日本大百科全書(ニッポニカ) 「サキシマスオウノキ」の意味・わかりやすい解説
サキシマスオウノキ
さきしますおうのき / 先島蘇枋木
[学] Heritiera littoralis Dryand.
アオギリ科(APG分類:アオイ科)の高木。葉は長楕円(ちょうだえん)形から倒卵状楕円形で長さ10~20センチメートル、裏面は灰色ないし銀白色。円錐(えんすい)花序は長さ7~15センチメートル。果実はきわめて堅く扁卵(へんらん)形で竜骨状の稜(りょう)があり、長さ約5センチメートル、平滑で光沢がある。マングローブ林内や川岸に生え、奄美(あまみ)大島、沖縄、および熱帯アジア、アフリカに分布する。著しい板根(ばんこん)を形成することで知られる。西表島(いりおもてじま)古見(こみ)の前良(めーら)川の河口の、この樹木50本以上からなる群落は国指定の天然記念物で、もっとも発達している個体における板根の垂直面の合計面積は17畳以上にも及ぶ。また、石垣島の桴海(ふかい)於茂登岳(おもとだけ)のンタナーラ川の流域にある群落も国指定の天然記念物である。当地のように海岸から9キロメートル以上離れた渓流沿いに群落が発達している例は少ない。古くは、この板根を船の舵(かじ)に、材や樹皮は染料あるいは民間薬に用いたという。名の「先島」は宮古、八重山(やえやま)列島をさし、「スオウノキ」は、本種を染料とするところから、マメ科の染料植物であるスオウをあてたものである。
[島袋敬一 2020年4月17日]