栃木県南西部と群馬県東部にまたがる山地。北は大谷(だいや)川を境に日光火山群,西は渡良瀬川を境に奥日光山地や群馬県赤城火山などに接し,東と南は関東平野に没する。南北約45km,東西約30kmの四辺形を示す。最高点の夕日岳(1526m)は北端に近く,ここから横根山,丸岩岳,野峰,多高山,石尊山を連ねた主山稜は山地の西に偏し,南に漸次低くなる。渡良瀬川に面する西斜面は急で,南東に向かって緩傾斜しており,足尾山地は全体が東に傾く傾動地塊と考えられている。山地は主として古生代二畳紀~中生代の石灰岩,チャート,砂岩,粘板岩や花コウ岩などで構成される。マンガン鉱床が存在するが,今は採鉱されない。南東麓の葛生(くずう)地区には馬蹄形に石灰岩,ドロマイトが分布していて,セメント工場,製鉄用の生石灰工場などの石灰工業が行われる。山地内の谷底平野には水田が開け,コンニャクイモ,イチゴが栽培され,小規模ながら大麻も作られる。佐野市東部の石灰洞窟から発見された化石骨は葛生人として発表された。また,永野川の谷,栃木市星野では縄文時代の住居跡(星野遺跡)が発掘されている。江戸時代,この山地からきり出された用材が黒川などを通して搬出された。また,大芦川や黒川流域などで〈御用作人〉によるチョウセンニンジンが栽培され,また麻,ゴマ,エゴマ,ナタネなどを産した。山地内は景勝地が多く,日光連山の展望台といわれる前日光県立自然公園のほか太平山,唐沢山,足利の3自然公園が設定されている。太平山は平野に臨んで起伏に富み,陸の松島といわれ,唐沢山は藤原秀郷の居城があったところで,眺望〈13州に及ぶ〉といわれる。足利県立自然公園は織物の町足利市北方の丘陵性の山地にあり,関東高野山の別名がある行道山浄因寺,天然記念物の名草の巨石群などの名所が多い。
執筆者:平山 光衛
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栃木県西部から群馬県東部にかけて横たわる山地。北はほぼ大谷川(だいやがわ)、西は渡良瀬川(わたらせがわ)に接し、東と南は関東平野に没する。夕日岳(ゆうひだけ)(1526メートル)、横根(よこね)山(1373メートル)、丸岩(まるいわ)岳(1127メートル)を連ねた主嶺(しゅれい)線の北西側は急傾斜し、南東側は傾斜が緩く、黒川、大芦(おおあし)川、思(おもい)川、永野(ながの)川などの渡良瀬川の支流が谷を刻み、谷底平野にはイネ、コンニャクイモ、サトイモなどが栽培される。山地は秩父(ちちぶ)系の古生層や花崗(かこう)岩などからなり、侵食階程は壮年期にある。山菅(やますげ)、会沢(あいさわ)、出流(いずる)などからドロマイト、石灰(せっかい)岩を産し、ドロマイトの産出はわが国最大を誇る。セメント、砕石も産し、山地斜面などにはスギ、ヒノキの植林も行われる。前日光(まえにっこう)、太平山(おおひらさん)、唐沢山(からさわさん)、足利(あしかが)の各県立自然公園があり、太平山には県立少年自然の家がある。北部の古峰神社(ふるみねじんじゃ)は、東北地方南部におもな信仰圏を有する。
[平山光衛]
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