卵巣嚢胞腺腫(せんしゅ)ともいい、嚢腫の代表的なもので、良性腫瘍(しゅよう)の一種。卵巣腫瘍のうちもっとも多く、俗に「卵巣の瘤(こぶ)」などとよばれる。なお、卵巣には腫瘍性でない嚢胞cystもよくみられるが、臨床的に鑑別が困難なため、一般に卵巣嚢腫に含まれることが多い。単純な卵巣嚢胞には腺上皮の増殖がみられず、徐々に大きくなるが破裂することはなく、時日の経過とともに自然に消滅してしまう。
卵巣嚢腫はムチン性(粘液性)と漿液(しょうえき)性に大別される。ムチン性嚢腫はかつて偽粘液性嚢腫とよばれていたもので、内容はゼラチン状で、さくらんぼの実大から児頭ないし成人頭大のものまであり、単房あるいは多房性で、壁が厚くて硬い。30歳代にもっとも多くみられ、一般に片側性で、発育は徐々に進むが悪性化することはほとんどない。
一方、漿液性嚢腫は多少とも乳頭状の増殖を示し、壁が紙のように薄くて内容が透けて見え、淡黄色を呈する。40歳前後に多くみられ、おもに両側性に発生する。乳頭状に増殖したもののうち約半数に悪性化の傾向があり、再発することもある。
なお、よく動く卵巣嚢腫では根元の部分がねじれて茎捻転(けいねんてん)をおこし、循環障害を招くと、激しい下腹部痛をはじめ、嘔吐(おうと)、発熱、子宮出血などの急性症状がみられ、ただちに手術する必要がある。
婦人科的診察(内診)のほか、超音波断層撮影やCT検査によって比較的容易に診断されるが、悪性との鑑別が困難な場合が多く、手術による摘除が行われる。
[新井正夫]
良性の卵巣腫瘍の一つで,卵巣の表面をおおっている上皮(表層上皮)が腫瘍化し,腫瘍を切り割ったとき,割面に充実部がなく,囊胞性で,その中に,水様またはゼラチン様,あるいは古くなった血液がたまった囊胞性腫瘍をいう。卵巣腫瘍の約2/3を占め,30~40歳代に好発する。囊腫の壁は灰白色,平滑であるが,一部,腫瘍細胞が乳頭状に増殖し,良・悪性境界領域の腫瘍(境界悪性腫瘍borderline tumor)や腺癌になることもある。しかし,その頻度は低く,10~20%くらいといわれている。一般に一側の卵巣に発生するが,5~10%は両側に発生する。
囊腫の大きさはさまざまで,骨盤腔から腹腔全体を占めるような巨大な腫瘤を形成するものまである。一般に囊腫壁は薄く,割面が蜂巣様に区切られているかいないかによって多房性,単房性に分けられる。囊腫は病理組織学的に囊胞腺腫というが,構成する腫瘍細胞や内容液の種類によって,国際的に四つに分類されている。すなわち,漿液性,粘液性,類内膜,明細胞の四つの囊腫で,漿液性の内容液は水様,粘液性はゼラチン様,類内膜は古くなった血液が貯留している。このなかで粘液性囊腫が最も大きくなる傾向を有し,一般に腫瘍の直径は15~20cm,重量2000~4000gに達し,多房性になることが多い。
症状は卵巣腫瘍の場合と同様であるが,大きくなったものを触診すると,硬度は軟らかく,弾力性に富む。超音波断層やCT検査により,術前に比較的容易に診断できる。治療としては,腫瘍を切除する。
執筆者:寺島 芳輝
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また下痢になることはまれで,かえって便秘に傾くことが多い。虫垂炎
[卵巣囊腫の捻転,子宮外妊娠の破裂]
卵巣囊腫の捻転は,突然に出現する下腹部痛で始まり,実際には虫垂炎とよく似た症状であるから,女性の場合,虫垂炎が疑われるときは必ず考慮しておかねばならない。一方,子宮外妊娠の破裂は,突発する下腹部の激痛とともにショック症状,貧血症状が著しく,性器出血などがある。…
※「卵巣嚢腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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