日本大百科全書(ニッポニカ) 「イスノキ」の意味・わかりやすい解説
イスノキ
いすのき / 蚊母樹
[学] Distylium racemosum Sieb. et Zucc.
マンサク科(APG分類:マンサク科)の常緑高木で、高さ20メートル、直径1メートルに達し、南九州の常緑広葉樹林の代表的な構成樹種。樹皮は灰褐色。葉は厚くて硬く、楕円(だえん)形、鋸歯(きょし)はなく、よく虫こぶができる。花は3~4月、葉腋(ようえき)から出た円錐(えんすい)花序につき、紅色、花弁はない。一つの花序に雄花と両性花が混在する。果実は蒴果(さくか)、先端に2本の突起があり、黄褐色の星状毛が密生し、浅く2裂して種子を放出する。本州の東海地方以西から四国、九州、沖縄、さらに済州島、台湾、中国に分布する。材は日本産有用樹種のなかでももっとも重くかつ硬く、そろばん玉、櫛(くし)、床柱、鴨居(かもい)などさまざまな用途に賞用される。虫こぶを吹くと鳴る音からヒョンノキともいう。イスノキ属はアジア東部から南部に固有な属で、18種からなる。
[門田裕一 2020年5月19日]