スープ(英語表記)soup

翻訳|soup

デジタル大辞泉 「スープ」の意味・読み・例文・類語

スープ(soup)

西洋料理の汁物。スープストックを塩・香辛料などで味つけしたり、ルーで濃度をつけたりしたもの。コンソメポタージュとに大別される。ソップ。
[類語]コンソメポタージュ

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精選版 日本国語大辞典 「スープ」の意味・読み・例文・類語

スープ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] soup ) 西洋料理で食事のはじめに出す汁もの。肉、野菜、魚介などを煮出して取っただしをベースとする。コンソメ、ブイヨン、ポタージュなど。ソップ。
    1. [初出の実例]「スップの吸下地で葱を細くそいで」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三)

スープの語誌

( 1 )明治前期、「スープ」と「スップ」の両形が見られたが、明治二〇年過ぎから専ら「スープ」が用いられるようになる。
( 2 )英語「スープ」が入る以前から使われていた「ソップ」(オランダ語 soep から)は大正時代までは使われていたが、昭和に入ると、ほとんど用いられなくなった。

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改訂新版 世界大百科事典 「スープ」の意味・わかりやすい解説

スープ
soup

西洋料理の汁物の総称。現在では主として牛肉や鶏肉,または魚の骨やあらに香味野菜を加え,煮出してとっただし(ブイヨン)をベースとし,これを澄ませたり,野菜や肉,魚などをさまざまな形で加えたりした液状の食物を指す。英語のスープの語源となったフランス語スープsoupeは,もともと〈ブイヨンに浸して食べるパン切れ〉のことで,12世紀ころからこの意味で用いられ,14世紀になると〈パン入りのブイヨン〉を意味するようになった。フランス語でスープを意味するポタージュpotageは〈ポpot(なべ)〉から派生したことばで,〈なべの中に入っているもの〉という意味であった。17世紀までは水で煮込んだ料理を指していたが,やがて肉や野菜のうまみが溶け出している煮汁そのものに価値を認めるようになった。この形はフランスのポトフー,イギリスのボイルド・ビーフ,スペインのオリャ・ポドリーダolla podridaなどの料理に今日まで受け継がれ,いずれも柔らかく煮上がった肉や野菜とともにその煮汁も賞味する。さらに洗練された煮汁そのものをポタージュと呼ぶようになったのは18世紀になってからのことであり,前述のフランスのスープもこれに含まれるようになった。

 スープは食事の幕あけである。その役割は食欲を起こさせることにあり,後に続く料理の性格を決定づける重要な料理である。種類は数百種にも及ぶが,フランス料理における分類によると,〈澄んだスープ〉と〈とろみのあるスープ〉の二つに大きく分けることができる。

(1)澄んだスープpotage clair ブイヨンをさらに澄ませ風味を増したもので,一般にコンソメconsomméと呼ばれる。このコンソメは中に入れる浮き実によって変化をつけると同時に呼名もかわる。例えばニンジン,カブ,セロリなどのせん切りを浮き実としたものはジュリエンヌjulienne,これらの野菜の5mm角のさいの目切りを使えばブリュノアーズbrunoise,米とさいの目切りのトマトを使ったものはアメリケーヌaméricaine。タピオカでとろみをつけ,香味野菜入りのクレープを小さく切ったものを入れるとセレスティーヌcélestine。卵とコンソメをいっしょに裏ごし,オーブンで湯煎(ゆせん)にしてさいの目に切ったものはロアイヤルroyale。このほかこれらを冷たく冷やすか,またはゼラチンを加えてゼリー状にした冷製のコンソメconsommé en geléeもある。

(2)とろみのあるスープpotage lié ブイヨンをベースに,つなぎとなる材料(小麦粉,生クリーム,卵黄など)を加えたもので,日本では単にポタージュと呼ばれる。材料の一部を浮き実としたり,クルトンcroûton(5mm角の食パンをバターかサラダ油でカリカリに焼いたもの)を浮かしたりする。(a)ピュレーpurée ジャガイモ,ニンジン,豆類などの野菜をいためてブイヨンといっしょに煮込み,柔らかくなったところで具とともにこし,生クリームや牛乳を加えて濃度を調節して仕上げる。ジャガイモを使ったものをパルマンティエparmantier,グリーンピースの場合はサン・ジェルマンSaint-Germain,ニンジンの場合はクレシーcrécyと呼ぶ。(b)クレームcrème カリフラワー,レタス,アスパラガスなどを,いためながら小麦粉でとろみをつけ,ブイヨンを加えて煮込み,最後に生クリームと卵黄で仕上げる。また小麦粉をバターでいためた白いルーに牛乳を加え,生クリームでつないで作る昔ながらの方法もある。カリフラワーを使ったものをデュバリーDubarry,レタスのせん切りの場合はショアジーChoisy,アスパラガスの場合はアルジャントゥイユArgenteuilと呼ぶ。また冷たいポタージュの代表格ビシソアーズvichyssoiseはジャガイモとポロネギ(リーキ)をブイヨンで煮てこし,牛乳と生クリームを加え,アサツキのみじん切りをふりかける。(c)コンソメ・リエconsommé lié コンソメに卵黄と生クリームを加えてとろみをつけたもの。バターでいためたオゼイユ(スイバ)のせん切りを浮き実としたものはジェルミニーGerminy,ゆでたタピオカではミラネmilanaisと呼ぶ。(d)スープ フランスでは家庭的なあまり手のこんでいないものを指す。材料を水で比較的短時間煮込んだもので,語源どおりパンが入っているか別に添えることが多い。タマネギを用いたオニオン・グラタン・スープsoupe à l'oignonやムールガイのスープsoupe de mouleが代表的である。(e)ビスクbisque エビ,カニなどの甲殻類を殻ごといためて,タマネギ,トマト・ピュレー,白ブドウ酒,魚からとっただし(フュメ・ド・ポアソンfumet de poisson)を加え,煮てからたたきつぶしてこし,生クリームで仕上げたもので,ピュレーの一種とも考えられる。(f)タイエtaillé 材料の種々の野菜を色紙やさいの目の形に切りそろえ,ブイヨンで煮てこさずに食べる。代表格はジャガイモとポロネギを主としたパリジャンparisien,これにニンジン,サヤインゲンなどの豆類を加えたキュルティバトゥールcultivateurなど。

