隼人司(読み)ハヤヒトノツカサ

デジタル大辞泉 「隼人司」の意味・読み・例文・類語

はやひと‐の‐つかさ【×隼人司】

律令制で、衛門府(のち兵部省)に属し、隼人管理歌舞の教授、竹器製作などをつかさどった役所

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「隼人司」の意味・わかりやすい解説

隼人司
はやとし

朝貢隼人・移配隼人など畿内に居住する隼人を統括し、宮門などを警衛し、元日朝賀・蕃客(ばんきゃく)入朝などの儀式行幸(ぎょうこう)への参加で天皇権威を荘厳(しょうごん)するために設置された官司。竹製品の製作にも携わった。飛鳥浄御原令(あすかきよみはらりょう)に前身官司が存在した可能性がある。大宝令では衛門府の管下にあり、正(かみ)・佑(じょう)・令史(さかん)の三等官が置かれ、使部(つかいべ)・直丁(じきてい)および2人の大衣(おおきぬ)と今来(いまき)隼人、白丁(はくてい)隼人からなった。平城宮跡からは井戸枠に転用された隼人盾が出土している。805年(延暦24)の隼人の朝貢停止をうけて、808年(大同3)正月隼人司は衛門府に吸収され、同年7月兵部省(ひょうぶしょう)のもとに再置され、畿内隼人によって維持された。『延喜式』兵部省隼人司に、この時期の詳細が見える。この後も文正年間(1466~1467)までは、即位大嘗祭(だいじょうさい)・行幸などに関与したことが知られる。

[永山修一]

『中村明蔵著『熊襲・隼人の社会史研究』(1986・名著出版)』『永山修一著「隼人司の成立と展開」(隼人文化研究会編『隼人族の生活と文化』所収・1993・雄山閣出版)』

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改訂新版 世界大百科事典 「隼人司」の意味・わかりやすい解説

隼人司 (はやとのつかさ)

隼人を管掌する役所。天武・持統朝のころ,大隅隼人阿多隼人の一部は畿内および周辺地に移住させられ,番上して,宮門守護,歌舞の演奏,竹笠の造作等に当たった。また大隅薩摩に在住の隼人らが6年1交替で上京して来たが,それらを管掌する官衙が隼人司である。令制では衛門府に属し正1人,佑1人,令史1人,使部10人,直丁1人の官人構成であった。その下に大衣(おおきぬ)隼人,番上隼人,今来隼人,白丁隼人らがおり,諸々の職に当たった。808年(大同3)に隼人司を統合した衛門府が同年左右衛士府に統合されたのを機会に,隼人司は復置されて兵部省に属することとなった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「隼人司」の意味・わかりやすい解説

隼人司
はやとのつかさ

令制の官司の一つ衛門府被官で,隼人検校した役所。彼らに風俗 (ふぞく) の歌舞 (→隼人舞 ) を教え習わせ,竹器を造らせた。長官は隼人正。大同3 (808) 年兵部省の所管となった。

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