日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャポニスム」の意味・わかりやすい解説
ジャポニスム
じゃぽにすむ
japonisme フランス語
幕末に日本が開国して以後さまざまな日本美術が欧米に紹介されたが、これに影響されて生じた日本趣味をジャポニスムという。このころに運ばれた美術品、またこれに触発されて欧米でつくられた作品を総称するジャポネズリーということばも生まれたが、定着しなかった。日本美術を欧米に運んだ人々としてはシーボルトらオランダ商館関係者に続いてオールコック、オリファント、サトー、シャシロンらがあり、1860年代に日本美術に接したのは主としてイギリスのラファエル前派とフランスの印象派およびその周辺の人々であった。ジャポネズリーには単なる模倣や消極的な受容から創意あふれる摂取に至るまで無数の段階があり、最後の例を総括してジャポニスムとよぶことが多いが、両者の区別はいまなお明瞭(めいりょう)でない。だが近世ヨーロッパでのシノワズリーやトルコ趣味などより、ジャポニスムのほうが持続的でもあり内容が充実してもいることは確かで、ことばの意味を広くとれば、建築や造園、文学や音楽、モードの分野にまでジャポニスムを認めることができる。
[池上忠治]
『大島清次著『ジャポニスム』(1980・美術公論社)』▽『山田智三郎編Japonisme in Art (1980, Kodansha International)』