 このほか,特殊なものに,主菜となるポトフー,プロバンス風ブイヤベース,イタリアのミネストローネminestrone(コンソメにタマネギ,ニンジン,セロリなどを入れ,ゆでたマカロニか米でとろみをつけたもの),ロシアのボルシチ,アメリカのクラムチャウダーclam chowder(アサリ,ジャガイモ,タマネギ,塩漬の豚肉などを牛乳で煮込んだニューイングランド風と,トマトを加えたマンハッタン風がある),スペインのアンダルシア地方のガスパチョgazpacho(トマト,キュウリ,タマネギ,ニンニクなどの生野菜に油,酢,香辛料を加えて調味し,冷たく仕上げたもの)などがあげられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スープ」の意味・わかりやすい解説

スープ
すーぷ
soup 英語
potage フランス語

西洋料理の食事の初めに勧められる汁物を総称してスープという。スープは微妙な、ふくよかな味を有する流動食で、普通は食事の初めにとる。スープを食べることによって、胃に快い刺激を与え胃液の分泌を盛んにし、食欲をおこす。スープのできばえは調理する人の心を伝え、その食事全体をも支配するといってよい。

[小林文子]

歴史

ローマ時代から8~9世紀ごろまでは、鍋(なべ)に材料と水を入れて煮込み、材料が柔らかくなり、おいしい汁になったころ、いっしょに食べたものであった。18世紀になって、肉、野菜と汁を別々に食べるようになった。そして、煮汁のほうがポタージュとなった。フランスではスープ類の総称をポタージュという。

[小林文子]

スープの材料

ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、アスパラガス、ホウレンソウトウモロコシ、カブ、その他の野菜類、米などを単独に、または組み合わせて、限りなくさまざまなスープができる。だし汁は、肉、魚の骨、あらなどに、タマネギ、ニンジン、セロリ、パセリなどの芳香野菜、タイム、セージ、ローレルなどの香草を加えてつくったストックを土台として、主として牛乳とあわせてつくることが多い。

[小林文子]

スープの種類

〔1〕澄んだスープclear soup(英語) potages clairs(フランス語) ブイヨンおよびコンソメがある。ブイヨンは、野菜、肉、骨、魚貝類の魚だし汁を漉(こ)したもので、調味してスープとして用いる。コンソメはブイヨンを土台としてつくったさらに澄明なスープである。

〔2〕濃度のあるスープcream soup(英語) potages liés(フランス語)
 トウモロコシのスープ、ビスキュウスープがある。(1)トウモロコシのスープ 缶詰のトウモロコシを裏漉しにかける。鍋にバターを溶かし、小麦粉を加えて軽く炒(いた)め、トウモロコシを入れて混ぜ合わせる。別に温めておいた牛乳を加え、混ぜながら煮立てる。一度沸騰したら火を止めて仕上げにバターを入れる。なお、スープをつくるときは厚手の手付き鍋に、木杓子(しゃくし)を使うとおいしくできる。浮き実としては、食パンを揚げたクルトンがよく使用される。(2)ビスキュウスープbiscue soup(英語) potages bisques(フランス語) このスープは野菜類、鳥獣肉類を裏漉ししてつくり、濃度を白米でつける。ジャガイモ、インゲンマメなどは、それ自身デンプン質があるので、つなぎを必要としない。野鳥類には、豆類をつなぎとして使用する。シバエビのビスキュウスープのつくり方は、まずシバエビを洗う。タマネギ、ニンジンの薄切り、別にローレル、ニンニク、パセリなどをセロリの茎で包み、紐(ひも)で固く縛って香草の束(ブーケガルニー)を用意する。野菜と白米をバターで軽く炒め、塩、こしょうをしてだし汁を注ぎ、香草の束を入れ、白米を入れて煮る。シバエビはバターで軽く炒めて、ブランデーを注ぎ、だし汁を加えて煮てからすりつぶす。この中に野菜と米の煮たものを加えて、よくすりつぶし、裏漉しにかける。二度漉しすると口当りのよいスープとなる。盛り付けるときに卵黄を牛乳で延ばして混ぜ、さらに生クリーム、バターなどを加えると、こくのあるスープをつくることができる。

