金融機関が破綻(はたん)した場合、あるいは破綻の兆候がある場合などに、預金取付けなどの金融危機を未然に防ぎ、預金者を保護することを目的にした総合的な法律。昭和46年法律第34号。欧米諸国にならって日本でも導入され、当初は、預金を扱う銀行や信用金庫、信用組合から集めた預金保険料をもとに、預金者の預貯金を1000万円まで保護するペイオフの実施が主たる目的であった。しかしバブル崩壊後の1995年(平成7)以降、金融機関が相次いで破綻したのを受け、数度にわたる改正が行われ、金融危機を回避し金融システムを維持していくためのさまざまな金融安定化制度の根拠法となっている。
預貯金の元本1000万円とその利息までの払戻しを保証するペイオフについては、金融システム不安が広がった1996年に預金保険法を改正して実施を凍結した。その後、金融システムが落ち着きを取り戻したとして、ふたたび同法を改正し、2005年から完全解禁した。ただ金利がつかず、おもに決済に使われる「決済用預金」については、全額保護することをうたっている。
一方、金融システムの維持では、金融再生法が定めていた破綻処理策を引き継ぎ、「通常の金融機関破綻」と、金融機関がドミノ倒しのように次々に破綻する「金融危機」の2通りを想定して制度を整備。通常時については、破綻機関を健全な金融機関に引き継ぐ「資産・負債継承方式」(日本版P&A)制度が同法に基づいて実施されるほか、継承先探しにあたる金融整理管財人制度、継承先探しが難航した場合のブリッジバンク制度も同法に明記されている。
大手銀行の株価暴落などの金融危機に際しては、危機を未然に防ぐため、首相が同法に基づき「金融危機対応会議」を召集する。金融機関の一時国有化(特別危機管理銀行、金融再生法における特別公的管理)のほか、約15兆円の「危機対応勘定」を使って公的資金の投入などを実施する。金融危機対応会議は2003年5月、りそなグループの資本不足が明らかになった際に初めて開かれ、約2兆円の公的資金注入を実施した。同年11月には、地方銀行の足利(あしかが)銀行を中核とするあしぎんフィナンシャルグループの一時国有化も決定した。
[矢野 武]
『佐々木宗啓編著、預金保険法研究会著『逐条解説預金保険法の運用』(2003・金融財政事情研究会)』▽『預金保険機構法令研究会監修『預金保険関係法令集――預金保険法・施行令・施行規則の三段対照表』4訂版(2006・ぎょうせい)』
…外国においては,アメリカで連邦預金保険公社が1933年に,西ドイツ(当時)で預金者保護基金が76年に,イギリスで預金者保護委員会が82年に,それぞれ設立されている。 日本の預金保険制度は,1971年4月に公布・施行された預金保険法によって創設された。預金者等の保護を図るため,金融機関が預金等の払戻しを停止した場合に預金者等に対して保険金等の支払と預金等債権の買取りを行うほか,破綻金融機関に係る合併等に対して適切な資金援助等を行い,もって信用秩序の維持に資することを目的とする制度である。…
※「預金保険法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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