先カンブリア時代を新旧二分したときの後半の地質時代で、約25億年前から約5億4100万年前までの期間に相当する。原生代に形成された地層を原生界という。生物界では、早期には藍藻(らんそう)植物で代表される原核生物のみが知られるが、中期には緑藻などの真核生物が出現する。晩期には、原生動物に加え、一見すると刺胞動物、腔腸(こうちょう)動物、環形動物、節足動物などに似た多様な軟体性多細胞生物が出現した。これらの化石は世界各地で発見されており、エディアカラ動物相とよばれている。原生代の地層は世界の楯状地(たてじょうち)に広く分布し、厚い鉄鉱層を含むので経済的にも重要である。世界各地の約7億年前の原生代の地層には氷河作用で形成された厚い氷礫(ひょうれき)岩層が発達しており、地球全体が氷河で覆われるほどの氷河時代があった。
[小澤智生 2015年8月19日]
『リチャード・T・J・ムーディ、アンドレイ・ユウ・ジュラヴリョフ著、小畠郁生監訳『生命と地球の進化アトラスⅠ 地球の起源からシルル紀』(2003・朝倉書店)』▽『アンドルー・H・ノール著、斉藤隆央訳『生命 最初の30億年――地球に刻まれた進化の足跡』(2005・紀伊國屋書店)』
地質時代の時代区分の一つで,先カンブリア時代を二分したときの後期をいう。北米大陸で,太古代の片麻岩や花コウ岩をおおい,カンブリア紀の地層におおわれている,非変成または変成度の弱い地層が見いだされた。1889年にC.D.ウォルコットによってそれらの地質系統がアルゴンキアンAlgonkianと命名された。20世紀になってから,古生代,中生代,新生代の地史区分にならって,先カンブリア時代を二分した始生代と原生代が太古代とアルゴンキアンの同義語として使われるようになった。カナダ楯状地ではケノーラン造山までを始生代に,それ以降を原生代とし,その境界は約25億年前とされている。バルト楯状地は北東から南西へ,古期,中期,新期の三つの構造帯に分かれ,中期と新期の地質系統が原生代で,始生代との境界は約20億年前とされている。このように原生代の始まりについては,地域ごとに異なった絶対年代が与えられているため,現在ではアメリカ地質調査所で先カンブリア時代をW,X,Y,Zに4区分する案を提唱している。それら4区分の境界には25億年,16億年,8億年前という絶対年代があてられ,原生代はX,Y,Zで三分されることになる。日本列島では,飛驒高地に分布する飛驒変成岩が原生代の岩石とされているが,後の変成作用のために,その放射年代は約2億2000万年前(三畳紀)の値を示している。岐阜県上麻生の三畳紀のレキ岩中に含まれる礫(れき)の絶対年代は約17億年前の値を示し,飛驒変成岩に由来すると考えられている。
→地質時代
執筆者:秋山 雅彦
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…先カンブリア時代は78年イギリスで提唱され,C.R.バン・ハイスにより96年にアメリカの前期カンブリア紀より前の地質系統に対して初めて使用された。
[細分]
変成作用を強くうけた岩石や花コウ岩で代表される太古代(始生代)の地質系統とその上位にあって変成作用をほとんどうけていないアルゴンキアン(原生代)の地質系統という二大区分は,研究が進むにつれて矛盾することがわかってきた。世界各地に分布する先カンブリア時代の地質系統を統一的に扱うことは困難である。…
…まず,現在知られている地球で最古の岩石は,サマリウム‐ネオジムSm‐Nd放射性同位体を使って37.7億年の値が得られているから,地球の歴史の最初の約7.5億年の記録は地殻に残されていない。次に,約25億年前を境にして,先カンブリア時代を始生代Archean,Archeozoicと原生代Proterozoicに区分するが,〈生命の兆しがあった時代〉を意味する始生代と〈最初の生物があらわれた時代〉を意味する原生代が,岩層の特徴だけで汎世界的に識別できるかどうか疑問視されている。
[顕生累代]
これに対してカンブリア紀よりあとの顕生累代は,生物の進化が飛躍的に進んだ時代で,化石の内容や,ある時代に特徴的な岩質の地層が見られることから,詳しい細分がなされている。…
※「原生代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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