〔3〕特殊なスープspecial soup(英語) potage spécial(フランス語) 中身の入っているもので、オニオングラタンスープ、クラムチャウダー(アメリカ)、ボルシチ(ロシア)、ミネストローネ(イタリア)などが代表的である。牛肉と野菜のボルシチは牛肉(イチボ肉)にキャベツ、ネギ、セロリ、ニンジン、赤カブを水とともに長く煮込む。煮汁を漉して、野菜類は適宜の大きさに切って入れる。赤カブは汁にしてスープに少々加え、さらに食べるときスープに加える。これは特殊な珍しいスープである。

 なおスープを盛り付ける器としては、2種類のスープ皿がある。どのスープにも共通に用いる深めの皿と、両側に持ち手のついたブイヨンカップである。主としてブイヨンカップはコンソメに用いられる。

[小林文子]

スープストックの作り方

材料は牛すね肉、ランプ肉、イチボ肉などと、牛骨、ニンジン、セロリ、タマネギ、ローレル、タイム、セージ、クローブ、粒こしょう、塩、水など。スープ鍋に3センチメートルくらいの角切り肉、牛骨、水を入れて火にかけ、ゆっくりと沸騰させる。火を弱め、表面がことこととさざ波のたつ程度で煮る。表面に浮くあくは絶えず取り去る。沸騰後1時間半くらい煮て、野菜類を加える。香料を加えて、さらに30分煮るので、全部で3時間くらい煮ることになる。火を止め静かに漉して、冷やす。冷えると、脂肪が上部に浮かぶので、ていねいにすくい取り除く。これが基本的なスープストックsoup stockの作り方である。

[小林文子]

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百科事典マイペディア 「スープ」の意味・わかりやすい解説

スープ

西洋料理の汁物でフランス料理ではポタージュというが,一般には淡味のすまし汁をコンソメ,濃厚な濁汁をポタージュという。肉類,魚介,野菜などを長時間煮てだし汁(ブイヨンまたはスープストック)を作り,これをもと汁にして調味し,薄めたりして作る。ホワイトソースをもと汁でのばしたクリームスープ,野菜の裏ごしをのばしたピュレーなど種類が多い。普通は浮き実としてクルトン(揚げた小さな食パン),めん類(スパゲッティなど),クネル(すり身)などを入れる。具の豊富なものにはロシアのボルシチ,フランスのポトフー(牛のすね骨などを長時間煮込む),アメリカのチャウダーなど地方色豊かなものが多い。スープは熱くして供するが,夏季には冷たくしたり,固めてゼリー状にすることもある。なおディナー(正餐(せいさん))では食欲増進のため前菜(オードブル)代り,あるいは前菜の次に供される。
→関連項目フランス料理

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スープ」の意味・わかりやすい解説

スープ
soup

西洋料理の汁物の総称。食欲増進の目的で食事の初めに (前菜のある場合は,前菜の次に) 供される。基本的に昼食には出さず夕食や夜食に供される。スープの起源は,肉や野菜を,硬くなったパンなどと一緒に煮て食べたことにある。各国の伝統的スープは,フランスのプティ・マルミット,イタリアのミネストローネ,ロシアのボルシチなど,実を主とし,汁は従。現在のようなスープになったのは 18世紀なかば頃である。種類を大別すると,澄んだスープ (ポタージュ・クリエールまたはコンソメ) と鶏や魚介類,野菜類の裏ごしや,小麦粉,米などの入った濃厚スープ (ポタージュ・クリーム,ポタージュ・リエ) がある。

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「スープ」の解説

スープ【soup】

①西洋料理の汁物。一般に澄んだものは「コンソメ」、とろみのある不透明なものは「ポタージュ」という(ただしフランス語の「ポタージュ」は汁物の総称で、コンソメも含む)。広義では、中国料理など、西洋料理以外の汁物をさすこともある。
②ラーメンなどの汁。
③料理に用いるだし汁。「鶏がらスープ」など動物性の材料からとったものをさすことが多い。◇ラーメンでは、②は一般的に、「たれ」と呼ばれる、そばつゆの返しにあたる混合調味料をだし汁で割って作られるが、このだし汁をさして「スープ」ということもある。

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サーフィン用語集 「スープ」の解説

すーぷ 【スープ Soup】

波が崩れた後にたちあがる白い泡。ホワイトウォーター(白波)とも言う。当然だが、パワーのある波ほどスープは大きい。崩れる直前の壁の部分はフェイスと呼ぶ。

出典 (株)デジサーフ、(株)セキノレーシングスポーツサーフィン用語集について 情報

ダイビング用語集 「スープ」の解説

スープ

泡状にくだけている波のこと。もともとはサーファー用語。

出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報

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