委任立法(読み)イニンリッポウ

デジタル大辞泉 「委任立法」の意味・読み・例文・類語

いにん‐りっぽう〔ヰニンリツパフ〕【委任立法】

法律の委任に基づいて、立法府以外の機関、特に行政機関法規を制定すること。また、その法規。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「委任立法」の意味・読み・例文・類語

いにん‐りっぽう ヰニンリッパフ【委任立法】

〘名〙 法律の委任により命令規則などを制定すること。〔袖珍新聞語辞典(1919)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「委任立法」の意味・わかりやすい解説

委任立法 (いにんりっぽう)

立法の権限を,立法府から他の国家機関が委任されて行う立法。一般的には行政府が法律による委任を受けて行う立法を意味する。法律の執行は行政権の本来の権限であるから,法律を執行するために必要な細則の立法を行政府が行う(執行命令)のは,委任立法と概念を異にする。本来,国の組織および作用は,国民意思を第一次的に代表する議会の定める法にもとづくべきであり,これは,近代議会制の重要な柱でもあった。しかし,国家の職能の範囲が拡大し,かつ職能の性質が複雑さを増すにつれ,議会が,国家組織と作用のすべてを規律する立法を行うことは不可能となり,議会の立法である法律は原則的大綱事項を定めるにとどめ,行政府およびその各部門の立法に具体的定めをまかせるようになった。かくて,現代国家はいずこでも委任立法が盛行を極めている。日本も例外ではない。権力分立制をふまえて,国会唯一立法機関とされている(憲法41条後段)が,これは委任立法を否定する趣旨ではない。憲法は,内閣の立法である政令における罰則について,法律による委任の必要性を明記しているのみである(73条6号但書)が,罰則以外についても法律委任にもとづく行政立法は認められる。ただし,法律事項をすべて委任するような白紙委任的立法は許されない。罰則の委任についても,処罰構成要件をすべて委任立法にまかせることは許されない。委任立法が法律の枠を超えたかどうかを,国会が審査するような制度は,国会の立法府たる本質上,望ましい制度と思われるが,日本にはない。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「委任立法」の意味・わかりやすい解説

委任立法
いにんりっぽう

法律の委任に基づいて法規範を発すること。その具体的な表れが委任命令委任条例である。典型的な例は内閣の発する政令であるが、下級裁判所が最高裁判所から委任されて発する規則(憲法77条3項)、会計検査院(会計検査院法38条)や人事院(国家公務員法16条)、公安委員会(警察法12条・38条5項)などが発する規則、知事・市町村長が条例の委任に基づいて発する規則、政令の委任に基づき各省大臣が発する省令、地方公共団体が法律の委任に基づいて制定する条例(例、建築基準法56条の2に定める日影(にちえい)規制条例、公衆浴場法2条3項に基づく浴場の配置の基準を定める条例などの委任条例)なども委任立法である。

 委任立法が認められる根拠は、形式的には「政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない」と定める憲法第73条6項但書などに、実質的には立法細目の専門技術性、事情の変化に機敏に対応し、また地方的事情を考慮する必要性などに求められる。委任立法は、国会を唯一の立法機関とする議会制民主主義(憲法41条)からみて例外であるから、地方条例への委任を除き、個別的、具体的であることを要する。第二次世界大戦終了まではナチスの授権法や日本の国家総動員法など、議会の立法権を放棄するに等しい白紙委任が存在したが、これは今日では許されない。法律の委任なくして政令で罰則を定めることはできない。なお、犯罪構成要件を政令に委任したり、委任された者がさらに権限を委任する再委任もいちおうは許されると解されている。

[阿部泰隆]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「委任立法」の意味・わかりやすい解説

委任立法
いにんりっぽう

法律の委任に基づき立法府以外の機関が,本来法律で定めるべき事項について立法を行うこと,またはこのような委任に基づいて制定された法規。国会は,国の唯一の立法機関とされているから,その趣旨を失わせるほどの一般的抽象的な委任は許されず,個別的具体的事項についてのみ委任することができる。しかし行政の弾力性や複雑化に応じる必要から委任の範囲は拡大する傾向にある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「委任立法」の意味・わかりやすい解説

委任立法【いにんりっぽう】

法律の委任により立法府以外の国家機関(特に行政機関)が法規をつくること。最近の社会の複雑化と流動化は,それに対応する立法をすべて議会に任せることを実際上不可能にし,したがって大綱を法律で,また細部を委任立法で定める傾向をますます大きくしている。→委任命令

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android