寝殿造の邸宅に設けられた接客の場所で,客の入口である中門廊と寝殿との中間にある二棟廊(ふたむねろう)や対の屋の一部が用いられた。ここで主人が装束をつけたり,子弟の元服などの行事を行うこともあった。《源氏物語》に〈客人の御でい,さぶらひと,しつらい騒げば〉とあるように,寝殿造では接客空間が未分化なのが特徴で,常設の客間はなかった。出居は元来〈主人が出でて客と共に居る場所〉を意味し,来客に応じて板敷の床に円座や半畳,茣蓙(ござ)などの敷物を敷いてザ(座)を設け応対する場所であった。のちにその座をついたてで囲んで間仕切りができ,また部屋全体に畳を敷きつめたザシキ(座敷)が登場するようになる。こうしてしだいに,出居は書院造の影響などを受けて最高の接客空間へと転化していき,平常は家族の生活にまったく用いられない客間,座敷,奥座敷をも意味するようになった。
農家に座敷が登場するのは近世以降のことで,この座敷を出居(デ,デエ,デンなど)と呼んだ地方が多い。農家で接客構えが発達すると,1部屋のデイだけですますもののほかに,オオデイとコデイ,オクデイとデイのように二段構えのものもあらわれた。
なお,中古に朝廷で賭弓(のりゆみ)や相撲(すまい)などの際に設ける座も出居とか出居の座と称した。
執筆者:飯島 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「いでい」とも読む。客に応対するために「出て居る」部屋の意で、寝殿造で庇(ひさし)や廊などの一画をくぎって接客用にあてた部分。出居(でい)の間(ま)ともいう。また、ここで元服、袴着(はかまぎ)、裳着(もぎ)などの儀式も行われた。東三条殿(ひがしさんじょうどの)のように中門に近い二棟廊(ふたむねろう)に設けられる場合もあり、入口に近い場所でも客をもてなしたことを示している。中世の書院造でも客間を意味し、のちには、広く座敷をさすようになった。また、朝廷における賭弓(のりゆみ)、仁王会(にんのうえ)、相撲、弓場始(ゆばはじめ)など、各種の儀式のために設けられる座をさし(出居の座ともいう)、そして、出居の座に着いて、定められた儀式次第を行う人をもさした。
[吉田早苗]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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