出居(読み)イデイ

デジタル大辞泉 「出居」の意味・読み・例文・類語

いで‐い〔‐ゐ〕【出居】

外の方に出て座ること。
「例はことに端近なる―などもせぬを」〈・薄雲〉
寝殿ひさし内部にある応接用の部屋。のちに「でい」と呼ばれ、接客用の座敷の意になる。出居殿いでいどの。いでいのざ。
「―に火をだにもともさず」〈著聞集・八〉
朝廷で、賭弓のりゆみ相撲すまいなどの儀式のとき、臨時に設ける座。また、その座に着いて事を行う人。いでいのざ。
「―につきて賭け物とりてまかでたり」〈かげろふ・中〉

で‐い〔‐ゐ〕【出居】

平安時代寝殿造りに設けられた居間と来客接待用の部屋とを兼ねたもの。のち、客間をいう。いでい。
出居いでい3

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精選版 日本国語大辞典 「出居」の意味・読み・例文・類語

いで‐い‥ゐ【出居】

  1. 〘 名詞 〙
  2. (家の中の外に近い方に)出てすわること。出ていること。でい。
    1. [初出の実例]「人々反橋に几帳ばかりをたてていでゐしたり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上下)
  3. 寝殿造りに設けた居間兼来客接待用の部屋。多くは二棟廊と呼ばれる渡殿に設けられる。出居殿。出居の座。のちには多く「でい」と読み、座敷の意。
    1. [初出の実例]「母北の方、袖君御簾(みす)をあげていでゐの簀子(すのこ)に〈略〉居て」(出典:宇津保物語(970‐999頃)菊の宴)
  4. 朝廷で賭弓(のりゆみ)相撲(すまい)などの儀式のときに設ける座。出居(いでい)の座。また、その座についてことを行なう人。でい。
    1. [初出の実例]「院の小弓はじまりて、いでゐなどののしる」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  5. 出入り口。滝沢馬琴の特殊用語。
    1. [初出の実例]「毛国鼎は出居(イデヰ)のかたに脆(ひざまづ)きて」(出典:読本椿説弓張月(1807‐11)続)

で‐い‥ゐ【出居】

  1. 〘 名詞 〙
  2. (家の中の外に近い方に)出てすわること。出ていること。いでい。
    1. [初出の実例]「御所の西に平板敷に紫縁(むらさきべり)敷きて、雑仕二人ていしたり」(出典:中務内侍(1292頃か)正応元年一〇月二一日)
  3. 寝殿造りに設けられた居間兼来客接待用の部屋。多くは二棟廊に設けられる。のちには座敷の意。出居の座。いでい。
    1. [初出の実例]「客人の御でい、さぶらひと、しつらひ騒げば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
    2. 「わが身もでいの蔀上げて、燈台二所に立てて腹巻取って側に置き」(出典:義経記(室町中か)二)
  4. 朝廷で賭弓(のりゆみ)や相撲(すまい)などの儀式のときに設ける座。出居の座。また、その座についてことを行なう人。いでい。

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改訂新版 世界大百科事典 「出居」の意味・わかりやすい解説

出居 (でい)

寝殿造の邸宅に設けられた接客の場所で,客の入口である中門廊と寝殿との中間にある二棟廊(ふたむねろう)や対の屋の一部が用いられた。ここで主人が装束をつけたり,子弟の元服などの行事を行うこともあった。《源氏物語》に〈客人の御でい,さぶらひと,しつらい騒げば〉とあるように,寝殿造では接客空間が未分化なのが特徴で,常設の客間はなかった。出居は元来〈主人が出でて客と共に居る場所〉を意味し,来客に応じて板敷の床に円座や半畳,茣蓙(ござ)などの敷物を敷いてザ(座)を設け応対する場所であった。のちにその座をついたてで囲んで間仕切りができ,また部屋全体に畳を敷きつめたザシキ(座敷)が登場するようになる。こうしてしだいに,出居は書院造の影響などを受けて最高の接客空間へと転化していき,平常は家族の生活にまったく用いられない客間,座敷,奥座敷をも意味するようになった。

 農家に座敷が登場するのは近世以降のことで,この座敷を出居(デ,デエ,デンなど)と呼んだ地方が多い。農家で接客構えが発達すると,1部屋のデイだけですますもののほかに,オオデイとコデイ,オクデイとデイのように二段構えのものもあらわれた。

 なお,中古に朝廷で賭弓(のりゆみ)や相撲(すまい)などの際に設ける座も出居とか出居の座と称した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「出居」の意味・わかりやすい解説

出居
でい

「いでい」とも読む。客に応対するために「出て居る」部屋の意で、寝殿造で庇(ひさし)や廊などの一画をくぎって接客用にあてた部分。出居(でい)の間(ま)ともいう。また、ここで元服、袴着(はかまぎ)、裳着(もぎ)などの儀式も行われた。東三条殿(ひがしさんじょうどの)のように中門に近い二棟廊(ふたむねろう)に設けられる場合もあり、入口に近い場所でも客をもてなしたことを示している。中世の書院造でも客間を意味し、のちには、広く座敷をさすようになった。また、朝廷における賭弓(のりゆみ)、仁王会(にんのうえ)、相撲、弓場始(ゆばはじめ)など、各種の儀式のために設けられる座をさし(出居の座ともいう)、そして、出居の座に着いて、定められた儀式次第を行う人をもさした。

[吉田早苗]

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「出居」の解説

でい【出居】

寝殿造りで、応接間兼居間として用いた空間で、二棟廊(ふたむねろう)と呼ばれる渡殿(元来は建物をつなぐ屋根付きの廊下)や庇(ひさし)の一部を区切って設けられた。日常生活や客との対面のほか、元服などの行事が行われることもあった。近世以降には多くの地方で、農家の客間をいうようになった。◇客に応対するために「出て居る」部屋の意。「出居座」「いでい」ともいう。

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普及版 字通 「出居」の読み・字形・画数・意味

【出居】しゆつきよ

別居。

字通「出」の項目を見る

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