オキシダント(読み)おきしだんと(英語表記)oxidant

翻訳|oxidant

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オキシダント」の意味・わかりやすい解説

オキシダント
おきしだんと
oxidant

化学用語としては酸化作用をもつもの、すなわち酸化体のこと。もともとは二つ以上の原子価をもつイオンのうち高原子価のものを酸化体、低原子価のものを還元体とよんでいた。たとえば、鉄イオンではFe3+がFe2+に対する酸化体である。

 現在では一般に、大気中の窒素酸化物炭素化合物紫外線などによって複雑な化学変化をおこして生じた強い酸化性のある物質総称してよぶことが多い。光化学スモッグの原因となり、動物の目や呼吸器を傷め、植物を枯らしたりするため社会的な問題を引き起こしている。その構成成分は、オゾンアルデヒドアクロレイン、ペルオキシアセチルニトラートその他などであるとされている。光化学スモッグ注意報などは、オキシダント濃度が一定の基準を超えるとき、発令されることになっている。

[中原勝儼]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オキシダント」の意味・わかりやすい解説

オキシダント
oxidant

自動車の排気ガスなどを発生源とし,大気中に存在する炭化水素と窒素酸化物が,太陽光線,特に紫外線の作用によって反応を起して生じた,原子状酸素やオゾン,あるいはこれらを媒介としてできた過酸化物などのような,酸化性の強い物質の総称。オキシダントの生成は,まず光吸収性の強い二酸化窒素 NO2 が,420nm 以下の光を吸収し,一酸化窒素 NOと原子状酸素Oとに分解し,次いでこのO は大気中の酸素 O2 と反応して,オゾン O3 となるか,あるいは炭化水素が光の作用により空気中の酸素と反応し過酸化物に変化し,さらに分解してオゾンとなる,などといわれている。なお大気汚染のオキシダントとして炭化水素からアルデヒドを経て生成したと考えられる PAN (CH3COOONO) も重要である。大気中のオキシダントは大気中の亜硫酸ガス湿気が反応してできる亜硫酸を酸化して硫酸とするので,光化学スモッグ,硫酸ミストの原因をなすといわれている。

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