って(読み)ッテ

デジタル大辞泉 「って」の意味・読み・例文・類語

って[格助・係助・終助]

[格助]格助詞」または「とて」の音変化とも》名詞、名詞的な語に付く。
引用する語、または文の下に付いて、次に来る動作作用の内容を表す。…と。「金を貸してくれって頼まれた」「読書しろって言われた」
上の語または文が、次に来る語の内容説明であることを表す。…という。「山田様って方ご存じですか」「用ってほどじゃない」
[係助]名詞、名詞的な語に付く。
ある事柄を話題として取り上げて示す意を表す。…は。…というのは。「あなたって親切な人ね」「彼ってだれのこと」
相手の質問・命令・依頼などを受けて、それを話題として示す意を表す。…と言われても。「今さら変更するって、急に困るね」「どうするかって、決まってるだろ」
[終助]文末の種々の語に付く。
他から聞き及んだ話を伝える意を表す。…ということだ。…そうだ。「君、委員になったんだってね」「彼も行きたいって
上昇イントネーションを伴って)相手の言葉を受けて反問する意を表す。「えっ、なんだって」「なにっ、知らないって
(「かって」の形で)反語の意を表す。「こんなまずいもの食えるかって」「だれが言うことを聞くかって
自分の気持ちを主張する意を表す。「そんなこと知ってるって」「わかってるよ、もう言うなって」→たって[接助]
[補説]「って」は打ち解けた対話にだけ用いられる。語源については、係助詞「とて」の促音添加、「という」「というのは」の音変化などとして扱うこともある。また、形容詞、形容詞型助動詞連用形につく「って」は、接続助詞」の変化したもので、とは異なる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「って」の意味・読み・例文・類語

って

  1. ( 「と言う(といふ)」が「てふ」などを経て変化したもの。「ん」の後では「て」となる。→ )
  2. [ 1 ] 〘 格助詞 〙 文や語句単語の引用を示す。
    1. あとに言語活動を表わす動詞が続く。「と」に置き換えることが可能。「天気予報で雨が降るって言ってたよ」「手術って聞いてびっくりしたわ」
      1. [初出の実例]「頭部を撲れたのだから、脳病でも出なければ可いって、お医者様も然う言ってお在(いで)ださうだけれど」(出典金色夜叉(1897‐98)〈尾崎紅葉〉後)
    2. あとに体言準体助詞が続き、その体言の内容の説明を受ける。体言(形式名詞)を省略することもある。…という。…というのは。「それって常識?」
      1. [初出の実例]「君は観戦記者として、軍艦に乗るって話だが、然うかね」(出典:黴(1911)〈徳田秋声〉四二)
  3. [ 2 ] 〘 終助詞 〙 ( [ 一 ]の用法の「って」の後の動詞節が倒置されたり省略されたりしたもの )
    1. 他人の言葉を引用する。強調するときはイントネーションは高い。
      1. [初出の実例]「基本の内には予言か何か外で見られない事が書いてあるんですって」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉三)
    2. 話し手自身の言葉を、聞き手に念を押すように語るときに用いる。イントネーションは高くならない。本来あとに来る「言うんだ」「言うことだ」などの言葉を省略した言い方。「いいから俺にまかせて置けって。悪いようにはしないから」
      1. [初出の実例]「外の野郎共も〈略〉面白半分、野治馬になって助太刀をする。いやはや、一時は騒ぎだったって」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一〇)
    3. 相手の話や、話の中の語句を取り上げて、相手に問いただす。疑問詞で始まる文を受ける場合と、本来あとに来る「そのことは本当か?」「それは何か?」などの言葉を省略した言い方の場合とがある。イントネーションは上昇調。
      1. [初出の実例]「で、どうするって。━返すことにするって?」(出典:露芝(1921)〈久保田万太郎〉五)
    4. 疑問詞で始まる文を受けて、反語を表わす。…するかって。「今さら誰がそんなこと信じるって」
  4. [ 3 ] 〘 係助詞 〙
    1. 他人の質問・命令・主張を受けてそれを題目とし、説明や反論を導く。…という質問だが…。…と言われても…。「あしたまでに完成させろって、それは無理だよ」
      1. [初出の実例]「『どうして?』『どうしてってさうぢゃアありませんか』」(出典:春泥(1928)〈久保田万太郎〉冬至)
    2. 初めて話題に取り上げるものを提示する。…というものは。「人生って楽しいことばかりじゃないよ」
      1. [初出の実例]「折口(をれくち)って何ういふ筋の折口だ」(出典:末枯(1917)〈久保田万太郎〉)
  5. [ 4 ] 〘 接続助詞 〙
    1. 他人の発言行動を受け、それに対する話し手の論評に続ける。…と言うのは…だ。
      1. [初出の実例]「『人が厭だといふものを好(いい)々ッて、可笑(をか)しな慈母(おッか)さんだよ』『好と思ッたから唯好ぢゃ無いかと云ッたばかしだアネ。それを其様(そん)な事いふッて、真個(ほんと)に此娘(このこ)は可笑しな娘だよ』」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)
    2. 完了の助動詞の「た」や指定の助動詞の「だ」を受け、逆接の接続助詞的に用いる。→たってだって
    3. 「…からって」の形で用いることが多い。
      1. (イ) 因果関係を表わす。…ということを理由にして。…というわけで。
        1. [初出の実例]「江戸では斯う云ふ旨(うめ)え物(もん)喰って居るからって、食物ア大変八釜しい」(出典:真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉三八)
      2. (ロ) 逆接の関係を表わす。…といっても。
        1. [初出の実例]「幾程(いくら)母親さんの機に入ッたからッて肝腎のお前さんの機に入らなきゃア不熟の基(もと)だ」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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