脳を収容している頭蓋腔(くう)を囲んでいる骨で、一般には「ずがいこつ」ともよぶ。頭蓋骨は10種からなり、これによって脳頭蓋(神経頭蓋)が構成される。なお、顔面の骨格を形づくっているのが5種からなる顔面骨で、これによって顔面頭蓋(内臓頭蓋)がつくられている。この両頭蓋をあわせたものが頭蓋である。
頭蓋骨の大部分の骨は、結合組織(縫合結合)や軟骨組織(軟骨結合)によって結合されている。脳頭蓋は長楕円(ちょうだえん)体で、内部の頭蓋腔は、天井をつくる頭蓋冠と底にあたる頭蓋底の内面で囲まれている。頭蓋冠の内面には、大脳半球表面の脳回、脳溝および脳硬膜、動・静脈や硬膜静脈洞に対応する多数の凹凸がみられる。頭蓋底は、脳をのせている内面の内頭蓋底と外面の外頭蓋底に分けられる。内頭蓋底には、前・中・後頭蓋窩(か)とよぶ三つの大きなくぼみがある。前頭蓋窩は浅くて、眼窩の天井にあたる前頭骨の眼窩部が大部分を占めて高く隆起し、これに篩骨(しこつ)と蝶形骨(ちょうけいこつ)が加わって構成されている。中頭蓋窩は全体としてチョウがはねを広げた形に似ており、蝶形骨がその中心となり、側頭骨がその両側の一部を占める。とくに中頭蓋窩には多くの孔があり、脳神経や血管が通過している。後頭蓋窩は中央部の後頭骨と両側の側頭骨の一部が加わる。外頭蓋底には、内頭蓋底の凹凸に対応して、やはり著しい凹凸がみられる。外頭蓋底の前方には上顎骨(じょうがくこつ)の歯槽列があり、後方中央部には大後頭孔がある。この孔から延髄が脊髄(せきずい)に移行する。
頭蓋底の骨壁は、部位によって厚さが著しく異なるため、外部からの衝撃によって骨折をおこしやすい。とくに、中頭蓋窩には脳神経や血管の通過する孔が多いことから、骨折はこれらの部位を連ねる形で生じやすくなる。また中頭蓋窩には、自律神経系の最高中枢とされる間脳の視床下部が収まっているため、この部位での傷害はきわめて危険となる。
[嶋井和世]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…【藤田 恒太郎】【田隅 本生】
【ヒトの骨格】
ヒトの骨格は哺乳類としての共通の性格をもつことはもちろんであるが,また哺乳類の中で特殊化したヒトの体制の特徴を示している(図8)。そのおもな点をあげると,(1)脳の発達にともなって,ひじょうに大きい頭蓋骨をもつ。顔面頭蓋といって顔の部分をつくる部分にくらべて,脳頭蓋(神経頭蓋)という脳をいれる部分が著しく大きい。…
…これはフランス,イギリス,ドイツに例が多い。一方,イタリアでは,仮面,ベール,逆さにした松明(たいまつ),蛇,頭蓋骨などで〈死〉を象徴させることが多く,死体や骸骨の表現は少ない。16世紀末から17世紀にかけて,イタリア,フランス,スペイン,オランダで頭蓋骨を花や果物と取り合わせて描く静物画の形式をとった〈ウァニタス〉の図像が盛んに描かれたが,この中では頭蓋骨はつねに〈死〉を表現し,また枯れた花もしくは腐った果物,カエル,蛇など地に住むものなども〈死〉のメタファーと解釈される。…
…広義にはこの構造と下あごの骨格との複合体を指し,さらに最も広義にはこれらのほか,舌骨やえらの骨格までも含めた全体的骨格を意味する。頭骨はまた頭蓋(ずがい)(cranium,解剖学では〈とうがい〉とよむ)ともいい,俗に頭蓋骨ともいうが,頭蓋は狭義の頭骨で,ふつうは下顎(かがく)骨格を含まない。比較解剖学的には本来最も広い意味に解すべきだが,ここでは広義にとり,頭骨は頭と下顎骨格とからなるものとしておく。…
…野辺にさらされた人の頭蓋骨のことで,〈されこうべ〉〈しゃれこうべ〉(曝頭,曝首の字をあてる),〈野晒(のざらし)〉などともいう。先史時代の遺跡から発見される人類の骨のうち,頭蓋骨とその一部の数は他の骨の数よりも多いことから,頭部ないしどくろが早くから人類の文化に特殊な役割をもっていたことが推論されている。…
…広義にはこの構造と下あごの骨格との複合体を指し,さらに最も広義にはこれらのほか,舌骨やえらの骨格までも含めた全体的骨格を意味する。頭骨はまた頭蓋(ずがい)(cranium,解剖学では〈とうがい〉とよむ)ともいい,俗に頭蓋骨ともいうが,頭蓋は狭義の頭骨で,ふつうは下顎(かがく)骨格を含まない。比較解剖学的には本来最も広い意味に解すべきだが,ここでは広義にとり,頭骨は頭と下顎骨格とからなるものとしておく。…
※「頭蓋骨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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