カケス(読み)かけす(その他表記)jay

翻訳|jay

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カケス」の意味・わかりやすい解説

カケス
かけす / 懸巣
jay
[学] Garrulus glandarius

鳥綱スズメ目カラス科の鳥。中央アジアからモンゴルにかけての乾燥地域を除いて、ユーラシアの温帯・亜寒帯に広く分布し、インド北部から中国南部とインドシナ半島にかけても生息する。全長約33センチメートル。羽色は地方によって異なり、日本の大部分では主としてブドウ色で、のどと腰が白く、尾は黒く、翼は黒と白で、肩に青と黒の細かく入り混じった美しい斑点(はんてん)があり、頭上は白に黒色縦斑がある。北海道のものは頭部が赤い栗(くり)色で頭上に黒色縦斑がある。森林性で樹上でも地上でも採食し、食性はカラス科のほかの鳥と同様であるが、とくにカシの実(どんぐり)を好むところからカシドリの異名がある。しばしばほかの鳥の声をまねるし、木を切る音など機械的な音もまねる。

 カラス科の鳥のなかでカラスやカササギ以外の鳥は一括してカケス類とよばれることがよくある。この広義のカケス類は、新大陸産のアメリカカケス類約30種(「ルリサンジャク」の項参照)と、南・東南アジア産のサンジャク・タイワンオナガドリ類約20種と、ユーラシアと北アメリカの狭義のカケス類6種に大別される。最後のものにはアカオカケス属Perisoreus3種とカケス属が含まれ、種のカケスにもっとも近縁なのは南西諸島ルリカケスG. lidthiヒマラヤミヤマコンヨウキン(ブドウイロカケス)G. lanceolatusの2種である。

浦本昌紀


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カケス」の意味・わかりやすい解説

カケス
Garrulus glandarius; Eurasian jay

スズメ目カラス科。全長 32~36cm。アフリカ北端部とヨーロッパからヒマラヤ山脈の北部を経て東アジアまでの地域,およびインド北部から東南アジアの大陸部に分布する。地理的変異が著しく,約 30亜種がある。日本にはそのうち 4亜種が繁殖分布し,本州四国地方九州地方にすむ亜種のカケス G. g. japonicus と,北海道にすむ亜種ミヤマカケス G. g. brandtii とでは羽色がかなり異なる。カケスは,頭上は白く黒色斑があり,背と胸腹部はぶどう色,雨覆は白色青色の斑で美しく,には黒く大きな白斑がある。尾は黒く,腰は白い。顔は黒色。ミヤマカケスは,頸から頭部が褐色で,頭上が白くない。平地から低山のおもに広葉樹林に生息するが,本州北部のものや比較的高いところで繁殖するものの一部は低地暖地に移って越冬する。雑食性で昆虫類,小鳥の卵や雛,木の実などを食べる。「じぇー,じぇー」と鳴き,ほかの鳥の声をまねるのもうまい。

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改訂新版 世界大百科事典 「カケス」の意味・わかりやすい解説

カケス (掛子)
jay
Garrulus glandarius

スズメ目カラス科の鳥。ユーラシア大陸の中緯度地域一帯に広く分布し,日本でも全国各地の低山帯や平地の林にふつうに生息している。全長約35cm。頭上は白く黒色の縦斑があり,背と下面はブドウ色,尾羽は長く黒い。次列風切の基部と腰は白く,飛翔(ひしよう)時にはよく目だつ白帯となる。また翼の基部に独特の青と黒の縞模様があるのが特徴。一般に留鳥だが秋季には開けた林に移動し,村落や都市の郊外でも見かける。ジャー,ジェーイと濁った声で鳴く。各種のドングリ類を好むことからカシドリ(橿鳥)の名がある。しかし雑食で,昆虫類,ミミズ,果実,穀類など種々の餌をとる。巣は木の枝の上に小枝を集めてつくり,カラスの巣に似ているが,小さい。1腹の卵数は4~6個。カケス属には,本種のほかに,奄美大島と徳之島に分布するルリカケスG.lidthiと中・西部ヒマラヤ山地に分布するミヤマコンヨウキンG.lanceolatusの2種がある。なおカケス類という場合は,さらに多くの属の鳥を指すことがある。
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百科事典マイペディア 「カケス」の意味・わかりやすい解説

カケス

カラス科の鳥。翼長17cm。体の主色は葡萄(ぶどう)色で翼の基部は白・黒・藍色の斑。尾は黒い。北海道の亜種ミヤマカケスは羽色が少し異なる。おもにユーラシア大陸中部以南に分布。日本では全国の林で繁殖。冬は暖地に移るものもある。雑食性で,小鳥のひなを食べることもあり,どんぐり等を一定の場所に隠す習性も知られる。樹枝上に皿形の巣を作る。ジェージェーと大声で鳴き,他の鳥の鳴声,物音などを巧みにまねる。→ルリカケス

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