズマブを用いて良い症例として、早産児と慢性肺疾患を持つ小児、先天性心疾患を持つ2歳以下の乳幼児、重度の免疫不全を呈する小児、RSウイルス感染症の院内感染で感染拡大を抑えられない場合をあげている。
RSウイルス感染症は、感染症法の5類感染症定点把握疾患に位置づけられ、全国約3千の小児科定点医療機関から毎週報告がされている。夏は報告数が少ないのが通例であったが、2011年は6月下旬から増加傾向がみられ、定点把握が始まって以来の高水準が続いている。

(石川れい子  ライター / 2011年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

デジタル大辞泉の解説

アールエス‐ウイルス【RSウイルス】

respiratory syncytial virus》かぜの原因ウイルスの一。冬期に流行し、2歳までにほとんどの子供が初感染する。感染力が高く、免疫ができにくいため繰り返し感染するが、感染回数が多くなるほど症状は軽くなる。ワクチンや特効薬はなく、対症療法が中心。
[補説]新生児乳幼児が感染すると細気管支炎肺炎中耳炎などを引き起こし、重症化することもある。乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因の一つとも考えられている。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

内科学 第10版の解説

RSウイルス(ー 鎖 RNAウイルスによる感染症)

(4)RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)
概念
 RSウイルス(RSV)はパラミクソウイルス科ニューモウイルス属に属するウイルスで,血球凝集やノイラミニダーゼ活性を示さない.飛沫感染もするが,主として接触感染で感染する.RSVは抗原性からA型とB型の2種類の亜型がある.一生に繰り返し上気道および下気道に感染する.
疫学
(表4-4-8) ヒトが唯一の感染源である.RSVは環境の表面では数時間,ヒトの手では30分間以上生存しているので,RSV感染者が入院しているときは,病院職員による院内感染に注意する.わが国を含む温帯地方では,RSVは晩秋から初春にかけて毎年流行する.乳児の約半数が1歳までに,ほぼ100%が2歳までに感染する.ウイルスの排泄期間は3~8日間であるが,乳幼児や免疫抑制者では3~4週間も排泄することがある.
病態生理
 潜伏期間は2~8日間,通常4~6日間である.母体からの移行抗体はRSV感染を十分に予防できないが,高い血中中和抗体を有していると重症化予防効果が認められている.RSVはまず鼻粘膜に感染して上気道炎症状が出現する.その後感染性分泌物を下気道に吸引し,細気管支炎の症状が出現する.初感染では20~30%の児が下気道炎を発症する.RSV細気管支炎に罹患すると,その後反復性喘鳴や反応性気道疾患,肺機能の異常などの合併症を発症することがある.RSV感染が直接の原因ではなく,アレルギー素因をもった乳幼児がRSVに感染したために,このような合併症を発症しやすくなると考えられている.
臨床症状
 RSVはすべての年齢の人に急性上気道炎を引き起こす.上気道炎のときは,水様性鼻汁,咳,ときに発熱を認める.乳幼児では下気道炎を起こしやすく,細気管支炎などの下気道炎を発症すると,呼気性喘鳴,陥没呼吸,多呼吸などの症状が出現する.生後数週の乳児や未熟児では軽い呼吸器症状しか示さず,嗜眠,易刺激性,哺乳力低下,ときに無呼吸発作を認める.血中酸素飽和度は低下し,胸部X線所見では肺の過膨張を認める.慢性肺疾患児,未熟児,血行動態的に問題がある先天性心疾患(特に肺高血圧をきたすタイプ)児,免疫不全症児は重症化し,ときに死亡する.一生を通じて繰り返し感染するが,高齢者,免疫不全者,心肺疾患を有する者は年齢にかかわらず重症化する.
検査成績・診断
 鼻咽頭分泌液を用いて迅速診断検査試薬によりRSV抗原を検出する.鼻咽頭分泌液からのウイルス分離やPCR検査も診断に有用である.検査が必要なときは専門機関に依頼する.補体結合(CF)法または中和(NT)法による血中抗体の陽転化または有意上昇でも診断は可能だが,抗体はあまり高く上昇しないので,乳児では診断の感度が低率である.
合併症
 乳幼児では中耳炎を合併するリスクが高い.ウイルスの直接侵襲と肺炎球菌などの二次感染で発症する.
治療
 臨床上リバビリンの効果は認められていない.気管支炎,細気管支炎には対症的に治療する.ステロイド全身投与の有効性および気管支拡張薬吸入療法の有効性に関しては一定の見解がない.細菌性中耳炎を合併した場合は,抗菌剤を投与する.高張食塩水の吸入が喀痰排泄に有効である.
予防
 RSVの中和に,エンベロープ上に存在する構造蛋白であるF(fusion:感染細胞の融合に関与)蛋白とG(large glycoprotein:細胞への吸着に関与)蛋白が関与している.RSV感染予防,重症化予防を目的に,F蛋白に対するヒト化マウスモノクローナル抗体(パリビズマブ)が用いられている.RSVが感染すると入院するリスクが高い未熟児の慢性肺疾患児,早産(在胎35週以下)児,血行動態に異常のある先天性心疾患児が適応とされている.パリビズマブ15 mg/kgをRSVが流行する前の月から流行が終息するまでの間,1カ月に1回筋肉注射する.わが国では10月から翌年の3月まで6回使用される.パリビズマブ使用により,RSVによる入院が50%程度抑制されている.[庵原俊昭]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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